プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

7党・会派の提案する野田首相の問責決議案可決は、民自公による事実上の大連立に対する問責決議

2012-08-30 21:01:57 | 政治経済

野田首相の問責決議がきのうの参院本会議で可決された。野田首相の問責決議案としては、先に提出されている野党7党のものと、28日に提出された自公2党のものがあり、野党内の調整が難航したが、最終的には、先に提出された野党7党案が上程され、可決された。公明党は棄権し、自民党は賛成した。これを見る限り、民自公の増税大連立はひとまず破綻したかに見える。しかし、消費税増税法案が成立したのは厳然たる事実である。民自公の事実上の大連立は、支配階級にとって死活的に重要な階級的利益を実現する手段として今後も使われ、繰り返されるだろう。

 

小泉政権で頂点に達した、自公政権の新自由主義政治・改憲策動に対し、私たちは待ったをかけ、さまざまな社会運動や平和運動が民主党のマニフェストを変え、その変わった民主党に国民が期待して、政権交代を実現した。しかし、新自由主義、日米同盟の危機を感じたアメリカ・財界の官僚・大手マスコミも動員した必死の巻き返しで、この3年間に民主党政権は鳩山、菅、野田と3人の首相が短期間で交代し、野田政権で新自由主義回帰、再稼働が確立した。国会内の反新自由主義勢力の不足から、私たちは、この間の民主党政権の変節をずるずると許してしまったが、ともかく、消費税増税が国民の願いに反し、公約に反していることを明確に突きつけた野党7会派の問責決議案を可決させるところまできた。

 

29日の参院本会議で可決された野田佳彦首相問責決議の理由は次の通りである。

野田内閣が強行して押し通した消費税増税法は、2009年の総選挙での民主党政権公約に違反するものである。 国民の多くは今も消費税増税法に反対しており、今国会で消費税増税法案を成立させるべきではないとの声は圧倒的多数となっていた。 最近の国会運営では民主党、自由民主党、公明党の3党のみで協議をし、合意をすれば一気呵成(かせい)に法案を成立させるということが多数見受けられ、議会制民主主義が守られていない。 参議院で審議を行う中、社会保障部分や消費税の使い道等で3党合意は曖昧なものであることが明らかになった。 国民への約束、国民の声に背く政治姿勢を取り続ける野田佳彦内閣総理大臣の責任は極めて重大である。 よってここに、野田佳彦内閣総理大臣の問責決議案を提出する。

 

この問責決議は、形式的には、野田内閣ではなく、首相に対するものである。
もっとも、問責決議の理由が消費税増税を問題視している点で言えば、「実質的には、野田内閣に対する問責決議」に相当する。また、問責決議の理由が民自公3党を問題にしている点で言えば、「実質的には、民自公3党に対する問責決議」に等しい。もっといえば、「実質的には、『民自公による事実上の大連立』に対する問責決議」に等しいのである(上脇博之「ある憲法研究者の情報発信の場」2012.8.29)。

言うまでもないことであるが、一般庶民に「痛み」を強いる消費増税等の法案を成立させた責任は、民主党だけにあるのではなく、問責決議に賛成した自民党にも、棄権した公明党にもある。

 

問責決議は可決されたが、野田政権は、今国会で衆議院を解散しないようだ。今後国会が空転すれば、その責任は、国民の意思を問うことなく、密室談合で消費税増税法案を強引に成立させた民自公三党にあることは言うまでもない。

 

日本では、アメリカいいなり・大企業本位という政治の異常を正す勢力が選挙制度の不公正もあって、国会内ではきわめて弱小である。しかし、新自由主義の矛盾・弊害を体験し、その是正のための政権交代の失敗を体験した国民は、一段、賢くなった。かつて企業主義国家時代に、保守の強い支持基盤であった地域保守層―農協や各種業界団体、医師会など―も、反新自由主義それだけに、支配階級も新たな手口、イデオロギーを準備する。社会保障との「一体改革」を持ち出したり、民主党にも自民党にも愛想をつかせた国民に向け、橋下「維新の会」をもて囃すのも、新たな手口の一つである。

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。