プロメテウスの政治経済コラム

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制裁と信頼の関係 「制裁を維持する」というのは、「関係正常化をしない」という宣言

2018-09-14 18:35:09 | 政治経済

米朝首脳会談以後初めて行われた両国の高官会談(7月)で、ポンペオ国務長官がCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)に基づく北朝鮮の一方的非核化を持ち出したことが原因で米朝交渉はこう着状態におちいっている。トランプ大統領ー金正恩委員長首脳間の関係のぶち壊しはお互いに避けているようだが・・。

終戦宣言に背を向け北朝鮮の一方的な非核化を要求することは、北朝鮮政権の打倒、崩壊を目指して、制裁と圧力を加え続けてきたクリントン、ブッシュ、オバマの歴代政権となんら変わらない。歴代政権の失敗の理由は、北朝鮮が崩壊すると信じていたからだ。時間の問題だと。「インターネットなどの情報が北朝鮮に変化をもたらす。北朝鮮の・・・政権をこれ以上維持する事は難しい。 アメリカは北朝鮮に対する圧力の水位を高め、時間とともに北朝鮮は崩壊することだろう」(オバマ前大統領自身の発言)。オバマが語った「圧力の水位を高め」とは、経済制裁とともにミニットマン核ミサイルの発射演習、B-52による核模擬爆弾の投下演習などの露骨な核恫喝を含んでいた。

「制裁の継続」は6月12日シンガポール首脳会談で米朝両国が合意した「新たな関係」にふさわしくない。制裁は力で解決する過去のアプローチと同じであるからである。制裁の維持は「関係正常化」の合意とも衝突する。「制裁を維持する」というのは、「関係正常化をしない」という宣言に他ならない。

制裁は経済建設に集中しようとする北朝鮮を圧迫する手段であるのは間違いない。だから、交渉力を高められるかも知れない。しかし、制裁を続ければ、失うものがある。他ならぬ信頼だ。米朝首脳会談で「信頼構築で非核化を成し遂げよう」と合意した理由は、「力に基づいた過去のアプローチ」が失敗したからだった筈。新たな関係、新たな出発、新たな歴史に合意しておいて、なぜ失敗した過去を繰り返そうとするのか。制裁は手段であって、目的ではない。制裁という手段に執着して非核化という目標を失ってはならない。



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