プロメテウスの政治経済コラム

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革命50周年のキューバ  資本主義以前の「社会主義」  経済の構造改革が不可避

2009-11-06 20:49:51 | 政治経済
今年は、キューバ革命50周年の年である。民族独立民主革命は、当初より社会主義革命を志向したわけではなく、政権獲得直後にはアメリカとの交渉も模索していた。しかし、アメリカ帝国主義の執拗な干渉のなかで、ソ連への接近を鮮明にし、ソ連型「社会主義」革命路線を歩むことを余儀なくされた。ソ連型「社会主義」とは、資本主義以前の「社会主義」であり、資本主義の基本矛盾の結果生まれる本来の社会主義ではなかった。 ソ連型「社会主義」は、ソ連東欧ですでに崩壊し、中国、ベトナムは改革・解放、ドイモイ政策によって、資本主義化を進めている。キューバ、北朝鮮が取り残された形であり、両国にとって、経済の構造改革は緊急の課題である。
【来週から、兵庫AALAメンバーとともに、革命50周年のキューバ訪問の予定です。ブログの更新はしばらく休みます】

 国連総会は10月28日、米国による対キューバ経済封鎖の解除を求める決議案を史上最多となる187カ国の賛成で採択した。同趣旨の決議の採択は1992年以来、18年連続となる。自分の意に沿わない政権を打倒し、そこに傀儡政権を据えるのは、植民地支配が不可能となった戦後の米帝国主義の一貫した政策である。まず、封じ込め政策と反政府勢力支援で体制崩壊を画策し、時間がかかり面倒と思えば、直接軍事介入によって、政権打倒の上、イラクのマリキやアフガンのカルザイのような傀儡政権を据える(直接軍事占領を受けた日本では、自民党傀儡政権が今年の8月まで続いた。民主党政権が傀儡にならず自立できるかは、アメリカの圧力に対抗する国民の世論がどれだけ強いかによる)。

 キューバ革命は、その当初より社会主義革命をめざしたわけではなかった。しかし、革命政権は外国資本・アメリカ合衆国の横暴な支配に手をつけざるを得ず、アメリカの意に沿わない政権となるのは必然であった
アイゼンハワー政権はキューバの最大の産業である砂糖の輸入停止措置を取り、キューバに対して経済制裁に踏み切り、1961年1月には対キューバ国交断絶に至った(制裁は国連総会からの非難と再三の解除要求決議にも拘らず、現在に至っている)。61年、ケネディ大統領は、国籍を隠したアメリカ軍のA-26爆撃機によりキューバ軍基地を空襲し、続いてキューバのコチーノス湾(アメリカ側の呼称はピッグズ湾)に米軍の訓練を受けた亡命キューバ人部隊を上陸させ、直接軍事介入を開始した。ピッグス湾事件は失敗に終わったが、革命政権は、5月に社会主義宣言を発し、キューバ革命を社会主義革命として位置づけた。

 こうして革命政権は、米国の介入に対抗するために、総動員体制(戦時共産主義体制)をとらざるを得なくなり、その後、何度か経済改革を試みるが、基本的にソ連型の中央指令経済体制を脱しきれず、いまも「不足の経済」に悩まされている。
今年の1月1日、 AFPはサンティアゴデクーバ(Santiago de Cuba)に住む、キューバ革命に自らも加わったと言うドゥルセ・マリア・アランス(Dulce Maria Arranz)さん(85)へのインタビュー記事を伝えている。
アランスさんは、カストロ前議長らを「山奥から出てきた少年たち」と呼び、革命勢力のために武器や医療品をどのように天井やトイレのタンクに隠したかを誇らしげに語った。「共産主義は好きではないが米国も気に入らない。わたしたちには、まだまだやるべきことがある」。アランスさんによると、キューバ人はバティスタ政権下での圧政や、革命後のキューバの教育や医療がどれほど進歩したかということを忘れ始めているという。「生活が厳しい人はたくさんいるが、飢えているわけではない。改革とはぜいたくをすることではない」と、アランスさんは米マイアミに住むおいから贈られた薄型テレビの前で話した(【2009年1月1日 AFP】)。

 資本主義以前の「社会主義」は、資本主義の基本矛盾の結果生まれる本来の社会主義ではない。マルクスは、社会の発展・変革を、生産力と生産関係との矛盾から説明し、このことを「生産力と生産関係との弁証法」と呼んでいる。資本主義的生産における生産関係の最大の特質は、ヨリ大きな剰余価値の生産を、生産の動機および目的としているということ、私たちがよく使う「利潤第一主義」ということである。この利潤第一主義は、ある段階までは、生産力の発展をときには飛躍的な形で推進する。本来の社会主義は、その利潤第一主義による生産力の発展が、社会的な害悪や災害(繰り返す過剰生産恐慌、貧富の格差の拡大、金融投機、地球環境の悪化など)となって現れ、多くの人びとが、資本主義的生産様式は人びとの生活にとって、桎梏(足かせ)だと自覚した段階ではじめて問題となるものだ

 キューバは確かに「利潤第一主義」とは両立しない、医療や教育の分野では目覚しい成果を成し遂げた。しかし、資本主義化によって、生産力を発展させなければならない分野がまだまだたくさんある。米国からの自立を目指す中南米諸国と緊密な連携を図りながら、経済の資本主義的構造改革を進めることが現在の緊急の課題なのだ。

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