プロメテウスの政治経済コラム

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宇宙基本法施行で早くも進む宇宙の軍事利用  米軍下請けと税金無駄遣いの道を止めよう

2008-10-06 18:54:09 | 政治経済
2009年度の宇宙関係予算の概算要求では、自民・公明・民主の各党が5月に強行した宇宙基本法をたてに、防衛省が「安全保障」名目で公然と宇宙の軍事利用の拡大に乗り出している。宇宙の軍事利用は、日本がアメリカとともに海外で戦争する場合、効果的に下請けが可能なようにその能力を整備することを目指すものである。同時に宇宙利用で大もうけするため「宇宙産業の競争力強化の必要性」(日本経団連)を強調する財界・軍事産業の要求に応えるものである。米軍が世界でやっている戦争のことを考えた場合、宇宙基本法を強行した自公民三党の責任は重大だ。

日本は1969年に、国会で宇宙利用を「平和の目的に限り」とする決議を全会一致で採択し、政府は「平和目的」とは「非軍事」であると説明してきた。ところが、いまや宇宙からの指令で戦争する米軍の下請けをするためには、宇宙の軍事利用を進めないわけにはいかない。衆参両院合わせて、国会での実質的な審議はわずかに4時間で、宇宙を軍事利用することに道を開く宇宙基本法が自民、公明、民主の3党の賛成多数で08年5月21日、参院本会議で成立した(8月27日施行)。反対したのは日本共産党と社民党である。宇宙基本法が成立した5月21日夕刻、日本航空宇宙工業会(宇宙・軍需関連企業の集まりで、会長・森郁夫富士重工業社長)は東京都内ホテルで「祝宴」を開き、森会長はつぎのように歓迎の挨拶をした。 「世界各国は航空宇宙産業を戦略産業と位置づけ、積極的な取り組みを進めている。宇宙基本法が成立したこともあり、宇宙産業をさらに活性化していく必要がある」と(「しんぶん赤旗」5月22日)。 

早速、軍事衛星の保有・利用の具体化に向けた政府・防衛省の動きが、本格化している。政府の宇宙開発戦略本部は10月1日専門調査会の初会合を開き、防衛省もすでに宇宙開発利用推進委員会を始動させている。防衛省は、検討結果を次期「防衛計画の大綱」の見直しと中期防衛力整備計画の策定に反映するとしている(「しんぶん赤旗」10月6日)。
09年度の宇宙関係予算の概算要求は、11府省庁の合計で約4086億円が計上された。08年度予算比で約926億円増(29%増)である。分野別内訳をみると、「安全保障」分野が約1279億円と、31%を占めている(「しんぶん赤旗」9月18日)。

法律は、「国際社会の平和及び安全の確保」(=米軍の軍事行動につき従うの意味)を目的にうたい、自衛隊の海外活動のために軍事衛星を使うことを想定している。そのために「防衛専用通信衛星の保有が不可欠」とし、地上物体の解像精度が高い偵察衛星を独自に「開発」し、イラクのような海外の広大な戦場で、迅速に移動し軍事作戦を実施するために、GPSのような航法衛星や通信衛星、偵察衛星をもつというのだ。衛星を利用した自衛隊の作戦能力の強化は、アフガニスタンでもイラクでも軍事衛星を使って無差別殺りく戦争を進めている米軍との軍事一体化には不可欠である。後方支援にとどまらず戦場でもっと大きな役割を果たせというアメリカの要求に応えるものであることは明らかだ。防衛省が来年度予算の概算要求で計上した「偵察用小型無人機」の導入は、早くもその動きを示すものである。無人機は航法衛星や偵察衛星が不可欠な兵器である。米軍はアフガニスタンやイラクで、米兵の犠牲をだすことなく地上攻撃するためにすでに頻繁に使っている。軍事衛星の保有・利用を決めたとたんに、無人機の導入にふみきるのは、後方支援だけでなくより危険な軍事行動も分担せよというアメリカの要求にこたえようとする意思を示すものだ(「しんぶん赤旗」10月6日)。

米軍の軍事行動につき従う道は、「国際社会の平和及び安全の確保」どころか、「平和と安全」を破壊する道である。国民生活が危機に瀕しているときに、財界・軍事産業の儲けのために巨額の国家予算を浪費している余裕はない。宇宙の軍事利用は、やめさせるしかない。「今こそ政治の中身を大本から切り替え、民主的政権へ大きな一歩を踏み出そう」(共産党・市田書記局長)。

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