プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

「北方」領土問題―自民党外交では解決不可能

2005-11-21 19:00:10 | 政治経済
小泉首相は21日午後、ロシアのプーチン大統領と首相官邸で会談し、日ロ間の最大の懸案である北方領土問題の打開へ向け意見交換した。しかし、領土問題をめぐる日ロ間の基本的立場の隔たりを埋めることができず、今回は、共同声明の発表まで見送らざるをえなかった。領土問題解決の論理をもたず、首脳同士の信頼関係とか経済協力の提案とか、要するに相手の「好意」にすがる自民党外交では、「北方」領土問題は解決しない。そもそも「北方」領土問題という呼称自体、論理の破綻なのだ。
1855年の「日魯通好条約」は、樺太については、従来どおり国境を決めない、千島列島については、ウルップ島と択捉島の間に両国の境界をおき、択捉島以南の南千島を日本領、ウルップ島以北の北千島をロシア領とすることとした。その後、樺太の領有問題について日本政府とロシア政府の交渉がおこなわれ、1875年の「樺太・千島交換条約」によって、樺太全島をロシア領とする、そのかわりに、ウルップ島からシュムシュ島にいたる北千島を日本に譲り、千島列島最北端のシュムシュ島とカムチャッカ半島のあいだの海峡を両国の境界とすることがきまった。以後、多数の日本人が千島列島に住みついた。1905年、日本は、日露戦争の勝利で、樺太の南半分を割譲させたが、全千島列島は、上記のように平和的な国境画定作業の結果、日本領となったものである。
ところが、第二次世界大戦の戦後処理において、1945年8月、ソ連のスターリンは、日本の歴史的な領土である千島列島と北海道の一部(千島には含まれない)である歯舞、色丹を併合してしまった。日本政府は、この無法をただすことなく、1951年のサンフランシスコ条約で、千島放棄条項を認めた。
歯舞、色丹が千島放棄条項の千島に含まれないことは、国際法上の根拠があるが、国後、択捉は千島でないとは国際的に通用しない議論である。自民党が、本来、千島列島の領土問題を「北方」領土問題などと訳のわからないことをいうのは、サンフランシスコ条約の千島放棄条項を認めてしまった経緯があるためなのだ。
ロシアとの領土問題は①北海道の一部である歯舞、色丹を併合してしまったスターリンの無法をまず訴えなければならない。次に②国後、択捉も含めた、ウルップ島からシュムシュ島までの全千島の戦後処理について、ヤルタ協定でどのような密約があったにせよ、「領土不拡大」という連合国の戦後処理の原則から逸脱するものとして、国際世論にも訴え、ロシア政府と粘り強く「正論」で交渉することである。
国際政治の現実問題として、「正論」で説得するためには、小泉のような「代価」を払って、米軍基地を永久化して恥じないような人間では、誰も本気で取り合わないであろう。日本国民は不幸な首相をもったものだ。



最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ロシアとの交渉 (sadakun_d)
2005-11-21 19:43:36
北方領土といい、北朝拉致問題と「小泉純一郎」で大丈夫なんだろうか。



プーチン大統領は、十\分に用意をして「日本・ロシア」の外交レベル会議に出ているわけだから、日本政府も、ちゃんと学習をしてから、テーブルにつくべきだ。



何年前からロシアは「北方領土に問題はない!」とコメントしたわけだから、それを覆す外交を望む
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。