プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

安倍「戦後70年談話」の核心は何か

2015-08-15 19:13:16 | 政治経済

 8月14日、安倍首相は戦後70周年首相談話を発表した。いわゆる「安倍談話」は、札付きの歴史修正主義者で鳴らす極右安倍の談話がアジアや世界にどんな波紋を巻き起こすかで早くから関心を呼んできた。しかし、ある意味では予測されたことだが、アメリカの傀儡である安倍にできることは限られていた。日本会議や右派の期待を受けて「侵略」「植民地支配」「痛切な反省」「おわび」の4点セットが入った村山談話を“上書き”すると意気込んではみたもののそんなことをアメリカが許すはずもなかった。結局、悔しさを紛らわせるため、安倍取り巻き官僚は、小賢しさの限りを尽した作文に腐心した。村山談話をそのまま維持したくないという意地を通し、”村山談話”の内容を薄めた上で、日米同盟の強化による「積極的平和主義」やアジアに対して謝罪を繰り返さないという核心部分を盛り込んだ。

「安倍談話」は、「侵略」「植民地支配」のキーワードは入れたが、それを首相自身の歴史認識として示すことは巧妙に回避し、「反省」と「おわび」についても「歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎない」と間接話法にすり替え、決して自ら「おわび」する形にはしなかった。これについてのもっとも愚かな解説は、例によってNHKの報道である。NHKの7時のニュースは、4つのキーワードが「すべて取り入れられたから、中国、韓国からも一定の理解が得られるのではないか」などと馬鹿な解説を加えていた。

 

 「安倍談話」の核心は、「侵略」「植民地支配」「痛切な反省」「おわび」などのキーワードが入るかどうかなどのレベルの話ではない。

安倍談話の本意=核心部分は次の2点である。

①「日本では、戦後生まれの世代が、今や、人口の八割を超えています。あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」

②「我が国は、自由、民主主義、人権といった基本的価値を揺るぎないものとして堅持し、その価値を共有する国々と手を携えて、『積極的平和主義』の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献してまいります」

①は「謝罪の歴史に区切り」をつけたいという安倍の意思の表明であり、②は懸案となっている「戦争法案」を何としても成立させ、軍事大国としてアメリカを盟主とする現代帝国主義同盟の確固たる一角を占めたいという決意表明である。

①の「謝罪の歴史に区切り」をつけたいという安倍の決意については、中国、韓国からの反発はさけられない。なぜなら、日本の支配層が、戦後から今に至るも一貫して、白井聡さんの「永続敗戦」(=敗戦を否認し、敗戦を総括できない)の状態にあるなら、謝罪を求める戦争被害者の側も永続的に謝罪を求め続けるほかないからである。

②の軍事大国化の道は、安保条約の下での米軍、自衛隊の共同軍事演習の積み重ねが、いよいよ憲法9条を突き抜ける極限にまで到達していることを意味する。戦後70年間、多くの日本国民が共有してきた「戦争に強いことを国家の誇りにしない」というコンセンサスを爆破する企てである。憲法9条+日米安保の都合のよい蜜月がいよいよ破綻に直面しているということだ。

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。