プロメテウスの政治経済コラム

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安倍政権下で蠢動する「靖国」派  今度はアニメDVDで中学校を狙う

2007-05-19 18:24:44 | 政治経済
“靖国派”というのは、日本が過去にやったアジア侵略の戦争を正義の戦争だった、「自存自衛」と「アジア解放」の戦争だったとする勢力である。この“正義の戦争”論の最大の発信地が靖国神社であり、靖国神社の参拝を自分たちの信念の証(あかし)としていることから、“靖国派”と呼ばれる。
こういう潮流は、昔から自民党のなかには根強くあった。しかし、この潮流があらためてその力を結集し画策をはじめたのは、90年代の中ごろ、終戦50年の総括が問題化し始めたときである。日本の戦争についての国内外の議論が広がるなかで、93年、「従軍慰安婦」問題で過去の行為への反省の態度を明らかにした河野官房長官談話が発表され、95年、日本が侵略と植民地支配の誤った国策をとったことを確認し謝罪した村山首相談話が発表された(「しんぶん赤旗」5月9日)。
ところが、“靖国派”は、この二つの談話をがまんできないものと考え、これをひっくりかえせ、取り消させろと、そこから“靖国派”総結集の動きが始まったのだ。
1997年には「日本会議」が設立され、「美しい伝統の国柄」(安倍の「美しい国」の語源)、「憲法改正」、「教育基本法改正」、「靖国公式参拝の定着」、「夫婦別姓法案反対」、「より良い教科書を子供たちに」――侵略戦争と植民地支配、軍国主義美化の「新しい歴史教科書」づくり――などのスローガンをかかげ「靖国」派の“総本山”の右翼・改憲団体として国会議員などへの策動をすすめてきた。同じ年に「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」が設立され、歴史教科書から「自虐史観」を一掃する活動をはじめた。これは政界で最も突出したタカ派の突撃部隊――「靖国」派のいわば「青年将校」の集団となった。
安倍晋三は、93年に政界に登場した最初からこの流れに身を投じて活動し、そのなかでも最も過激な右翼的言動で名を売り、「頭角」をあらわしてきた。そして今や、その人物が首相となり、閣僚のほとんどを「靖国」派で固め、首相補佐官や官房副長官にも「靖国」派の仲間たちを総結集したのが、安倍内閣なのだ(「しんぶん赤旗」5月19日)。

安倍晋三を首相に持ち上げた“靖国派”は、支持率低下に居直った首相のもとで、この世の春とばかりに、社会の全般にわたって蠢動し始めた。
17日の衆院教育再生特別委員会で、日本共産党の石井郁子議員が取り上げた日本青年会議所作製のDVDアニメ「誇り」文部科学省から委託研究事業として認可され補助金をもらったその内容は、日本の侵略戦争と植民地支配を正当化する言葉であふれている。「愛する自分の国を守りたい、そしてアジアの人々を白人から解放したい。日本の戦いには、いつも、その気持ちが根底にあった気がする」。靖国神社の鳥居の前で、過去から来た青年がこう語りかける。「戦後その思いは打ち消され『悪いのは日本』という教育がおとなにも子どもにも施され、贖罪意識だけが日本人の心に強く焼き付けられてしまった」(「しんぶん赤旗」5月18日)。

DVD「誇り」は、日本青年会議所が地方青年会議所との「協働運動」として進めている「近現代史教育プログラム」の教材として使われる。同プログラムでは学校の総合学習などで中学生にこのDVDを見せたあと、会議所のメンバーがコーディネーターになって詳しい説明を加えながら討論。生徒を「洗脳」することを目指している。
文部科学省はこのDVDを使った教育プログラムを今年度の「新教育システム開発プログラム」の委託事業として採用。同会議所はさっそく、学校の総合学習などの時間に、青年会議所のメンバーが教室に「誇り」のDVDを持ち込んで実践するよう全国的に呼びかけている(「しんぶん赤旗」同上)。
安倍首相は、昨冬、青年会議所池田会頭と会談し、「美しい国」で意気投合し、このDVDを手渡され、「教育再生の参考にしたい」と述べた。
安倍「靖国」派内閣のもとで社会の全般にわたって、国民の心まで支配しようという蠢動がつよまっていることを全体の流れのなかで正確に掴み、そのひとつひとつに反撃することが求めれている。

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