総選挙で民主党が地滑り的勝利を収めたのは、自公政権が進めてきた新自由主義「構造改革」路線の矛盾が爆発し、構造改革の政治をやめてもらいたいという国民の声が自公政権を押し流したためであった。民主党は構造改革を競い合う保守政党の立場から逸脱し、「不純」保守政党になることによって、国民の支持を受けた。構造改革の矛盾が爆発して、自民党政権が倒れたときに改革を円滑に継続するために、民主党を育成してきた財界、アメリカ政府は、一度民主党に政権を渡すことによって実践で政権党としての自覚を促し民主党を第二保守政党の枠内に引き戻し、政権交代体制を再構築するほかなくなった。おだて、なだめすかし時には脅し、恫喝を加える戦略である。このような支配階級の手の平の中なのだが、来年の参院選挙のことを考えると無碍に国民の期待を裏切ることもできず、フラフラしているのが現在の鳩山政権である。国民の期待をつなぎとめるために、マスコミを動員して連日騒ぎ立てているのが、官僚「いじめ」を演出する橋下知事流「事業仕分け」である。現在、民主党政権がおこなっている「事業仕分け」は、もともと小泉内閣の時代に「行政改革推進法」(2006年)によって規定されたものであり、形を変えた「構造改革」路線の継続にほかならない。
民主党の「事業仕分け」が、形を変えた「構造改革」路線の継続であることは、各省庁の官僚「いじめ」を行う「仕分け人」のメンバーを見れば明らかである。総勢56人の民間の「仕分け人」には、元政府税調会長の石弘光氏や、経済財政諮問会議の審議に携わった川本裕子氏など「構造改革」路線を推進してきた人物がずらりとならぶ。明らかに、「構造改革」路線からの決別ではなく、「構造改革」路線の継続である。民主党が支配階級の手の平のなかで踊る存在であることを端的に示すものだ。
滋賀県高島市で「事業仕分け」を実施し、効率一辺倒の行革手法を住民から批判され、今年1月の市長選で落選した海東英知前高島市長や橋下大阪知事特別顧問の藤原和博氏が「仕分け人」に名を連ねているのをみるともはやブラックユーモアというほかない。
「しんぶん赤旗」2009年11月20日より
「事業仕分け」の最大の問題は、政権としての統一した思想、どの行政分野に予算を重点配分するかといった予算編成方針が欠如する中で、事業仕分けという予算を削る作業ばかりが進んでいるということである。国民目線で、大企業奉仕あるいは軍事予算にメスを入れて、暮らしや福祉、教育を拡充するという国民が政権交代に一番期待をかけた思いはまったく無視され、時間を十分にかけず、財務省官僚が選んだ対象事業をただ「効率性」「採算性」「経営努力」「民業圧迫」などと叫ぶ以外に能のない「仕分け人」が各省庁の官僚「いじめ」のパフォーマンスを競い合う。マスコミは、事業仕分けのプロセスを公開することで、自民党政権時代にはずっと闇の中にあった予算編成プロセスの一部を、はじめて白日の下に晒すことが出来たなどと持て囃す。しかし、約3千ある国の事業のうちから447事業が対象に選ばれたのは、財務省官僚のお膳立てにすぎない。したがって、生活関連を槍玉にあげる一方、東京外郭環状道路やへり空母、ミサイル防衛など本当の無駄は議論の対象外である。メディアや国民が官僚を血祭りに上げて束の間の喜びにひたり、芸術・文化や科学研究予算をばっさり切るところまで、橋下大阪知事そっくりなのだ。
「仕分け人」から吹っかけられた議論にきっぱり反論するでもなく、これに媚びるような答えをしている官僚の姿をみると誰もが小泉「構造改革」の継続を喜んでいるようだ。
国民は構造改革の政治をやめてもらいたいと思い政権交代を実現したはずだが、支配階級の巻き戻しが、構造改革でも、米軍再編でもすでに手ごわく始まっていることを看過してはならない。
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