プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

深刻な医師不足  超過密労働 医療事故への影響が心配

2007-03-07 18:32:30 | 政治経済
政府は、「医師が増えれば医療費が膨張する」と宣伝し、「医学部定員の削減に取り組む」という閣議決定(1997年)までして、医師の養成を抑制してきた。その結果、日本の臨床医数は人口十万人あたりで200人(アメリカ240人、ドイツ340人、イタリア420人)、OECD(経済協力開発機構)加盟30国中27位と立ち遅れ、現在の深刻な医師不足が引き起こされた。OECD加盟国の平均(人口十万人あたり310人)を上回る都道府県はひとつもない。政府は「地域別・診療科別の偏在」というが、日本に「医師が余っている」地域などどこにもないのだ(「深刻な医師不足を打開し、『医療崩壊』から地域をまもる日本共産党の提案」「しんぶん赤旗」2007年2月8日)。

最近、産婦人科や小児科医の医師不足が原因の死亡事故が続いていたが、奈良県のケースは痛ましい。去年、奈良県で意識不明に陥った妊婦さんが、十九もの病院に受け入れを断られた末に、亡くなった。奈良県内では67%の市町村でお産ができる病院がないという。
驚くべきことに、日本の幼児の死亡率は先進国平均より三割高くて最悪である。厚生労働省の担当者も小児救急体制が不十分なことをその原因にあげている。産科・小児科不足は、もはや一刻も放置できない。公的病院の産科・小児科切り捨てをやめ、この間、産科・小児科をなくしてきた病院は早期に復活するべきである。民間病院でも、産科や小児科の休廃止が続いている。必要な人件費などを確保するためにも、産科・小児科の診療報酬を緊急に引き上げるなどの対策が喫緊の課題である(「「しんぶん赤旗」同上」)。

医師の絶対的不足は、病院で働く勤務医に過酷な労働環境をもたらし、過密労働に耐えかねた医師の退職が、さらなる「医師不足」を招くという悪循環が拡大している。最近、日本医労連がまとめた実態調査の中間報告によれば、勤務医の九割以上が宿直勤務を伴う連続32時間の勤務(通常の8時間勤務に続いて16時間の宿直勤務を経て、さらに通常の8時間勤務に入る)を月3回こなし、三割近くは月に一度も休日を取れない過酷な勤務実態にあることがわかった。週の労働時間は「65時間以上」が32・7%と三分の一にのぼり、休日を入れずに続けて勤務する日数の平均は19・5日で「睡眠時間も取れず、休みも取れない勤務医の超長時間労働が常態化している」のだ。月の時間外労働の平均は63・3時間で、三割超にあたる31・2%が「過労死ラインの80時間以上」。まさに医師自体が過労死す寸前の状態にあるのだ(「しんぶん赤旗」2007年2月20日)。
こうした長時間・過密労働を苦にした勤務医のリタイア、出産・育児などと両立ができないための女性医師の退職がつづいている。このままでは、医療を受ける側からみても大変不安で危険である。医師数の抜本的な増員とともに、看護師・スタッフの増員、病棟薬剤師やケースワーカーの配置基準の確立と財政措置など、勤務医の過重負担を軽減する支援策が緊急に求められる。女性医師の産休中の身分保障や妊娠中の当直免除、育児休業をとった医師の代替要員・現場復帰の保障など、家庭生活との両立支援を国策としなければならない(「しんぶん赤旗」2月8日)。

深刻な医師不足、地域医療の危機は、政府・財界がつづけてきた「医療費削減」路線の当然の「帰結」である。「小さな政府」の名のもとに国民の命と健康への責任を放棄し、社会保障を破壊する政治は、優先順位を明らかに誤っている。金がないのではない。ないのは「福祉のこころ」である。

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