プロメテウスの政治経済コラム

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菅・民主党政権のもう一つの裏切り  内閣官房機密費の取り扱い

2010-08-09 21:34:45 | 政治経済

仙谷由人官房長官は8月3日の衆院内閣委員会で、使途が問われている官房機密費(内閣官房報償費)の帳簿書類に関して「現時点では引き継いでいない」と述べ、平野博文氏から官房長官を引き継いだ際に残されていた機密費の金庫残高についても答えなかった。鳩山前内閣が今年4月から1年間かけて行うと表明していた官房機密費の使途の検証作業は「1年ぐらいいただきたい」と述べ、今後の情報公開についても約束しない考えを示した。共産党の塩川鉄也議員の質問に答えた(「産經」8月3日20時53分配信)。
毎月1億円もの税金が官房長官への渡切交際費として公金費消されている。その使途を明らかにもせず、会計検査院の監査も受けない公金費消は官邸、官房長官による公金横領である。
消費税でも普天間問題でも自民党化する菅・民主党政権は、官房機密費の取り扱いでも自民党化するつもりのようだ。

 役員又は従業員に対する渡切交際費(その使途、使用金額について精算されないもの)は、企業会計上は、交際費としては認められず、支給を受けた役員、従業員の給与となる。従って、個人給与に合算して所得税を納めなければならない。しかし、官房長官が所得税を納めたということは聞いたことがない。税金を納めないで、その使途、使用金額について精算されない官房機密費は、公金費消、公金横領である。
2001年2月5日、鳩山由紀夫民主党代表は、衆院本会議で「(官房機密費は、)55年体制のいわゆば政治的遺物であり、官邸が機密費として持つ必要性はなくなったのではありませんか」と小泉首相を追及し、5月9日の本会議では、「私たちは、法律で機密費の支出範囲を厳しく限定し、支出状況を国会の非公開委員会でチェックする機密費公表法案を用意しています」と述べ、6月には、官房機密費の支払いの記録作成を義務化し、一定の期間経過後に公開する「機密費の使用に係る文書の作成、公表等に関する法律案」を国会に提出した。
ところが、昨年9月17日、鳩山内閣発足翌日の記者会見で官房機密費の扱いを問われた平野官房長官は、「そんなのあるんですか。まったく承知しておりません」と言い放ったのだった。

 平野氏の跡を引き継いだ仙谷官房長官も引継ぎの帳簿も残高も知らないと言い放った。
菅・民主党政権は、自民党政権同様、内閣官房報償費の使途を公表・公開することはなさそうだ。上脇博之・神戸学院大法科大学院教授(政治資金オンブズマン共同代表)は、民主党政権が、自民党政権同様、内閣官房報償費の使途を原則公表・公開することに消極的なのは、「自民党政権の国会対策(野党対策)の一環として、当該報償費を受け取っていた議員を党内に抱えているからではないか、いうことが、真っ先に挙げられる」という。過去の使途の原則公表は、自民党への批判につながるだけではなく、民主党への批判としても跳ね返ってくることが分かっているのだ
上脇教授は、「だが、原則公表・公開しないし理由には、もう一つあるのかも知れない。そのヒントは、喜納昌吉・参議院議員(当時)が『沖縄でうわさなんですけれどもね、来るべき知事選にも官房機密費を使うといううわさが流されていて・・・』と国会で発言していたことにあるように思う」という。
言うまでもなく、来る11月の沖縄知事選挙は、今後の普天間問題、安保問題に大きな影響をもつ重大な選挙である。

 官房機密費が沖縄知事選の選挙対策に使われた“実績”については、小渕内閣で官房副長官を務めた鈴木宗男氏(現在「新党大」代表)の証言がある
元外務省主任分析官の佐藤優氏が、琉球新報の「ウチナー評論132 沖縄と官房機密費(上)」(2010年7月31日)と「ウチナー評論133 沖縄と官房機密費(下)」(2010年8月7日)で、鈴木宗男氏と面談したことを紹介している。

佐藤「記憶ははっきりしていますか」
鈴木「はっきりしている」
佐藤「額はいくらですか」
鈴木「3億円使ったと聞いている」
佐藤「どこでその話しを聞きましたか」
鈴木「(内閣総理大臣)官邸の食堂で、昼食のときだ。小渕さんは、『沖縄の選挙はそんなにカネがかかるのか』と言っていた」
佐藤「内閣官房機密費は年額12億円でしょう。3億円は額が大きすぎませんか」
鈴木「小渕(恵三首相)さんは『外務省枠があるから、足りなければそれを使え』と言っていた。当時、外務省から裏で20億円の外交機密費(報償費)が官邸に上納されていたからね。3億円なら出せる」

1998年、現職の大田昌秀氏が稲嶺 恵一氏に敗れた裏には外務省機密費の上納問題も絡んでいたという証言だ

 官房機密費では、自民党の元幹事長で、官房長官などを歴任した野中広務氏が、官房機密費が与野党の政治家などのほか、「言論活動で立派な評論をしておられる人」にも、「盆暮れのお届け」として配られていたことを証言して波紋を呼んだ。大手マスコミが機密費の報道に及び腰になるはずである。
しかし、これらは、すべて自民党政権にかかわる話だが、民主党の喜納昌吉前参院議員が国会で取り上げた問題は、鳩山政権・平野官房長官に係る疑惑である
日米合意で沖縄県・米軍普天間基地の「移転」先とされている名護市での「地元工作費」のほか、鳩山政権が同県うるま市や鹿児島県・徳之島への一部「移設」を検討したさい、当時の平野官房長官が現地の自治体議員を官邸に呼んだり銀座で接待した費用に官房機密費を使ったというのだ。
「私は、沖縄民族を代表する国会議員の一人として今日は質問したい」といった喜納昌吉氏は残念ながら、7月11日の参議院選で当選できなかった。

 鳩山政権以上に自民党的な菅・民主党政権が渡切交際費のうま味を放棄するとは思えない。こんなときこそ、衆参各院は、国政調査権を行使して、主権者国民のために真相究明すべきである。
しかし、それは無理だろう。自民党が野党第一党であり、唯一それを実現できそうな共産党は議席を減らしたのだから。アホの一つ覚えだが、「その国の政治がアホなのは国民がアホだから」。


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