プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

経済力1位、2位の国は、貧困率も1位、2位―米国型不平等放置社会の到来

2006-12-09 20:17:49 | 政治経済
同報告書によれば「日本は、OECD加盟国中、1980年代半ばから2000年にかけて絶対的貧困の増加を経験した唯一の国であり、所得の中央値の半分以下しかない人口の比率と定義される相対的貧困率は、この間著しく増加して、加盟国中上から5番目に高い国となった(18歳から65歳までの生産年齢人口の可処分所得では第2位)」。日本よりもこの割合が高い国は、上から順にメキシコ、米国、トルコ、アイルランドである(調査対象国27国)。生産年齢人口の可処分所得での調査対象は17カ国であるが、1位アメリカの13・7%、2位日本の13・5%は17カ国平均の8・4%に比べてダントツに高い(「しんぶん赤旗 日曜版」2006年11月26日号)。

世界の富と豊かさの象徴である米国でなぜ貧困率が1位なのか。
アメリカ経済の基本が剥き出しの資本主義―弱肉強食・優勝劣敗のシステム―であることがまず一番にあげられる。さらに人種・民族集団間の格差が著しい格差社会であることがあげられる。2005年の米政府が定めた貧困基準以下の人口は、全人口の12・5%であるが、黒人アメリカ人ではその2倍の24・9%、ヒスパニック(ラティーノ)は21・8%であった。アメリカ政府は、この格差・階級社会を是正する気はなく、不平等を放置し、新自由主義的政策を推し進めているのである。その結果が米国における相対的・絶対的貧困の著しい高さとなっている(「しんぶん赤旗 日曜版」同上)。

いまこのアメリカの不平等放置社会のあとを追っているのが、日本である。日本の相対的貧困率13・5%に相当する数値は、1990年代半ばで11・9%であったから、「構造改革」路線のもとで、相対的貧困化が進んでいることを示している。OECDの報告書は2000年まであるが、2001年以降、小泉「構造改革」は、労働法制の規制緩和をさらにすすめ、庶民大増税で格差を固定・拡大させてきた。現在では日本が貧困率世界1位となっていることは十分に予想される。

貧困というと私たちは、テレビの影響でアフガンやパレスチナの難民キャンプの電気も水も食料も不足するぎりぎりの生活を想像して自分は貧困でないと思いがちである。しかし、衣食住がなんとか確保されていれば、貧困でないというのは大きな間違いである。憲法第25条の「健康で文化的な最低限度の生活(the minimum standards of wholesome and cultured living)」とはその社会での一定の文化的水準を維持できる生活水準である。子どもを育て、高校教育を受けさせられるぐらいの余裕のある生活水準でなければ、すべて貧困であると言っていい。
現代日本では、非正規雇用の拡大による労働市場の二極化のもとで、働いていながらその所得が、余りにも低い生活保護費水準にも満たないいわゆる「ワーキングプア」が急速に増えている。都留文科大教授の後藤道夫さんは、総務省の就業構造基本調査を使ってワーキングプアは、1997年の514万2千世帯(勤労世帯の14・4%)から2002年には656万5千世帯(18・7%)に増加していると試算している(「しんぶん赤旗」2006年11月21日)。

そして今また、安倍政権は「財界」の要求に従い、経済財政諮問会議や労働政策審議会で「労働ビッグバン」という名の労働者・勤労者の強制的貧困化を推し進めようとしている。私は、労働法制の規制緩和による強引な「貧困層」の創出は、その昔、イギリスでは資本の原始的蓄積のために「囲い込み運動」(エンクロージャー)が行われたが、現代日本の多国籍企業の資本蓄積のための一大社会改造だと理解している。アメリカでの人種・民族集団間の格差が同一民族の間で強引に作られているのだ。

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