プロメテウスの政治経済コラム

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鳩山首相の偽装献金問題  巨額の課税逃れは極めて悪質

2009-12-11 16:19:56 | 政治経済
政治資金管理団体「友愛政経懇話会」の政治資金収支報告書に、故人の名前が個人献金者として記載されていることから始まった鳩山首相の偽装献金問題。故人が献金するわけがないので、「偽装」献金はどこからの資金か、その原資が大問題である。鳩山氏は今年6月には「自分個人の資金だ」と言い、11月の予算委員会では、母からの資金では「ないと信じる」と答え、今は「知らなかった」と答えている。

 元公設第1秘書が関係者に「首相の実母から2008年までの5年間に計9億円の提供を受けた」と説明しているという。事務所関係者は、この資金提供について、元秘書や母が当時、「貸付金」と理解していたというが、借用書や返済の取り決めもなく利息も支払っていない。資金が母親からの贈与なら鳩山氏に贈与税の支払い義務が生じ、政治団体への寄付であれば政治資金規正法の量的制限違反(資金管理団体に対する個人献金の量的制限は年間150万円)の可能性が浮上する。


「しんぶん赤旗 日曜版」2009年12月6日号より


 友政懇の政治資金収支報告書に、5万円を超す献金をしたとして名前が記載されていたのは、この4年間で、のべ261件。ところが、鳩山氏は6月30日の記者会見で、2005年~08年の4年間でのべ193件、総額2177万8000円が虚偽記載だったと発表した。じつに実名献金の73・9%がウソだったということだ。政治資金規正法は5万円以下の個人献金については、名前を記載しなくてもよいことになっている。いわゆる小口の匿名献金である。鳩山氏の友政懇は、04年4749万円、05年3969万円、06年3682万円、07年2779万円、08年2666万円―と、5年間で約1億8000万円、年平均約3600万円が小口献金だとしている。年平均約3600万円、仮に全員が5万円の献金をしたとしても、毎年700人以上の「匿名」献金者がいたことになる。会計原簿には、個人寄付者の名前、金額、日付などを記載保存しなければならないが、原簿がない、という。誰かからの一括大口の寄付を意図的に分散させ、誤魔化したのだろう。

 首相の弟の自民党の鳩山邦夫元総務相も同じように実母から資金提供を受けていたようだ。8日、東京都内で開いた自身のパーティーで、実母からの資金提供について「兄(鳩山由紀夫首相)と違うのは、『新声会』(資金管理団体)の政治資金収支報告書に虚偽記載という犯罪行為がないことだ」と述べ、政治資金ではないと釈明。そのうえで、実態が明らかになれば贈与税を納めるという。

 鳩山兄弟の母親が、東京地検特捜部に上申書を提出する意向であるという。鳩山首相らへの資金提供について、事実関係などを説明するとみられる。特捜部は、健康上の理由などから、参考人としての母親の聴取を見送る方向で検討を進めている。関係者によると、鳩山氏の母親は、鳩山家の資産管理会社が管理していた資産から約36億円を現金化。2008年までの5年間に鳩山氏側に約9億円を提供したとされる。毎月1500万円を鳩山氏の元公設秘書が母親側から受け取り、金庫で管理。一部を偽装献金の原資に充てていた(時事通信12月11日11時19分配信)。

 税理士の浦野広明さんは、次のように指摘している(「しんぶん赤旗 日曜版」2009年12月6日号)。
<「企業からのお金でなく親族だから悪質性が低い」という見方には賛同できません。 家族間の貸し付けでも、借用書や返済の証拠がない場合、税務署は贈与とみなすのが一般的です。 実母から鳩山首相に渡ったお金は5年で9億円、1年間に1億8千万円と巨額です。 どれだけの贈与税が生じるか、ざっと計算すると、年間8720万円。5年で4億3600万円です。>
悪質な課税逃れと認定されれば、重加算税(本税の4割)が追徴され、延滞税(年利14・6%)も加えれば、6億円を超える脱税である。鳩山氏は7千万円超の株式売却益も申告していなかった。知らなかったでは済まされる問題でない。日頃、中小業者からは、呵責に税を取り立てる国税当局は、権力者に対してこそ、きちっと調査権を発動するべきだ。


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