プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

暴行米兵に終身刑  主権意識の高いフィリピン人

2006-12-06 20:13:09 | 政治経済
事件は昨年11月1日、ルソン島中部オロンガポ市の旧スビック米海軍基地跡地、スビック自由貿易港内で起った。被害女性(23)の告発で地元の地方裁判所が、当時、米比合同軍事演習に参加するためフィリピンに来ていた沖縄駐留米海兵隊員六人に召喚状を発行。昨年末、そのうち四人を暴行罪で起訴した。しかし、米国側が四人の身柄引き渡しを拒否したため、国民のなかに米国の「フィリピンの主権無視」への怒りと抗議が広がり、今年一月、上下両院の外交・国防の合同委員会でつくるVFA監視委員会は、政府に協定破棄を米国に通告し、見直し交渉開始を求める決議案を採択。その審議が現在も上下両院で続くことになった。
こうしたなかで米兵四人の裁判がおこなわれ、ダニエル・スミス被告に最高刑の終身刑(最長40年の禁固刑)と賠償金10万ペソ(約23万円)の支払いを言い渡し、他の三人は「証拠不十分」を理由に無罪とした。 ダニエル・スミス被告は、裁判所の決定で判決後直ちにマカティ市内の拘置所に送られた。しかし、アメリカ側は身柄を保護することを比国政府に正式に申し入れており、スミス被告をどこで収監するかについて地位協定の解釈をめぐって、今後、両国政府を巻き込んでフィリピンの国民感情とアメリカ側が対立することも予想される。

フィリピン国民は、1992年に米軍を追い出したわけだが、東南アジアで軍の策動基地を確保しておきたいアメリカ政府は比国政府を抱き込み米軍の再訪問を認める協定を結んだ。こうして米軍は堂々と再び比国に出入りするようになった。とりわけ最近では、国際テロ組織アルカイーダと関係があるとされる東南アジア地下組織の一つJemaah Islamiyah(JIジャマ・イスラミア)が比国ミンダナオ島で活動しているのではないかということを口実に米比合同軍事演習が頻繁に行われている。

被害者の女性‘Nicole’(裁判所での仮名)は、現地新聞のインタビューに答えて、故郷には戻りたくない、誰も自分のことを知らない外国で再出発したいと語るとともに健気にもあまりにも若いスミス被告が40年の刑を受けたことには哀れみのようなもの(a tinge of pity)を感じる、被告は真実を認めてほしいと述べている。

日本でも米兵が犯罪を起こすたびに不平等な地位協定が常に問題となる。日本政府はそのたびに、頑として住民の声を聞かず、見直しの要求を圧殺してきた。スミス被告側の弁護団は控訴する方針で、米大使館での被告の保護継続を求めており、米比両国が協議するといわれている。今後の両国政府の対応や議会での論議、国民の運動は、われわれ日本人にも他人事ではなく、注目されるのだ。

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1 コメント

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これは幕末の不平等条約とかわりませんね (にら)
2006-12-31 08:53:57
まさに、やりたい放題ですな。
フセイン殺して、臭いものに蓋ができたし。w
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