プロメテウスの政治経済コラム

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日米軍事同盟の異常  あきれる大手マスコミの鳩山外交批判の大合唱  フィリピンを見習え!

2009-12-16 20:33:05 | 政治経済
いま世界に残る米国中心の四つの軍事同盟の中でも、日米軍事同盟は、他に類のない異常な特質をもっている。昨日のブログで私は、鳩山首相が普天間移設について年内には決めないことを決断したことに関し「しばらく、日米双方にいる『日米関係で飯を食っている人』(寺島実郎氏)たちが、マスコミも動員して米政権にたいして点数稼ぎをしようと騒ぎ立てるだろうが、気にすることはない」と書いたが早速、朝日、日経、読売、毎日(少しニュアンスが違うが)などの大手マスコミは、すべて批判の大合唱である。「日米関係で飯を食っている人」たちには、日米軍事同盟の異常さも、世界史の発展のなかで、そもそも軍事同盟がもはや「20世紀の遺物」となりつつあることもまったく理解できない。大手マスコミは、本当に「マスゴミ」だ。

 「普天間先送り―鳩山外交に募る不安」(朝日)、「普天間移設 展望なき『越年』決定は誤りだ」(読売)、「普天間先送りが深める日米同盟の危機」(日経)など、どれも社説で、米政権にたいして点数稼ぎをしようと、「長年積み上げてきた日米の信頼関係を崩壊させかねない」と大騒ぎしている。戦後の混乱期ならいざ知らず、いまどきアメリカに従属することがどれほどの意味があるのか――世界史の動向がまったく理解できない大新聞は本当にあきれ、情けない。
中坊公平さんが、新聞への期待感、言い換えれば新聞の役割について、軍隊用語の「斥候」という言葉を使って次のように語ったことがある。「いち早く山に登り、あるべき次の状態を見越し、判断しながら見えるものを伝える」ことが、新聞の役割なんだと言う。まだ見えていないものを伝えよ、とまでは言わない。しかし、日米安保条約が改定された1960年以降の半世紀で、軍事同盟をめぐる世界の情勢がどう変化したか、これはまさしく目に見える過去の事実なのだ。

 1960年から現在にいたる半世紀の間に、世界は、軍事同盟を解消し、外部に仮想敵をもたない、開かれた地域の平和共同体を形成する方向に大きく変わった。米国と旧ソ連をそれぞれ盟主とする二つの陣営が対立する形で軍事同盟が張りめぐらされていた1960年当時、これら軍事同盟のもとにあった国の人口は、植民地を含めると世界人口の67%を占めていた。しかしその後、自立を求める各国民の運動や非同盟諸国運動の発展で軍事同盟は次第に衰退の道をたどり、旧ソ連を中心とした軍事同盟は、91年のソ連崩壊とともに基本的に解体・解消。米国主導の軍事同盟も、次々に解散か機能停止した。現在、実態的に生き残っているのは、北大西洋条約機構(NATO)、日米、米韓、米豪の軍事同盟の四つだけである。
共通の仮想敵であるロシアが敵でなくなってNATOは存在意義を見失い迷走を始めている。日米、米韓の仮想敵は北朝鮮、中国ということだろうが、米国は日本、韓国に居座り続けるために、わざと脅威を煽っているだけである(現実に、米国は、北朝鮮の問題を6カ国協議で、中国主導の外交で解決していく方針であり、中国とはまだ合同軍事演習をしていないが、すでに相互訪問を展開する仲である)。

 もともと中国脅威論が日本で台頭したのは、90年代末以降、外務省など日本の官僚機構が、権力の源泉である対米従属を維持するために、マスコミを通じて反中国的な世論を喚起したためである。日本人の反中国感情は、官僚とマスコミに踊らされているところが多分にある(田中宇の国際ニュース解説「日中防衛協調と沖縄米軍基地」2009年12月8日)。
今、東南アジアでも、中央アジアでも、中南米でも、地域の平和共同体形成の動きが大きなうねりとなって前進している。このような動向を見据えて、「あるべき次の状態を見越し、判断しながら見えるものを伝える」ことこそ新聞の役割だろう。米軍が日本に居座るほとんど唯一の理由は、日本政府が思いやり予算など毎年6000億円に上る巨額の金をくれるからだ

 この点で、私はいつも感心するのが、フィリピンである。米国は、フィリピンの米軍基地を維持するために、露骨に国内政治に介入し、マルコス独裁政治を支えた。しかし、ついに86年にピープルズ・パワーでマルコス独裁政治を打倒してアキノ政権を誕生させた。そして、アキノ氏も米政府の圧力のもと、しだいに基地存続容認に傾いていく中、91年9月16日、期限切れを間近にして、上院は米軍基地存続についての新条約を否決。(太平洋戦争時の一時期を除き)100年近く駐留し続けた米軍を翌92年に全面的に撤退させた。このときの米側の交渉相手は、日本でもお馴染みのアーミテージ国防次官補だった。彼は「基地使用の見返り援助の増額ばかり要求するなら米軍は出ていくぞ」と声を荒げ、威張り散らしたという。「米軍基地がなければ経済は破綻する」、「外国に攻め込まれる」と、どこの国でも“対米関係で飯を食っている”ような人たちがいるもので、上院審議の最中に激しい攻撃がなされた。しかし、上院は基地存続の新条約を否決し、スビック海軍基地とクラーク空軍基地は返還されたのだった

 フィリピン人がエライと思うのは「いかなる国においても外国軍が存在することは異常な状態である」、「米国との友好、協力、貿易は望むが、服従は望まない」と言ってのける堂々たる建前もさることながら、居りたければ金を出せ、と言うところである。アーミテージ先生が音をあげたように、フィリピンは、基地使用の見返り援助の増額ばかり要求したのだ。金をせびるフィリピンより、金をくれる日本の基地を増強しようと考えるのは当り前でないか。日本が地代も要求せず、金を貢ぎ続ける限り、米軍は日本から絶対に撤退しない

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