プロメテウスの政治経済コラム

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臨時国会開始  早くも心配された「大連立」の兆し 国民は階級社会の政治闘争に習熟しなければ・・

2010-08-03 20:54:19 | 政治経済
第175臨時国会が30日召集された。参議院選挙による国民の選択によって、衆議院と参議院で与野党の力関係が変わり、いわゆる「ねじれ国会」となった。民主党は参院での国会運営の主導権を失ったが、野党第一党は自民党である。菅・民主党は小沢・鳩山民主党に対する支配階級(財界・アメリカ)の巻き返し、保守「回帰」要求を受けて成立した政権である。国民はその胡散臭さを見抜き、参院選で菅・民主党に厳しい評価を与えた。しかし、階級社会の政治闘争に習熟していない国民は、政治を支配階級の思いのままにはさせない対抗勢力の国会の代表である、共産党・社民党を敗北させてしまった。菅・民主党の自民党化で、事実上の「大連立」を実現すれば、政治は支配階級の思いのままである。2日の衆院予算委員会で始まった基本的質疑などを見ていると早くも心配された「大連立」の兆しが現れた。消費税増税(法人税引き下げ)も、普天間「移設」も、選挙制度の改悪も、自衛隊の海外派兵も何でもできる。国民が、階級社会の政治闘争に習熟しなければ長い冬の時期が続くことになるかもしれない。

菅直人首相は2日、秋の臨時国会に自民党が再提出する、消費税増税の方針を明記した「財政健全化責任法案」について、「真摯(しんし)に受け止めて、私たちとしても前向きに検討するように指示したい」と答弁。私は、参院選で示された民意は消費税増税反対だったと思うのだが、民意に反して消費税増税の「大連立」の危険性が早くも浮き彫りになった。

菅・民主党は、小沢・鳩山民主党とは明らかに違う。小沢・鳩山民主党は、動揺の末に自壊してしまったが、自公政権の構造改革と日米同盟重視政治で無茶苦茶になった日本社会の現実に対し、国民の期待に応えようとする部分があった。これに対し、ズル菅は、支配階級の要求優先政治に戻ることで、自己の政権の安定化を図った。選挙に負けても自らが自民党化すれば、衆院でも参院でも安定的多数である。政権維持のためだったら、谷垣禎一総裁に頭を下げることぐらい何ともない。なんといっても、支配階級の全面的な支持が期待できるからである。7月29日の民主党両院議員総会で、菅首相は、吹き荒れた参院選の大敗の責任論に耐えながら、ねじれ国会のなかで「死力をつくしていきたい」と続投の決意を表明、「私に対する色んな不満があると思うが、この党が長く責任ある政権党として継続できるために私なりに考えた結論だ」と意味深長な発言をしている。青臭い鳩山政権ではなく、ズル菅らしく自民党化すれば、長期政権が可能だというのだ。

自民党の谷垣総裁と菅首相の消費税を巡るやり取りは、まさに二大政党の掛け合いであった。
質問で谷垣氏は、消費税増税をめぐる菅首相の選挙中の発言が国民の批判を浴びたことについて、「これで懲りてしまい、(消費税増税が)取り上げられなくなったら不幸だ」などと主張。首相も、「財政再建の問題については一歩もひくつもりはない。ぜひ建設的な議論をお願いしたい」と述べ、「財政再建」を口実に消費税増税の与野党協議を呼びかけ。これを受けて、谷垣氏は、2011年度までの消費税増税法案の成立を規定した2009年度税制改正法付則104条を取り上げ、「スケジュールの変更は認められない」と強調。首相は「参院選の結果を踏まえ、(11年度の)期限は改めることにした」と述べながらも、一方で「104条の問題は政府の義務でもある。この通りに進めるとすれば、どういうやり方があるのか、なんらかの対応をしなければならない」などと応答。谷垣氏は、自民党の「財政健全化責任法案」には、与野党協議会の設置も明記されており、「わが党の法案を審議していただければ当然そういう(協議の)場が成立する」と主張するという具合だった(「しんぶん赤旗」2010年8月3日)。

菅首相は2日の衆院予算委員会で、これは民主党・伴野豊議員との掛け合いであるが、国会議員定数の削減について、「年内に実行できるテンポで議論を進めてほしい」と述べ、年内に与野党の「合意」を目指すとしていた発言を、「実行」へとさらに踏み込んだ。民主党は参院選マニフェストで、衆院比例定数80削減と参院定数40程度削減を明記。衆院の比例定数を削減すれば、共産党は9→4 社民党4→ゼロ(09年総選挙結果で試算)となる。財界やアメリカにモノを申す共産党の力を削ぎ、モノ申すことはできなくても、長年労働組合とともに歩んできた社民党が壊滅すれば、まさに支配階級は左団扇である。
封建時代までは、経済的に支配する階級の指導層が直接に国政を握っていった。しかし、資本主義時代に入り、代議制ができ、はじめは、富裕層だけだった選挙権が成年男女すべてに普通選挙権として与えられるようになると支配階級は忙しくなった。自分たちの意思を政府や官吏を通じて確実に通す特別の努力、工夫が必要となった。さまざまな形での政党・政府の買収、官吏の買収、御用学者、御用マスコミ、地域有力者など金力を最大限に発揮してあらゆるところに支配網を張り巡らした。こうして、自民党、民主党という二大保守政党を育成してきた。資本主義の経済危機が政治危機となる前に、選挙制度に民意が反映されにくいようにすれば、しばらくは左団扇である。支配階級の思惑をよく理解する菅首相は、「政治家が身を切る」などという大衆受けする言辞を弄しながら民意切捨てに精を出している。国民が、階級社会の政治闘争に習熟しなければ長い冬の時期が続くことになるかもしれないのだ。


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