プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

増税は必要だが消費税ではない  いま必要なことは、所得再分配の再建

2010-07-01 21:42:07 | 政治経済
菅首相は、消費税を上げて税金を取っても、それを新しい成長分野に投資をする、介護、医療とかで雇用を生み出すという。しかし、これほど荒唐無稽な話はない。消費税を上げるということは、その分だけ国民の所得を奪うということだ。消費税を5%上げれば、12兆円の所得が減少することに相当する。ワーキングプアが大勢の日本でこんなことをやれば、ただでさえ弱々しい消費そのものが冷え込み、成長どころの話ではない。金が余って、外国金融資産で転がしているような大企業や大資産家から税を取って足りないところへ回せば、内需拡大を通じて経済の正常化に貢献するかもしれないが・・。いま必要なことは、庶民大増税ではなく、所得再分配の再建なのだ。

菅・民主党が、「法人税率引き下げ」「消費税率10%」の公約を国民の目から隠そうと早くもブレ始めた。菅直人首相の第一声でも法定ビラでも法人税減税には触れず、首相は6月26日、「(消費税増税の)議論を呼びかけるところまでが私の提案だ」と語り、「消費税率10%を参考に」という公約をもみ消そうとまで試みた。ところが、30日の街頭演説では、再び自民党の消費税10%を「勇気をたたえたい」と持ち上げ、「真正面から本気で議論をすることは理解いただけると思う」と秋波を送るとともに、何を思ったか突然、年収400万円以下の世帯については、掛かった消費税額分を全額還付することも検討したいと、訳の分からないことを言い出した。これに対しては、社民党の阿部知子政審会長から「菅さんは庶民の所得水準を知らないんじゃないか。400万円はちょうど真ん中ぐらいだ。そこから取らなかったら消費税の意味がない」と何のための庶民増税かと批判される始末である。

「消費税率10%」への増税は総額12兆円、4人家族で年間16万円もの負担増になる。
橋本内閣時の1997年の国民負担増は、消費税増税で5兆円、医療費値上げなどと合わせて9兆円であった。当時は家計の所得が増えている局面での負担増だったが、それでも景気はどん底に突き落とされ、大不況を招いた。今度は家計の所得が減り続けている局面での12兆円もの負担増である。暮らしと経済への打撃は計り知れない。今必要なことは、貧乏人から購買力を奪ってますます窮乏化させるのではなく、国内で労働者を搾り上げ、中小企業をたたいて、下請けいじめをやって吸い上げた挙句、これを国内で投資しないで、海外に行って荒稼ぎし、229兆円にのぼる内部留保をもつ大企業から税金を取ることだ。余っているところから税を取って足りないところへ回せば、内需拡大を通じて景気は安定する。総需要の需要項目のうち、個人の最終消費の比率は、日本では55%程度である。アメリカでは70%を超える。今、考えなければならないことは、財政の所得再分配の方向を個人に向けること、労働立法、公正な下請け取引ルールを確立し、国内で内需を壊してきた大企業の身勝手を許さないことである。

財界はよく、労働者の賃金を上げたり、正社員を増やしたりすると企業は逃げ出すと言い、税金の問題でも、税金が高いと国外に逃避すると脅しをかける。しかし、そんな作り話に脅されてはならない。企業は税率の高さで投資のポイントを決めることはない。労働コストは大きな要因に違いないが、製品マーケットの需要の伸びが期待できないところに投資することはない。法人税とは、会社のあらゆる経費と各種の引当・積立金、役員報酬まで支払った後に残る利益にかかるものだ。そんなものが、投資決定の主要関心事になる筈もない。

菅政権の「新成長戦略」は、「国家戦略プロジェクト」として「法人実効税率(地方税を含む表面的な法人税率、現在40%)を主要国並みに引き下げる」としている。民主党の参院選公約も、「強い経済」の目玉政策として「法人税率引き下げ」を掲げている。消費税増税と法人税減税をセットにした“方針書”をつくったのは日本経団連である(「成長戦略2010」、4月)。財界の方針書を引き写しにして、菅政権は「日本の法人税率は高すぎる」と主張し、それを法人税率引き下げの最大の根拠にしようというのだ。
日本の法人税率は本当に高すぎるのか。税金負担の重さは表面税率だけ見て簡単に比較できるものではない。
税制比較は専門家でも難しい。特に租税特別措置が実質税金負担を大きく左右する。
「日本の法人税はみかけほど高くない」と財界の税制担当幹部自身が認めている。阿部泰久・日本経団連経済基盤本部長は税の専門誌『税務弘報』1月号で、法人税について「表面税率は高いけれども、いろいろな政策税制あるいは減価償却から考えたら、実はそんなに高くない」といっている。「税率は高いけれども税率を補う部分できちんと調整されている」というのだ


今回の参院選を消費税大増税選挙と位置付け、消費税大増税派を粉砕しなければならない。どの党が伸びれば増税計画をストップさせる確かな力となるかを見極めなければならない。法人税減税=消費税大増税路線のインチキを一人でも多くの国民に口コミで伝えてゆかねばならない。

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