プロメテウスの政治経済コラム

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日韓レーダー照射論争 米国の仲裁不在で泥沼化 韓国はもう昔の韓国ではない

2019-01-08 18:22:36 | 政治経済

日韓関係は、それ自体だけでなく日米関係、韓米関係、南北関係と密接な関係にある。「米韓日VS中朝ロ」の構図で維持されてきた冷戦構造が崩壊して久しい。韓国の外交官出身のある元高官は「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を締結して『軍事協力』を約束した日韓両国が、昔なら問題にもならないはずのことで消耗戦のような論争にはまりこんでいる」と語った。昔なら日韓関係になにか外交的な悪材料が出現すると米国が直接乗り出し、仲裁役を果たした。オバマ政権は2013年末、安倍首相が靖国神社を参拝した直後、「失望した」という異例の論評を出したり、先の「日韓慰安婦合意」も米国政府および議会が安倍首相に圧力をかけて作り出した、事実上の米日韓の合意だった。
冷戦構造のもとで、米日韓の三角安全保障協力態勢は、米国のアジア戦略の当然の前提だった。しかし、米政権の朝鮮半島戦略は、トランプ政権発足後、少し色合いが変わった。これまでの米政権は、日韓関係を米国の重要な戦略要素と考えていたのに対し、トランプ政権は、日米、韓米関係で分けて考えているようだ(http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/01/05/2019010580013.html)。

米国が朝鮮半島で戦争を仕掛ける場合、米日韓三国同盟の対応態勢を速やかに作動させるのが必須条件なのに、トランプ政権は、日韓レーダー照射論争では、仲裁する気がなく、好きに喧嘩しておれと言うように見える。南北関係が融和に向かうなかで、トランプ大統領は当面、朝鮮半島で戦争を起こす気はなさそうだ。

最近の日韓関係は、50数年前の日韓基本条約体制が足下から揺れている。日韓間の1965年体制を可能にした環境と条件は、冷静構造の崩壊とともに大きく変わった。冷戦論理により抑えられてきた被害者の尊厳・人権意識が高まり、過去の日帝による植民地暴力は、普遍的人権の脈絡で国際法的にも再び照明を当てられることとなった。
これまで日韓両国を緊密に縛ってきた経済・安保協力は、韓国の経済成長と南北関係改善などにより、その重要性が大幅に低下した。古い枠組みが解体過程に入っているにもかかわらず、安倍首相は、防衛大綱で明らかにした大軍拡路線計画の名分を得るため、また、下がりつつある支持率を浮揚するためにこれまでの「北朝鮮叩き」から「韓国叩き」にシフトしているようだ。


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