プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

世界同時株安   世界金融市場のもろさと波及の構図を示す

2007-03-06 19:13:43 | 政治経済
2月27日の中国・上海市場での株価急落を引き金に、同日のアジア、欧州、米国の株式市場でも相次いで株価が急落した。日本経済と緊密な関係にある米国市場の大幅下落で、翌28日の日本市場にも急落が波及した。一連の株安連鎖では、中国市場が端緒となったことと、米国市場の大幅下落が注目される。中国株価市場の規模は東京市場の4分の1程度にまでなったとはいえ、海外投資家の投資対象は原則としてB株だけで、その影響は小さいと考えていたが、中国の株価動向が、資本主義市場へも大きな影響を与えたことは、驚きである。もっとも実体経済では、中国に進出した外国企業はその製品を米国、日本、欧州に輸出しており、中国経済の動向が世界に波及する構図ができているのだ。

世界的な金融緩和、過剰流動性のもとで、史上最高値をつけたニューヨークや上海、世界の株価の上昇は投機的取引で支えられているわけだから、なんらかのきっかけで暴落しても不思議ではない。金・ドル交換停止後、累増するアメリカの貿易収支・経常収支赤字によってタレ流された余剰資金は米国に還流し、米国から新興国などに投資されている。資本主義の経済と金融の安定(とりわけ米国)があってこそ、この資金の流れが保証されるわけだが、米国経済への信頼が揺らぐたびにその保証が危うくなり、世界経済と金融市場が連鎖的に混乱することになる。今回の世界同時株安はこの世界金融市場のもろさや不安定さを改めてしめした(今宮謙二・中央大学名誉教授「しんぶん赤旗」3月1日)。

中国経済は過熱気味だが、中国経済そのものが悪くなっているわけではない。問題は、世界経済のかなめに位置する米国経済の先行きである。米国経済の先行き不透明感が高まったことから市場では株安と同時に円高ドル安も進行した。
米国経済に景気後退の危惧が強まっている。
2000年にハイテク株のバブル崩壊で急激な株安と不景気となったアメリカは、01年に低金利政策が導入され、アフガン、イラク戦争軍需と低金利をテコにして成長してきた。米国民は、低金利の住宅ローンで家を買い、住宅価格の値上がりで住宅を担保にした借り入れがおこなわれ、自動車や家具を買ったり、株式投資をしたりした。株価は上がり、米経済は長期にわたって成長した。これがドルの安定と帝国循環とよばれる米国への資金還流を保証した。
しかし、04年からの利上げによって、住宅ローンのかなりの部分を占める「金利変動型ローン」を組んでいた人々のローンの焦げ付きなど、住宅着工は減り、自動車など耐久消費財の消費も急減しはじめた。住宅バブルの崩壊で、米経済は不況に陥りつつある。

その結果として、ドル相場への不安感が広まると、一時的とはいえ投機的取引の縮小を引き起こす。これに伴って、低金利の円で資金を調達して外貨や外国株に投資する「円キャリー取引」が縮小し、円の買い戻しが進んで最近の急激な円高に拍車がかかったといわれている。
今のところ、世界各国の景気が直ちに悪化するという事態は考えにくく、今回の同時株安は世界的に市場の過熱感が指摘され、それを冷ます調整時機を探していたところでもあったので、それほど深刻でないのかもしれない。
しかし、国民の消費に基盤をおかない、海外市場頼みの多国籍大企業本位の日本経済のファンダメンタルズそのものは、もともと為替、株価などの「変動性」にきわめて脆弱である。日本経済が世界金融市場の動揺に揺さぶられるのを避けるには、国内の経済の足腰を強める国民本位の経済政策に転換することが不可欠の課題なのだ。

最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
消費者金融 (消費者金融)
2007-03-14 04:11:08
消費者金融情報を掲載しております。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。