プロメテウスの政治経済コラム

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「近未来通信」の経営混乱  規制緩和で通信業界は何でもあり

2006-11-26 18:47:41 | 政治経済
総務省の監督体制が参入前の業者チェックから、「事後チェック体制」へと変わり、電気通信事業者数は、216社(85年)から13,622社(2005年)にまで増えた(「しんぶん赤旗」2006年9月24日)。IP電話のすすめやマイラインの獲得競争、ビジネスホンの購入やリース契約のすすめなど強引で巧妙な勧誘が後を絶たない。「近未来通信」社は、「電話の利用料から配当する」として投資家から資金を集めて急成長した。「中継局オーナー」になるための出資金は最低でも一千百万円。電話事業収入をもとに、多額の配当金を約束し勧誘していたが、今月以降は支払いが滞っている。実態は、配当金のほとんどが、電話事業収入ではなく、投資家から集めた資金でまかなうタコ足“自転車操業”状態だといわれている。現在、社長や幹部は姿を見せず、本社は事実上の閉鎖状態となっている(「しんぶん赤旗」2006年11月26日)。

似たような手口で、投資家から出資を募っていたのが昨年10月に倒産した「平成電電」である。個人投資家1万9千人から490億円を集めたまま倒産。民事再生法を申請する三日前まで出資者を募集。「計画倒産ではないか」と非難が殺到した。
東京の弁護士会が11月21日に行った「金融商品被害110番」には、「近未来通信」に関して177件もの相談が寄せられた。五千万円以上の投資をしたという相談も7件あった。国民生活センターには24日現在で226件の相談があり、投資は、全国で三千万人、四百億円にのぼるという指摘もある(「しんぶん赤旗」同上)。

当然に国の監督責任が問われるわけだが、規制緩和後の通信事業者の監督官庁である総務省は、電気通信事業法に基づいて事業内容の点検には乗り出したものの、「投資者保護にまではうちも手を出せない」という態度である。総務省の担当者は「はっきりとは分かりませんが、扱っている投資内容が金融商品であれば金融庁、マルチ商法やねずみ講になるならば、経済産業省の管轄です」と言っている。金融庁は「現時点で金融商品と特定することは難しい」と、これも及び腰。経済産業省は、「まことに恥ずかしながら、契約の中身、事実関係がよく分からない」…。さながら監督官庁“不在”の様相である(「しんぶん赤旗」同上)。

近未来通信社は「総務省 一般第二種電気通信事業者」であるが、これは総務省に届け出れば誰でも取得できるもので、審査や調査はない。
資本主義のジャングルのような危険な市場取引に慣れない日本人には宣伝パンフレットに「総務省 一般第二種電気通信事業者」とあれば、なにか国のお墨付きをもらった業者だと思われ、加えて、大手新聞やテレビCMに、有名俳優やスポーツ選手が出ていると信用できるとなってしまうようだ。

「自由な参入と競争が市場を活性化する」ということしか頭にない「構造改革」政府のもとで日本の資本主義社会はますます道徳や規範意識を失いつつある。一方で新自由主義的改革を推し進めながら、教育基本法改定で道徳や規範意識を取り戻そうとする――やってることがまったくチグハグである。構造改革」政府を信用したらいけないし、一日も早くまともな政府を私たちの手でつくることである。

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