プロメテウスの政治経済コラム

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誤魔化されてはいけない! 07年増税トリック

2007-02-06 18:00:36 | 政治経済
サラリーマン世帯の場合、その多くは一月に給与から天引きされる所得税額が減額され、手取り収入が一見増えたように見える。定率減税廃止による増税で源泉徴収税率が上がったのだが、所得税から地方住民税への税源移譲に伴う所得税の減税が上回り、一見源泉所得税が減るからである。地方税の特別徴収額は、6月から改定されるので、1月~5月までは地方税にしわ寄せされた増税額が、いわば隠れている。6月からの住民税は、地方税の定率減税の全廃に加えて、さらに税源移譲分が加わるので、大幅な住民税額の増税となる。6月払い給料を見て、増税の重みに驚くことになる。おめおめ政府の誤魔化しに乗ってはいけないのだ。
【注】 税源移譲 国と地方の税財政にかかわる「三位一体の改革」の一環として、所得税(国税)から個人住民税(地方税)へ、税金を移し替えること。具体的には、これまで10、20、30、37%となっていた所得税率を07年分(一月)から5、10、20、23、33、40%に変更。現行5、10、13%となっている住民税率を07年度分(六月)から一律10%に変更する。財務省や総務省は、税源移譲に伴う個々の納税者の負担は、基本的には変動がないとしている。

所得税・住民税の定率減税全廃は、所得税は07年1月から実施、住民税は同6月から実施、税源移譲による所得税減は1月から実施の仕組みのトリックで、手取りが増えるのも5月まで。今年6月には、税源移譲に伴う住民税増税とともに、定率減税全廃の影響が庶民の家計を直撃するのだ。サラリーマン世帯以外では、増税になる時期は世帯の所得のあり方によって異なる。例えば、年金生活者の場合、2月に減額された所得税は、その分も含めて六月に住民税増税にはね返る。自営業者の場合、住民税増税の影響が先に現れ(6月)、所得税の減額は来年の確定申告の時期(予定納税の場合は今年7月)になる。さらに、所得の少ない高齢者の場合、住民税の非課税限度額が昨年廃止された影響が今年も続き、6月には、定率減税全廃による増税に加え、非課税限度額廃止に伴う増税が上乗せされることになる(「しんぶん赤旗」2007年1月17日)。

1月20日、朝刊各紙に「所得税(国税)は1月から、住民税(地方税)は6月から納税額が変わります」という政府広報が掲載された。同広報は税源移譲では所得税と住民税を合わせた「年額の納税額は基本的に変わりません!」と強調。その下に小さい文字で、実際の納税額には、2007年度から定率減税が廃止されることなどに「ご留意ください」と書きこんでいる。この「留意」こそが曲者である。07年度年間ベースにすれば、定率減税全廃分だけ所得税と住民税が増税になり、“庶民に増税、大企業に減税”という事実は変わらない。

「財政健全化」をスローガンにかかげながら、大企業にはいっそうのバラマキ減税を行おうとする安倍政権。07年度税制「改正」の目玉は、企業の減価償却制度の拡充と証券優遇税制の期限延長である。減価償却制度も証券優遇税制も特定の者を対象とした制度ではない。しかし、減価償却減税の六割は製造業大企業向けであり、証券優遇税制では04年に株式等譲渡所得を申告した人の3・8%の富裕層に減税の六割以上が集中していた(「しんぶん赤旗」2006年12月18日)。小金をもって、株式を楽しんでいる人もいるかもしれないが、本当の減税の狙いはごく一握りの大金持ちのための税制なのだ。
私たちは、財務省や総務省が「負担は変わらない」と言っているのは、税源移譲のことであって、定率減税は全廃され、一兆七千億円(07年)もの増税となったこと及び、景気対策と言って定率減税とともに99年年に導入された大企業減税(法人税率引き下げ)や大金持ち減税(所得税の最高税率引き下げ)は温存したままであることを決して忘れてはならない。

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