プロメテウスの政治経済コラム

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農水相辞任  問われるべきは政官業癒着による税金環流のからくり

2007-09-04 19:23:02 | 政治経済
内閣改造からたった1週間で、遠藤農水相が辞任した。組合長を務めていた農業共済組合が、国の補助金を不正に受けていた問題が露見したためだ。安倍政権の閣僚交代は遠藤氏で5人目で、農水相は3カ月間で3人目である。遠藤氏は辞表提出直後の記者会見で、辞任の理由について、「農業行政への信頼を傷つけないようにする配慮から」「今後の国会運営を考えると非常に申し訳ない状況になった」などと、政府・与党の事情を優先した判断だったことを強調するだけ。不正受給をめぐる自らの関与については、なにも明らかにしなかった。安倍首相は、遠藤氏の辞任を受け記者団に、「任命責任は私にある」としつつ、「今後、農水行政が遅滞しないよう全力を尽くすことで責任を果たしたい」と述べ、税金環流の真相解明に取り組むつもりなど毛頭ない(「しんぶん赤旗」9月4日)。

政治家に税金が環流する仕組みはいろんなルートがあるが、遠藤氏の場合、自らが主宰する農業共済組合に補助金を掠め取るというかたちで、古典的な税金環流を行った。遠藤氏は1982年から「置賜(おきたま)農業共済組合」(山形県米沢市)の組合長に就任している。同組合関係者によると、初当選する86年の総選挙から、毎回の選挙で組合職員が選挙活動に動員されていたという。選挙運動は組合上部から指示され、選挙運動用はがきのあて名書き、選挙事務所要員の派遣、演説会の要員など、すべて、勤務時間内に行われる“仕事”であった(「しんぶん赤旗」9月3日)。
自己の選挙活動、政治活動のために、加入者を水増しして国の税金を掠め取るという詐欺的手法まで用いて、税金環流をおこなった。会計検査院から指摘されても、おいそれと返還しないわけだ。まさに実質的な「公金着服、詐取、横領」そのものだ。

遠藤氏はまた、農水省所管の独立行政法人の補助金を受けた県家畜商業協同組合から献金をもらっていた各省庁の外郭団体へ、補助金とか何らかのサービスの対価の名目で税金を流す。高級官僚が天下る。予算をつける政治家に献金の形で税金の一部を環流させる――これが長年の自民党支配を支えてきた政官業癒着による税金環流のからくりである。
道路族の幹部が地元に道路建設を誘導し、受注した企業から政治献金を受け取る―公共事業受注企業からの政治献金は、税金環流の典型である。政治資金規正法が禁止しているのは、国から補助金を受けた団体は交付決定から一年以内に政治活動に関する献金をできないということだけである。

補助金を受けている公益法人は政治献金が禁止されているが、「調査・研究の場合は規制外」としているため献金がまかり通っている。経済産業省所管の業界団体である日本電機工業会、日本自動車工業会、日本鉄鋼連盟などは、国からの補助金受領の常連であるが、同時に自民党に多額の献金をする常連でもある。さらに多くの公益法人は、献金のために別の政治団体を名目的に設立している。たとえば、公益法人である日本歯科医師会は、代表者・会計担当・住所などがまったく同じ政治団体=日本歯科医師連盟をつくり、自民党に巨額の献金してきた。補助金を受け、減税までされている公益法人が自民党に献金する―まさしく、国民の税金の自民党への環流である

遠藤農水相辞任をもって「一件落着」とするわけにはいかない。安倍首相は、この問題についての自らの責任について、まだ明らかにしていない。ことは国民の税金の使われ方、行政のあり方に深くかかわっており、企業・団体献金と政党助成金にまみれた、自民党の腐敗の骨がらみの問題である。問われるべきは政官業癒着による税金環流のからくりなのだ。

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