プロメテウスの政治経済コラム

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普天間移設 先送り決定  「移設条件付き返還」からの転換を!

2009-12-15 19:05:33 | 政治経済
政府は15日午前、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設について、結論を来年に先送りした上で(1)与党3党で実務者協議機関を設置(2)キャンプ・シュワブ沿岸部(名護市辺野古)に移設するとした現行計画を含めた移設候補地を検討―するとの対処方針を決定した。結論を出す期限の明示も見送り、候補地選定は返還合意から13年を経て事実上、仕切り直しとなった(「共同」2009年12月15日 12時36分)。
何はともあれ、鳩山首相は「年内には決めないことを決断」した。国民新党の下地幹郎政調会長との会談(今月11日)でも、18日までに決断しない場合は「グアム移転費の予算を計上せず、別の予算に回す」「辺野古をやらないのなら、嘉手納より南の返還もグアム移転もない」とあくまで“脅し”の姿勢を崩さない米政府に対し“従順”でない鳩山日本を見せたわけで、これはこれなりに意味があった
しばらく、日米双方にいる「日米関係で飯を食っている人」(寺島実郎氏)たちが、マスコミも動員して米政権にたいして点数稼ぎをしようと騒ぎ立てるだろうが、気にすることはない。移設先については広く国民を巻き込んで、「本当に国内に海兵隊の居場所を造る必要があるのか検証する必要がある。わたしは必要ないと思っている」(宜野湾市の伊波洋一市長)。

 伊波市長がいつも言われている通り、米軍普天間飛行場は危険極まりない欠陥基地である。米国の安全基準で、「クリアゾーン」利用禁止区域とされているところに、公共施設・保育所・病院が18カ所、住宅が800戸、約3600人が暮らしているという現状が続いている。もともとあった街中に、沖縄戦のドサクサに米軍が侵攻し、土地を奪ってしまったからである。それにもかかわらず、米軍ヘリは住宅地上空を低空で旋回、タッチ・アンド・ゴーの訓練を連日のように繰り返している。
「2004年8月には、沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落する大事故が起こりました。ところがそれ以降も、米軍は反省・自粛するどころか、いよいよわが物顔です。沖縄県の統計を調べてみましたら、米軍航空機の事故は、この5年間に212件に達し、それ以前の5年間の144件と比較しても4割以上増えています。このままではいつ何時、市民の尊い命が奪われるかわからない。それを防ぐ方法はただ一つしかありません。普天間基地を即時閉鎖・撤去することであります。これは、人の命を守るかどうかという、いわば“政治以前”の問題であります。私は、まず何をさておいても緊急に解決すべき人命問題であり、“人道問題”だということを強調したいのであります」(基地問題シンポジウムでの共産党・志位委員長の発言2009年12月8日「しんぶん赤旗」)。

 「世界で最も危険な普天間基地の即時閉鎖・撤去」がなぜ進まないのか。当時の橋本内閣が、96年のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意で、「移設条件付き返還」の罠に嵌まってしまったからである。政権交代したが、鳩山首相も「移転」先を探すという立場である。14日の共産党・志位委員長との会談でも「『移設条件付き返還』という立場から抜け出す必要がある。もともと危険きわまる普天間基地は、無条件撤去が県民の強い要求だった」と言う志位氏に対し、鳩山首相は「共産党の気持ちは承らせてもらうが、安全保障、抑止力という問題がある。無条件撤去を求めるのでは交渉は難しいと思う」とあくまで一所懸命「移転」先を探すつもりである。それは、海兵隊は「抑止力」であり、日本に必要だという呪縛に囚われているからである

 海兵隊は抑止力として必要か。「日本の平和と安全のために本当に必要」か。結論を言えば、海兵隊は「日本の平和と安全のため」の「抑止力」などではない。沖縄を足場に、世界への「殴り込み」を任務とする「侵略力」こそ、その正体なのだ。
ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争――米軍の戦争で常に先陣を切って「殴り込み」の任務を与えられてきたのが沖縄の海兵隊である。最近でも2003年3月のイラク戦争開戦時には、沖縄の第3海兵遠征軍や横須賀の空母打撃群など在日米軍約1万人が派兵され、2004年2月にも、沖縄から海兵隊3000人とヘリ20数機が派兵された。04年8月には、普天間基地のヘリ部隊など第31海兵遠征隊の約2200人が、強襲揚陸艦エセックスでイラクに派兵され、ファルージャでの民間人の無差別虐殺に関わった。沖縄の海兵隊は、その手を血まみれにした「殴り込み」軍隊なのだ。沖縄国際大学に墜落したCH53D輸送ヘリは、イラク派兵のための訓練中の出来事だった(「しんぶん赤旗」同上)。

 海兵隊が抑止力として、沖縄にとっても日本にとっても、必要のない軍隊ならば「移設」する必要はない。アメリカ側も海兵隊はグアムに統合する計画である。ただ日本側が、飛行場、ヘリ着陸場、軍港が一体化された最新鋭の巨大な海兵隊新基地をタダでプレゼントしてやるというのに、受け取らない手はないということだ。米海兵隊が沖縄にいるほとんど唯一の理由は、日本政府が思いやり予算など巨額の金を出してくれるからだ。
いま私たちがやるべきことは、「世界で最も危険な普天間は即時撤去、辺野古は絶対ダメ」と言い続け、鳩山首相が現行計画の微修正で米側との落としどころを探るというような動揺をしないよう励ますことだ。

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