プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

エクアドルの新憲法  日本の民主的変革にも参考になるその内容

2008-10-07 19:08:41 | 政治経済
南米エクアドルで、9月28日に行われた国民投票で、新自由主義と米国言いなりの政治を180度転換する新憲法草案が賛成多数で承認された。新自由主義と米国言いなりの政治を根本的に転換する課題に直面している日本の民主的変革にもその内容は、大いに参考になる。

エクアドルでは1990年代、国際通貨基金(IMF)からの融資条件として新自由主義の構造調整政策(いわゆるワシントン・コンセンサス)が押し付けられた。水道など公共サービスの民営化、公共料金の値上げ、金融自由化、労働法制の規制緩和などが進められた結果、基本公共サービスを受けられない国民が急増した。制憲議会議員のヘルマニコ・ピント氏(国民同盟)は次のように語る。「経済成長は必要です。しかし労働法制の緩和や民営化を進めるだけでは、大部分の国民生活は破綻する。これが20年余りの教訓です。教育、医療、食料、雇用など人間の基本的権利は市場任せにしない発展モデルをつくる。新憲法の中心点はここにあります」。
旧政権や大企業の関係者は「規制を強めると経済が停滞する」と主張し、新憲法案への反対を呼びかけた。しかし結果は64%の国民が新憲法に賛成し、反対は28%だった(「しんぶん赤旗」10月4日)。

新憲法の規定のなかで国民が大きな期待を寄せているのが、不安定雇用の禁止である。新憲法は、雇用関係は「雇用主と労働者の直接関係」であり、派遣労働や雇用の仲介、時間給労働契約など「不安定雇用のあらゆる形態は禁止」とした。新自由主義が導入された1990年代以降、労働法制の規制緩和が進められ、派遣や契約社員、時間給労働が急増。正社員は全労働者の3分の1から4分の1にすぎないという。「3ヶ月程度でクビを切られるので労働者は技術を習得できない。正社員と同じ仕事なのに休暇や給料の待遇が違う。これでは労働者の士気は下がります。不安定雇用は結局、生産性を下げ、経済を後退させているのです」。エクアドル自由労働組合総同盟のエドゥアルド・バルデス議長はこう強調する(「しんぶん赤旗」10月5日)。

新憲法はエクアドルを「平和の領土」と宣言し、外国の軍事基地・施設の設置を認めないこと、核・生物・化学兵器の生産や保持、通過を禁止することなどを明記した。エクアドルは1999年、太平洋岸マンタにある空軍基地を米軍に使用させる協定を結んだ。パナマにあった米軍基地の撤去に伴い、米国が求めたものである。協定は10年間有効で、延長できるとされている。拡張された基地には南米でコロンビアに次いで多い米軍兵士が駐留し、麻薬取り締まりを名目に空中警戒管制機(AWACS)や哨戒機、空中給油機などを配備している。中米エルサルバドル、カリブ海のキュラソーとともに米南方軍の前線作戦基地とされ、南米ににらみをきかせてきた(「しんぶん赤旗」10月4日)。
エクアドル政府は、今年7月、米国に対し2009年秋に期限切れとなる協定を更新しないと通告。エクアドルの平和運動はさらに、国の主権と独立を確実にするため、外国軍事基地を認めないことを新憲法に明記するよう求め、それが実現したのだ(「しんぶん赤旗」10月6日)。

エクアドルの新憲法をめぐる国民投票の結果は、コレア大統領と与党、政権を支える広範な市民の運動にとって、06年の大統領選、07年の制憲議会設置の国民投票と制憲議会選に続く四度目の勝利で、変革の着実な進展を示すものだ。米軍基地撤去の運動には多彩な市民団体・運動が参加し、06年にコレア政権を生み出した社会運動の柱の一つともなった。07年にはマンタで、日本平和委員会をはじめ世界の外国軍事基地撤去の運動が参加して「外国軍事基地撤去国際大会」を開き、国際的なネットワークづくりに発展している
財界本位の新自由主義と米国言いなりという「二つの政治悪」を根本的に転換する日本の民主的変革を目指す者にとって、民主的で自主的な政治をめざす中南米諸国の変革の波から目が離せない。

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