プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

APECでみせたアメリカ外交の別の顔

2005-11-29 18:53:57 | 政治経済
いま、小泉アメリカべったり外交は2つの面で行き詰っています。日米同盟の強固さで中国や韓国を見下すつもりで出かけたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では、逆に中国や韓国から見下されてしまいました。在日米軍基地再編強化の面では、「平和と安全」の「代価」の論理で関係自治体を説得しようとしましたが、ほとんどの自治体から拒否の反応が出ています。そのような中で、注目されるのは、APECでみせたアメリカ外交の別の顔です。
アメリカ外交の基本は単独行動的一国覇権主義ですが、国際協調的多面主義戦略をとることもあります。本日の「赤旗」ワールド時評はAPECでみせたアメリカ外交戦略について次のように報じています。
APECでのブッシュ米大統領と東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会談とその機会に発表された共同声明、「ASEANと米国のパートナーシップ強化に関する共同ビジョン声明」は、今日の世界の「変化」を象徴する出来事のひとつといってよいでしょう。声明は、国連憲章の意味を再確認し、その上でASEANの発展、ASEAN共同体の重要性を指摘しています。注目されるのは、米国側が、東南アジア友好協力条約(TAC)を「地域の平和と安全促進のために国家間の関係を律する行動規範」だと認め「同条約の精神と原則を尊重する」と表明したことです。
東南アジア友好協力条約(TAC)とは、戦後最大規模の侵略戦争、米国のベトナム戦争が終わった翌年の1976年に当時のASEAN5カ国が結んだ条約です。超大国支配のもとで、侵略戦争にまきこまれ、アジア諸国の間で対立を繰り広げた苦い体験への反省の上に、ASEAN諸国が、平和なアジアの建設をめざしてつくった取り決めでした。
条約は、国連憲章とともに、独立と平和のアジアを掲げておこなわれた55年のバンドン会議の10原則などを目標に掲げて、主権尊重、内政不干渉とともに「紛争の平和的解決」「武力による威嚇または武力の行使の放棄」を明記しています。
その後約30年、今では、ASEAN(現在10カ国)は、世界の人口の53%が参加し、東アジア全体に広がる平和の共同体を展望する国際的な仕組みに発展してきました。この間に、TAC条約加盟国のベトナムと中国が懸案の国境問題を話し合いで基本的に解決、インドとパキスタン、インドと中国が数十年にわたる戦争と対立に終止符をうち、問題の平和的解決とともに今後の協力強化を約束しあいました。TACの重みがものをいったといってもいいでしょう。
アジアの平和の「共同体」の流れの中で東アジア共同体(EAC)の構想がすすめられており、その中で12月にマレーシアで東アジア首脳会議が開かれます。インド、ニュージーランド、オーストラリアなど東アジア域外の国も参加を希望しており、いま「共同体」の範囲をどうするかが、難題のひとつになっています。ブッシュ政権は、アジアの安定と発展の最大の貢献者である米国を排除する「共同体」は認めないという立場をとっています。アメリカの意を受けて日本は、アメリカを入れたがっています。しかし、他の国の基本的立場は、「東アジア共同体はアジアによるアジアのための共同体であって、米国はメンバーではない。しかし、もし米国もTACに加入するか、支持を正式に表明すれば…」とういことです。
米国とASEANの関係はこれからです。しかし、今回APECでみせたTACに対する姿勢の変化は、米国としてもアジアの構造的変化を認めざるをえなくなった結果であるともいえるでしょう。米国のベトナム侵略戦争での敗北が生み出した平和の条約に、今米国が目を向ける…。歴史の発展、世界情勢の巨大な変化を実感させる出来事です。「赤旗」は次のように締めくくっています。
「日米関係がよければよいほど…」という小泉首相の発想、アジア諸国との関係のすべてを米国の力、米国との関係で測るという姿勢は、今や完全にアジアの現実から離れ、日本外交を孤立させるだけでなくアジアの流れを妨げる要因になりかねないことを示しているではありませんか。


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1 コメント

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2005-11-29 19:02:03
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