プロメテウスの政治経済コラム

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ムダな高速道路すべて建設―公団民営化は何のため

2006-02-10 13:16:49 | 政治経済
国土交通相の諮問機関である国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)が七日、政府の高速道路整備計画の全線建設を決めました。道路公団民営化にあたって、「無駄な道路はつくらない」と胸を張った小泉首相の言明は完全に空証文。ここでも小泉「改革」の粉飾ぶりが鮮明です。
昨年10月の道路関係4公団の民営化後初めて開かれた国幹会議は、国の整備計画9342キロのうち、工事未着手の19路線・49区間(1276キロ)について整備方法を決めました。旧道路公団から衣替えした東日本、中日本、西日本の三高速道路会社が建設する有料高速が42区間(1153キロ)、国と地方が税金で造り通行無料になる「新直轄方式」が7区間(123キロ)。民営化は無駄な道路建設の中止が目標でしたが、結局は全計画路線が造られることになりました
とくに無駄遣いの批判が強い第二名神自動車道などごく一部の工事については、着工時期の判断を先送りしました。しかし、北側一雄国交相が「整備区間から落としたわけでない」とのべた通り、全線建設は不動の方針で、「一度決めた高速道路計画は止まらない」という状況は不変です。
道路公団をめぐる問題で、大きく問われた問題は二つありました。
▽無駄と浪費を重ねて積み上げた道路公団の四十兆円にのぼる借金をどうするのか▽採算性も必要性も無視した高速道路建設計画をどう止めるのか――小泉首相は、道路公団の民営化さえすれば、すべての問題が解決すると言い張り、国会で「無駄な道路はつくらない」と宣言してみせました。公団民営化によって、道路建設を民間会社がおこなう仕組みにすることで、民間のコスト意識が働き、おのずと不採算区間の工事は見送られる――。
ところが、七日の国幹会議を前に、国土交通省が各高速道路会社への工事の割り振り案をつくって根回していました。もともと、民営化会社が建設を拒否しても、国交相が命じることができる仕組みになっており、国交省主導で、あくまで政府の計画通り無駄な道路建設を続けることが決められたのです。
道路公団の四十兆円にのぼる借金については、小泉首相は、道路公団民営化にあたって、「四十五年間かけて返済する」と公約しました。それは、道路建設に税金を三兆円投入し、金利も4%という水準が続くことを前提にした、ガラス細工のような計画です。さらに返済に回す通行料収入が計画通り伸びないと完済目標の達成は極めて危ういといわざるを得ません。国民が巨額の借金のツケをかぶることになります。
小泉「改革」は、90年代以降の日本大企業の多国籍化にともない、新自由主義的改革と軍事大国主義的改革を推進する任務を担っています。「多国籍」派は先進国最悪の財政赤字を前にして「地元への利権バラマキ」型の旧い自民党の解体を小泉首相に託しました。公共工事費の一定の削減も辞さないという立場です。しかし、いまなお、日本では「ゼネコン国家」派が根強く生きています。その根源には日米構造協議による13年間で630兆円の「公共投資基本計画」の押し付けがあることを忘れてはなりません


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