プロメテウスの政治経済コラム

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宮城県の復興計画  村井知事の異様とも言える「強いリーダーシップ」は誰のため?!

2011-05-30 19:05:06 | 政治経済

私が宮城県の村井嘉浩知事を意識したのは、平成23年度当初予算に計上していた東北朝鮮初中級学校への補助金交付を震災のドサクサに紛れて取りやめる決定をしたことを知らせる日朝ネットによってであった。震災で日本人も外国人もまして在日韓国・朝鮮人も助け合わねばならない時に、国際連帯に水を差すようなことをする人物は一体どんな人物か興味を持ったわけである広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)さんの526日のブログ「村井知事が指揮する宮城県の震災復興計画には有事計画のキナ臭さがつきまとう」及び「しんぶん赤旗」529日の記事「宮城県の復興計画 野村総研が全面関与 知事『地元の人 入れない』」を読んで合点が行った。石原東京都知事や橋下大阪府知事、それに河村名古屋市長などの専制型首長の「強いリーダーシップ」と同じく一見強そうに見えるが、財界という強い主人には全く頭があがらず、弱い庶民を苛める小心者であるということだ

 

東日本大震災からの復興をめぐり、宮城県では村井知事が、大企業が漁業権を獲得しやすくなる「水産業復興特区」構想を打ち上げるなど財界からの「構造改革」路線推進の指示を受けて暴走している。同構想には、漁業者が激しく反発しているが、知事は「撤回するつもりはない」と貫徹する構えである。「しんぶん赤旗」の記事によれば、村井知事が、住民の頭越しに次々と打ち出す宮城県復興の「青写真」づくりは、財界系シンクタンク・野村総研の“全面バックアップ”でおこなわれているということである。財界系シンクタンク・野村総研が財界の利害を代表することはあっても、住民の目線に立つことは絶対にない。

村井知事は、県民の代表ではなく、震災復興を奇貨として自分たちの儲けと「構造改革」の建て直しを狙う財界の立場にたつことを宣言した。宮城「県震災復興会議」は、野村総研顧問や三菱総合研究所理事長らが委員として顔をそろえ、「委員12人のうち県内在住者はわずか2人」(河北新報18日付)。第2回「復興会議」は、「委員の大半が首都圏在住のため…村井知事らが上京」(同)し、都内で開催するありさまであった。会議の委員選定について問われた村井知事は、「あえて地元の方はほとんど入っていただかないことにした」と表明。その理由として「地球規模で物事を考えているような方に入っていただいて、大所高所から見ていただきたいと考えた」などと県民無視を正当化した。委員19人全員が県内在住者である岩手県の「津波復興委員会」とは対照的である

 

どうして、村井知事はこんなに強気なのか。広原盛明さんは、次のように分析する。

まず第1の背景としては、現職の防衛大学校長である五百旗頭(いおきべ)氏が政府震災復興構想会議の議長に就任したことが挙げられよう。現職の防衛大学校長が非常時とはいえ「国の民生計画」の策定を指揮することなど、平和憲法の下での戦後日本では考えられもしなかった。だが、わが国で防衛大学校・自衛官出身ではじめて知事となった村井知事は、松下政経塾生というキャリアもあって、五百旗頭議長が指揮する国の復興構想会議を自らの存在をクローズアップできる絶好の機会とみたのであろう。なにしろ大災害の復興構想が現職と元職の自衛隊関係者の手によって国と県で同時並行して進められることなど、かってない異例の事態が生じているからだちなみに、仙台空港の復旧作戦を「日米軍事同盟(トモダチ)の有事シンボル」としてクローズアップさせたのは、自衛隊出身の村井知事と首相官邸・防衛省との密接な連携プレーであった。
第2の背景としては、日本財界が東日本大震災を道州制導入の「千載一遇の機会」として位置づけ、そのための「先行モデル」を東北地方で実現したいと強く望んでいることが挙げられる。日本経団連や経済同友会は、4月30日の第3回復興構想会議のヒアリングにおいて、おのおのが『震災復興基本法の早期制定を求める』(経団連)、『東日本大震災からの復興についての考え方』(同友会)などを示して、「政治の強いリーダーシップによる国をあげた迅速かつ一体的・総合的な取り組み」を要求した。彼らの「復興・創生マスタープラン」は、被災地全域を「震災復興特区」に指定し「構造改革」路線をすすめる産業政策を提起するとともに、消費税増税のための「社会保障・税の一体改革」推進と環太平洋連携協定(TPP)参加など、「新成長戦略」の加速を求める。農林水産業の「復興」では、「複合経営体として企業的農業経営を行う民間事業主体を確立」「大規模・先進的経営を実践」することを主張。企業の参入を促す仕組みを整え、「成長産業化」することを求めている。

野村総研と宮城県が一体でつくる復興計画の中身は、財界の狙いそのものを実現することである村井知事は、国の復興構想会議においても毎回資料を提出し、第2回会議では「国への提言」として、(1)恒久的で全国民、全地域が対象となる災害対策のための間接税である「災害対策税(目的税)」の創設、(2)津波危険地域の公有地化・共有地化、(3)広域的・一体的な復興を進めるための「大震災復興広域機構」の設立、(4)思い切った規制緩和、予算や税制面の優遇措置を盛り込んだ「東日本復興特区」の創設を提起するなど文字通り、財界の意向を震災復興に反映させるための“急先鋒”の役割を果たしている。

阪神淡路大震災のときも財界は、兵庫県・神戸市と一体となって“創造的復興計画”を住民に押し付け、生活再建を妨げた。阪神淡路からの教訓は、当たり前のことだが、復興の主人公は住民でなければならないということだ。復興計画は住民合意でつくり、実行は市町村、財源は国が責任をもつ。これが基本原則だ

 

村井・復興会議に対抗して、被災者・被災地が主役の復興を目指そうと「東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター」が29日発足した。呼びかけ人を代表し、綱島不二雄・元山形大教授が「宮城県は、財界に都合の良いことは対応が早く、県民のためになることは遅い。力を結集し、私たちの復興計画を作ろう」と呼びかけた。採択されたアピールは、民間企業にも養殖の漁業権を開放する「水産業復興特区」など村井知事の復興構想は、財界の主張と瓜二つだと批判。その上で「復旧・復興は、憲法13条、25条に基づく住民の権利。村井知事の上から目線の復興構想に対抗し、被災者・被災地が主体の復旧・復興を目指す」と訴えた。憲法25条の生存権の保障、13条の幸福追求権の尊重は国の責任である。「復興はたたかい」なのだ

 

 


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1 コメント

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hihannnituite (ky)
2011-07-30 03:10:51
村井の手法を批判しているが非常時に責任と勇気ある行動を県民の上に立って大局的に良い判断していると思う。
例えば漁業権の件で企業に手を付けさせるべきでないと伸べてるが、あの津波の真っ黒な色を見たら既得権者らが海を汚してきた仕返しを海からされたと思う気がする。
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