プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

今世紀末の気温 最悪6・4度上昇  地球の生命維持装置の危機?

2007-02-05 19:07:40 | 政治経済
海に最初の生命が誕生してから、陸上で生命が多様に発展できるようになるまで、30億年以上かかった。地球は、われわれ人間をはじめ、いろいろな生命体がすむことを可能にする条件――生命維持装置をつくりあげるまでに30数億年を要したのだまず、地球を取り囲む大気圏のなかで、地表から10キロメートルまでの層(対流圏)はいまでは、窒素と酸素が主で、そのなかの炭酸ガス(二酸化炭素)はごく少量である。このことが生命にとっては重要なのだ。炭酸ガスは、その星にあたる太陽熱を、外へ発散(放射)させないで、内にこもらせてしまう作用――温室効果――があるので、地球が、ほかの星と同じように炭酸ガスの厚い層に包まれていたとすると、地球の表面はたいへんな高熱になってしまうはずである。ところが、地球の大気は、窒素と酸素が主で炭酸ガスは少量なので、大気のそういうなりたちが、生命がすむのにほどほどの温度や気候の条件を保障していることになる。さらに、地球は、対流圏の外側の成層圏(地表から10~50キロメートルの層)に、オゾンという物質の薄い層をもっている。これが、生命の敵である紫外線をさえぎってくれている。しかし、地球の誕生当初からこのような条件があったわけではない。海にうまれた生命体の光合成が30億年以上かかって大気組成をつくり変え、成層圏にまで上がっていった酸素の分子が、紫外線に当たって、オゾンの分子に変わるという現象がおきたのだ(不破哲三「21世紀と『科学の目』新日本出版社2001」)。

現在、われわれは、資本主義のもとで生産をしゃにむに発展させた結果、地球規模でこの地球の生命維持装置―人間が生きる環境―を壊しはじめているという問題――地球環境問題に直面することになった。
いまから30年ほど前、フロンガスが大気圏の上層にあがってゆくと、オゾン層を破壊してしまうことがわかり、南極の上のところに、オゾン層がなくなって大きな穴があいていることもわかり大問題となった。
フロンの次に問題になったのが、地球温暖化である。大気のなかの炭酸ガスは、熱の発散をおさえる温室効果をもつが、これまでの地球では、炭酸ガスの量がごくわずかで、気温や気候をほどほどに保つ条件になっていた。ところが、その状態が大きく変わりはじめた。工場や自動車で、石炭・石油などの化石燃料を使えば、炭酸ガスを大気のなかに大量に吐き出す。それから、窒素酸化物なども同じ役割をするが、こういう排出ガスが、大気の温度を上げて、いろいろな異常気象が感じられるところまで、事態が進んできたのである。地球の気温の変化を歴史的に調べてみると、明らかに温暖化が進んでおり、このままでは、21世紀の地球はどうなるか、真剣な対策が求められるようになった(不破哲三 同上)。

IPCC第四次報告の一部をなす「政策決定者向け要約」は、人間の活動による温暖化の可能性を90%以上とし、2001年公表の第三次報告の「66%から90%」を一段と強めた。地球の温暖化は進行しており、その原因が人間の活動にあるという事実を科学者の集団的研究で再確認した。
温暖化を引き起こす最大の要素は、化石燃料(ガス、石油、石炭)使用で排出される二酸化炭素である。地球をまもるために、排出ガスを減らそう、石炭や石油を使う量を減らそうということが問題になって、その削減目標を決めたのが、1997年の「京都議定書」であった。ところが、石油産業の利害を代表する米ブッシュ政権は、アメリカの国益にあわないと言って「京都議定書」に背を向けた。ブッシュの地盤であるテキサス州が一年間に吐き出す炭酸ガスの量は、一億七千五百万トンにのぼる。各国をみると、イギリスが一億四千七百万トン、フランスが九千四百万トンであるから(いずれも1997年)、テキサス州一州でイギリスよりもフランスよりも多い炭酸ガスを吐き出しているのだ(日本は三億千八百万トン)。

アメリカであろうが、中国、ロシア、インドであろうが、地球の生命維持装置の危機に共同して立ち向かうことは、人類史的課題である。IPCCの今回の報告書は、各国政府にいますぐに排出を削減するための行動をはじめるべきだと呼びかけているのだ。

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