プロメテウスの政治経済コラム

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時代遅れの軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)と日米同盟の連携を画策するブッシュ政権

2006-12-07 18:57:46 | 政治経済
NATOは、1949年、北大西洋条約に基づき、米国、カナダの北米2か国及び欧州10か国(フランス、英国、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、デンマーク、ノルウェー、ポルトガル、アイスランド)を原加盟国として発足した。国連憲章51条の規定に従って、 1又は2以上の締約国への武力攻撃を全締約国への攻撃とみなし、それに対して個別的又は集団的自衛権の行使することを加盟国がお互いに約束しあうものである。
NATOはもともと、米ソ対立の冷戦の中で、アメリカが西欧を傘下に入れてソ連側(ワルシャワ条約機構)と対決するために作られた軍事組織であった。したがって1991年のソ連崩壊によってNATOは大きな転機を迎えた。新たな存在意義を模索する必要性に迫られたのである。「新戦略概念」を策定し、脅威対象として周辺地域における紛争を挙げ、域外地域における紛争予防および危機管理(非5条任務)に重点を移しながら存続する道を選んだ。ソ連崩壊後の「自分探し」として、世界の内戦への介入や、テロ組織との戦いなどを試み、1992年に勃発したボスニア・ヘルツェゴビナにおける内戦では、初めて、軍事的な介入と国際連合による停戦監視に参加した。続いて1999年のコソボ紛争ではセルビアに対して制裁空爆を行なった。

NATOは2003年8月からアフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)を指揮し、主に「治安維持の任務」に当たってきた。11月末、ラトビアのリガにNATOの26カ国の国防相が集まってサミット会議が開かれた。そこでの議論の中心は膠着状態に陥っているアフガン問題であったが、無視できないのは、名指しは避けつつ海外派兵を自衛隊の「本来任務」にする日本やオーストラリアとの軍事連携を方向づけたことである。
自衛隊とNATOとの軍事的連携の仕掛け人はブッシュ米政権である。
ブッシュ政権はNATOの適用範囲を「北大西洋地域」から世界に広げ、アメリカの先制攻撃戦略に動員してきた。しかし、NATOの内部には、米英とそれに追随するポーランドなどの親米派と、独仏やスペイン、イタリアなどアメリカのやり方を懸念する反米派の勢力があり、イラクはもちろんアフガニスタンでも、NATOはアメリカのいいなりになってはいない。イラク戦争ではフランスやドイツなどが開戦に反対し、NATOとして戦争に参加させることはできなかった。アフガニスタンでも、米英両国が圧力をかけてもドイツやスペイン、イタリアなどは激戦地である南部地域に戦闘部隊を展開することを拒否している(「しんぶん赤旗」2006年12月6日)。
一方、日米同盟は小泉、安倍両政権の異常な対米従属路線のもとで、世界の軍事紛争に介入できる軍事同盟に大変質を遂げつつある。
ブッシュ政権のねらいは、日米安保とNATOの二つの軍事同盟の連携で相乗効果を発揮させ、アメリカの先制攻撃戦略を分担させることにある。そこには、NATOには日本のような対米忠誠心を求め、日本にはNATO並みに集団的自衛権の行使にふみきらせるバネにするという思惑もありそうだ(「しんぶん赤旗」同上)。

もともと、国連憲章は各国の勝手な武力行使を認めず、紛争は加盟国内部で集団的に問題を解決するのが原則である。ところが、当時の世界情勢のなかで、国連の統制をうけない武力の行使として国連憲章第51条に個別的および集団的自衛権の行使の条項が滑り込まされてしまった。これまでアメリカやソ連などが軍事行動を起こすときは、自国が攻撃されているわけではないから、この集団的自衛権がつねに口実として使われてきた。そして、この集団的自衛権こそ軍事同盟の口実に使われてきたのである。
NATOも日米安保条約も「集団的自衛の固有の権利を有していることを確認して」(60年安保前文)条約を締結している。
イラクでもアフガンでもアメリカの有志連合が泥沼に陥っているいま、原点である国連中心の集団的安全保障(集団的自衛権とはまったく異なる)で世界平和を追求すべきときである。そして、すべての軍事同盟は解消されなければならない。いつまでも、アメリカの逆流の試みを許してはならないのだ。

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