プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

1―3月GDP0・6%成長  強い企業と低迷続く労働者階級の状態

2007-05-18 19:05:21 | 政治経済
01年、小泉内閣の成立を画期として、それからの一年間、労働市場のあり方を決定的に変える不良債権処理と企業大リストラが集中的に行われた。もともと、1000万人前後だった、500人以上規模の大企業の正規労働者数が、01年からの1年間で、一挙に125万人も減少した。少し遅れて中小企業のリストラが続く。
日本の製造企業の大規模な海外展開で、国内の組立産業は小さくなった。しかし、その分、素材産業や部品産業は小さくならなかった。過当競争で、低迷を続ける素材産業や部品産業に対し、銀行への不良債権処理の強制を通じて、整理淘汰、企業再編を強制するとともに、三つの過剰(「設備・雇用・債務」の過剰)の処理を促した。こうして、日本型雇用の特徴であった長期雇用慣行の急速な衰退がもたされ、さらに労働法制の規制緩和で大量の不安定非正規労働者が生み出された(後藤道夫「格差社会の実態と背景」―『格差社会とたたかう』青木書店2007所収)。

ことし三月期の決算で、大企業は全体として5期連続の増収増益となる見通しである。東証一部企業の経常利益の総額は、4期連続で過去最高益を更新することになりそうだ(「朝日」5月16日)。「リストラ効果」と好調な輸出で、空前の利益を上げてきた大企業。しかし、不安定雇用と貧困の拡大を資本蓄積の推進力に組み込み、輸出に頼る日本経済の実態は、決して安定することはない「07年1~3月期のGDP速報では、設備投資の前期比伸び率が5四半期ぶりにマイナスに転じ、さらに個人消費の本格的な回復に不可欠な雇用者報酬も伸び悩むなど、景気の先行きに暗雲が漂い始めた。米国景気の減速で、リード役が不在となりそうな4~6月期GDP伸び率は、大きく鈍化する可能性が指摘されている」(「毎日」5月17日19時41分配信)。
同速報によれば、企業の設備投資は、実質で0・9%減、これまでの「好景気」を牽引してきた自動車や電子部品関連などが落ち込んだ。消費は、暖冬の影響でプラスとなったが、雇用者報酬は名目で前期比0・1%減と8期ぶりにマイナスとなった。雇用者数は増えているが、低賃金の非正規雇用が増えているから、一人当たり賃金のマイナスも続いている。労働者階級の状態は全体として悪化が続いているのだ

90年代の激しい円高のとき野村総研は、円高にコスト削減で対応する大企業のやり方が、輸出増加でさらに円高を招く「悪魔のサイクル」に陥っていると指摘したことがある。今回の景気「回復」は、「貧困と格差拡大のサイクル」となって深刻な社会問題を生み出している(「しんぶん赤旗」同上)。
いまこそ、社会保障の拡充や、税制による所得再分配が求められているにもかかわらず、政府はまったく逆のことをやっている。「企業部門の好調さが持続し、これが家計部門に波及し・・・景気回復が続く」(4月の月例経済報告)という政府の言い分は、まったくの嘘っぱちである。


資本主義的生産が内在する制限を克服しようとして、世界市場をおし広げているのが、資本主義システムが現代において推し進めている発展段階である。先進資本主義国の製造業の海外流出が続くと、生産労働者の雇用は減り、その賃金は下がり続ける。そうした傾向に歯止めをかけてきた日本型雇用と日本型経営が、この間の構造改革によって解体させられ、雇用と労働条件の悪化が急速に進んだ。大もうけを上げた多国籍大企業は、国内市場を当てにせず、世界的規模で投資を行うので、国内の雇用と消費を大きく拡大することはない。政治による規制を行わず、経済法則のままにまかせるならば、これは、マルクスの資本主義的蓄積の一般法則の世界であり、資本が蓄積されるにつれて、貧困が蓄積し、労働者の状態が悪化する。政治の転換なくしてこのままでは、庶民が景気回復を実感することは永久にあり得ない。

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