プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

新年度予算成立―福祉国家解体、軍事同盟強化鮮明

2006-03-28 19:02:24 | 政治経済
約2兆7千億円の国民負担増を盛り込んだ2006年度予算が3月27日、参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立しました。民主党、日本共産党、社民党、国民新党は反対しました。福祉国家の解体と軍事同盟の強化の方向がいっそう鮮明となりました。

06年度予算の一般会計総額は、前年度当初予算比3・0%減の79兆6860億円です。医療制度などの社会保障改悪、「三位一体改革」による地方財政へのしわよせなど、ナショナル・ミニマムにたいする国の責任の放棄、地域単位の受益者負担主義という福祉国家解体路線を推し進めるものです
「医療制度改革」の名による高齢者を中心とする負担増、混合診療など保険医療の縮小も盛り込まれ、相次ぐ社会保障改悪は、国民生活に大きな負担をかぶせることになります。
また、「三位一体改革」の名で、義務教育費国庫負担金や児童扶養手当給付費負担金などの縮減・廃止も盛り込みました。

一方で、関西国際空港二期工事のような巨大空港、スーパー中枢港湾、大都市の高速道路、大型ダムなど大規模事業は引き続き「聖域」化し、かたちを変えた「土建国家」が維持されています

軍事費も五兆円近い規模で、ブッシュ米政権が推進している「ミサイル防衛」(MD)の関連経費は過去最高の千四百億円に達しています。財政危機などにお構いなく、日米軍事同盟の強化のために予算をつぎ込んでいます

歳入面では、大企業、大金持ちに対する優遇税制が維持・拡大される一方で、定率減税の全廃など庶民増税を容赦なく押し付け、新規国債発行額が29兆9730億円と政府目標の30兆円を下回ったとしています。

格差と貧困の拡大が大問題になっている中、予算は、所得税・住民税の定率減税全廃や医療改悪など、二兆七千億円もの新たな負担を国民に押し付け、さらに格差を拡大することになるでしょう。

格差社会化の責任を問われた小泉首相は当初「言われるほど日本社会には格差がない」と「格差否定論」を展開しました(第一の詭弁)。格差拡大の現実を否定できなくなると「格差がでるのは別に悪いことではないと」と「格差容認論」を口にし始めました(第二の詭弁)。しかし、居直りだけでは格差拡大の要因を説明できません。そこで、「だんだん、経済状況が良くなってくると、富裕層とそうでない層との格差が広がっているというのは誤解であると、みんなが分かってくると思いますね」という格差拡大の犯人を不況にもとめる「要因スリカエ論」=第三の詭弁が登場します(二宮厚美・神戸大学教授「赤旗」06.3.28)。

マスコミの「構造改革によって少々の格差が発生するのはやむをえない、それよりも重視すべきは、構造改革によって経済を成長させ、格差があってもみんなが豊になる方向をめざすことだ」といった論調は、後ろ二つの詭弁を併用したものだと二宮教授は言います。そして、小泉構造改革によって生み出される格差拡大は、弱肉強食型=上下タテ型の格差と同じヨコに並んだ者同士の優勝劣敗型=分断型格差の二重構造になっていることを見きわめなければならない。小泉構造改革はどこまで行っても、格差社会化のこの二重構造から、抜けだすことができず、したがって小泉構造改革に未来の平等社会を期待することはできないと断じています

所得・雇用・消費等の格差拡大は小泉構造改革の帰結です。逆に言えば小泉改革のアキレス腱です。これを突かれると、さしもの強気一辺倒の小泉首相といえども守勢にまわらざるをえなかったのです。国民に痛みを押し付けるばかりの小泉「改革」路線をこれ以上続けさせるわけにはいきません。国民のたたかいを広げることがますます重要になっています。


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