プロメテウスの政治経済コラム

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日銀 来年度実質GDP見通しを-2.0%に下方修正 猛烈に落ち込む日本経済 不況克服の道は?

2009-01-26 20:28:12 | 政治経済
日銀は先週22日に、昨年10月末に公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)の中間評価を行い、2009年度の国内総生産(GDP)の実質経済成長率見通しを、従来のプラス0・6%からマイナス2・0%へ大幅に下方修正した。08年度も同マイナス1.8%に下方修正(従来はプラス0・1%)となり、この結果、2年連続のマイナス成長見通しとなった。現在判明しつつある経済指標は2008年11月頃までのものであり、それが猛烈に落ち込んでいることが分かったためである。現実の我々の身の回りの経済は既に2009年1月を通過しつつあるのだが、最近わかった経済データによれば、「10月頃から一段と急激に落ち込んでいた」ということだ(IT時代の今日、統計データの収集をもっとスピードアップできないものだろうか)。

日銀は、景気が「大幅に悪化」しており、2009年度の実質成長率はマイナス2・0%になると、政府見通しの0・0%などにとてもおさまらないといっているのだ。昨年10月以降の経済指標が明らかになるにつれて、経済の実態は思ったよりもずっと悪化していることに驚いた。その代表的なものとして「鉱工業生産指数」と「機械受注」(船舶を除く民需)の動きは、10月以降まさに急転降下である。「鉱工業生産指数」の11月の前月比(季節調整済み)はマイナス8・1%(その後1月19日に確報が発表され、マイナス幅はさらに8・5%に拡大)。法政大学大学院教授の小峰隆夫さんは、「単月での変化率ではイメージがつかみにくいので、これが1年間続くとどうなるかを計算してみると、何とマイナス63.7%(!)となる[これを「年率」といいう。具体的には0.919を12乗することによって求められる]。1年間で生産レベルが約3分の1にまで落ち込んでしまうほどのスピードだということである。同様に「機械受注統計調査」は、前月比マイナス16.2%で、年率を計算すると、実にマイナス88%となる。設備投資はお先真っ暗だということである」と述べている(NBonline「猛烈に落ち込む日本経済」2009年1月26日)。

なぜ、こんなことになってしまったのか!? 現在の日本の大不況の根本原因は、国内需要・国民の消費力を極度に押し下げておいて(多国籍大企業のための非正規雇用の拡大、社会保障の切り下げ、農漁業の切捨て、三位一体改革による地方財政の困窮化など)、アメリカのバブル的消費をあてに輸出拡大に依存するという、誤った経済政策にあった。「外需頼み・内需ないがしろ」の基本構造が、日本経済をきわめて脆弱なものとしてしまったのだ。

最近私は、恐慌論の大家である林直道・大阪市立大学名誉教授の講演を聴く機会があった(「世界金融危機と恐慌-いかにこれと闘うか-」)。先生はいつもの名調子で次のよういう。「20世紀に入ってからの恐慌は、世界大戦による中断や、各国の国家独占資本主義的な人為的景気政策の介入などによって恐慌の発現形態が変容している。しかし現代資本主義にとっても恐慌は必然的なものであった。だが恐慌の激しさ、長さなどは人びとの闘いによって左右することが十分可能である。ルールある資本主義の下では恐慌による被害をうんとすくなくすることができる」と。

アメリカ頼み、外需頼みで人員整理や賃下げをしたい放題にさせていたのでは、社会の消費力は細る一方である。市場の回復力、景気の自律回復はいつまでたっても育たず、恐慌をますます激化させるだけである。だからこそ、政府も財界も内需を何とかしなければという
しかし、口で「内需、内需」と言いながら、財界は自分の腹をまったく痛めようとしない。非正規切りに狂奔し、正規労働者の賃金も雇用維持を口実に「ワークシェアリング」などといって引き下げようとしている。これでは、家計の所得は減るばかりである。政府はといえば、こんなときに投資減税や海外子会社からの受取配当の益金不算入、金融・証券優遇税制など相変わらず、大企業・金持ち減税をやろうとしている。国民世論の6~7割が反対している2兆円のバラマキをやって、その穴埋めを3年後の消費税増税でやるという。これほど狂った政策はない。

いまこそ、06年、07年に無茶苦茶溜め込んだ大企業の内部留保を吐き出せるときである。海外投資の機会もなく溜め込んでいる内部留保は使い道がないのである。日本全体で228兆円まで積みあがった内部留保の半分でも吐き出せば、今の大不況も一遍に回復するだろう。大不況からいかに脱却するか。労働戦線での「非正規切りや下請けイジメをやめろ!賃上げしろ!内部留保を吐き出せ!」の運動と政治戦線での「大企業にモノを言われる政党ではなく、モノが言える政党を選択しよう」が決定的であることが、いまや明白ではないか!

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