プロメテウスの政治経済コラム

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菅首相、比例削減 年内合意を指示   何でもできる一党独裁の狙い

2010-07-31 21:48:32 | 政治経済

菅直人首相は30日、首相官邸で記者会見し、衆院比例80議席、参院40議席を削減する「国会議員定数削減」案を8月中に民主党内でとりまとめ、12月までに与野党で合意するよう、民主の枝野幸男幹事長、輿石東参院議員会長に指示したことを明らかにした(「しんぶん赤旗」2010年7月31日)。菅「反動」政権の狙いは、財界の年来の要求である消費税増税(セットで法人税の引き下げ)と米国の要求である自衛隊の海外派兵を国会の反対派を締め出すことによって確実に実現することである。
『週刊金曜日』(2010・7・30 809号)が指摘するように、参院選の結果は、どちらも“1番”になれない民主と自民という二大政党が手を結べば、“消費税10%”でも“辺野古の米軍基地建設”でも何でもできる可能性を産み落とした。さらに、民意を切り捨てる衆院比例定数80の削減をやれば、“消費税10%”でも“辺野古の米軍基地建設”でもまさしく何でも支配層の思いのままである。

 民主党の衆院比例80削減が強行されたら国会はどうなるか
2009年総選挙結果を当てはめると、民主党と自民党の「二大政党」を中心とした勢力が実に95%前後の国会議席を独占する。42%の得票であった民主党は、衆院議席の68%、3分の2以上の議席を得ることになり、参院で法案が否決されても民主党単独で再議決を強行できることになる。
月の参議院選挙では、民主党、自民党を含め6つの党が何らかの形で、議員定数削減を掲げた。支配層の意向を受けて、選挙制度を軸にした合従連衡が始まる恐れが大いにある

周知のとおり、小沢―鳩山民主党は、国民の期待を背に受けて、普天間の国外・県外移設や福祉マニフェストの実現を掲げて部分的には保守政治(財界・米国の意向を最優先する政治)の枠組みから逸脱を繰り返した。そのために、「政治とカネ」のスキャンダルを暴かれ、迷走の末に辞任に追い込まれた。菅・民主党は、保守支配層の苛立ちと不安を鎮め、民主党政権を自公政権が追及した保守政治の路線に引き戻す役割を担って登場した。菅首相は自民党が言い出した「消費税10%」に相乗りし、辺野古の基地建設も自公政権時代に戻った。菅・民主党は参院選で敗北したが、復活した「反動」政治を再び小沢―鳩山のような保守逸脱路線に軌道修正するつもりはない。
記者会見で菅首相は「私の唐突と受け止められた消費税発言が大きく影響した」と“反省”を口にはしたものの、「財政再建の課題はどなたが総理大臣になろうと、どの党が政権を担当しようと避けて通れない。これからも財政再建に取り組んでいきたい」と述べ、引き続き消費税増税論議を進める立場を繰り返した。


 1994年、小選挙区制が導入されて以来、政党は離合集散を繰り返してきたが、財界は一貫して、自らがコントロールしやすい行政の機構改革を求め続けてきた。「首相のリーダーシップの確立と政策本位の政治の実現」(2002年10月経済同友会提言)がそのスローガンである。「構造改革を進めるためには、永続的な改革を実現できる政治の仕組みを構築することが不可欠である。まさに、『政治改革なくして構造改革なし』といっても過言ではない」という
今回の菅首相の比例議席削減も併走する名古屋・河村市長、大阪・橋下知事らの「地方議会改革」も議会制民主主義と地方自治からなる日本の政治機構を、自らがコントロールしやすい機構に再編しようとする財界の意向に沿ったものだ。
国会を独立した審議機関、行政監視機関とみなさず、単に内閣を選ぶための中間機関とし、首長と議会の二元代表制を議会の権限を弱め首長の権限を強めて、単純多数決で行政をコントロールしようとするものなのだ

 国民は、正当に選挙された議会の代表者を通じて政治に参加する。国民の政治参加は単なる多数派を選んで、行政の代表を選出するだけではない。自分が支持する国会議員を通じて、様々な意見や要望を国会審議に反映させ、国会は全体の関係性を視野に入れ、共有し、調整して、幅広い合意を形成する方向を目指すのが本来の姿である。多数決民主主義ではなく、参加・合意形成型民主主義こそより進んだ民主主義である。
そのためには、国会は多様な国民意思を代表するように構成されなければならない。したがって、選挙制度は国民意思の縮図を国会につくりだすものでなければならない。比例代表制こそ最適なのだ。有権者の意思の、多い場合には7~8割もが「死票」として切り捨てられる小選挙区制は、国民の主権行使の基本的権利を侵害する最悪の制度だ

 菅首相らは「国民に厳しいこと(増税)をお願いする前に、国会議員自ら身を削る」などと、比例定数削減を合理化している。しかし、これほど人をバカにした話はない。国会に民意を届けるのが国会議員の仕事である。その議員がわが身を無駄とみなすとはどういうことか。自ら、代表のつとめを果たせない無駄な議員の集まりですと自認する政党に投票する国民は、アホでなければ、よほどのお人好しだ
比例定数削減で「削られる」のは、国民の民意である。経費がかかり過ぎというなら、議員歳費を削減すればよい。「政治家が身を切る」というなら、年間320億円もの政党助成金こそ撤廃すべきだ。320億円を削れば、国会議員450人分もの経費を削減したことになる。狙いは経費削減ではないのだ。
支配階層の意を受けた菅政権が狙うのは、消費税増税、法人税引き下げであり、辺野古基地建設の強行であり、改憲の露払いである


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