プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

日本航空で安全無視の人減らし  稲盛「JALグループ企業理念」の危うさ  小倉寛太郎さんは何と言うだろうか

2011-02-18 21:23:04 | 政治経済

日本共産党の穀田恵二議員が17日の衆院予算委員会で「再建」を目指す日本航空で異常な人減らしによって安全が脅かされている実態を示し、徹底調査と不当解雇の撤回を求めた【穀田議員の京都弁の迫力に押された大畠章宏国土交通相は「明日、日航社長を呼び、航空行政の安全について確認したい」「立ち入り検査をしたい」と述べた】。穀田氏は先ず、日航の新たな「企業理念」から「安全」の文字が消えたことを取り上げた。そして、これまで掲げていた「安全第一」は、1985年の御巣鷹山日航機墜落事故の教訓である「絶対安全」から導き出されたものであることを強調した(「しんぶん赤旗」2011218日)。

私は穀田質問で、昔、小倉寛太郎さんが、御巣鷹山の事故後に会長に就任した伊藤淳二さん(『沈まぬ太陽』の国見のモデル)のことを褒めていたことを思い出した会社更生をまかされた稲盛和夫さんと伊藤淳二さんとでは、役割が違うのかも知れないが、航空会社である限り、「安全第一」がすべてに優先でなければ困る。稲盛さんが今年一月に発表した「JALグループ企業理念」は、どこか的外れで危険なような気がする。それは穀田さんが、縷々紹介した現場労働者の実態によって端的に示されている。

 

1985812日の大惨事を受けて、同年年1218日、「日本航空の 連続事故の経営に対する徹底解明と抜本的改革」 を旗印に、伊藤 淳二氏(当時 鐘紡会長) が政府からの強い要請で日本航空の副会長に就任した(後に会長)。伊藤 氏は、副会長就任に当たって、<今ひとたび、世界一「絶対安全」と「卓越したサービス」を誇った「鶴のマークの神話」を復活しよう!>と呼びかけた。全社員にあてた通知は、「航空機の安全運航が原点」とのべ、第一に「絶対安全の確立」という方針を掲げ、「520人の犠牲者の霊に応えるもっとも必要なことは『日本航空絶対安全の確立』にある」と訴えた。ところが、その伊藤氏は、利権を守ろうとする社内外の圧力により、469 の期間でその座を追われることになる。

 

小倉寛太郎さんは、伊藤氏のことを次のように語っている(小倉寛太郎『自然に生きて』新日本出版社2002)。

現在の日航の経営問題を考えるとき、とても大事な話だと思うので、少し長くなるが紹介しておきたい。

<わたくし個人としては、伊藤淳二さんは、日本では非常にめずらしい立派な経営者だというふうに思っております。非常にフェアな人で、「この一つの企業のなかで、所属組合の違いによってこれだけ差があった。差別があるということは、わたくしには理解できない」ということで、その差別を無くそうとした。>

 

小倉さんは、伊藤氏が高齢にもかかわらず、機長や運航乗務員の苦労を知りたいとヨーロッパ出張のとき、12時間操縦席に座りっぱなしであったエピソードを紹介したあと、伊藤氏が機付き整備士の制度を導入したことについて、<この飛行機は誰が担当だというふうに決めれば、おのずから飛行機の機材にたいする愛情も湧く、そうすると整備も行き届くだろうというアイデアで、長年、航空運輸業に携わっているものでもなかなか気づかない、たとえ気がついてもカネがかかるからと採用しない方式で、これを伊藤さんが導入されたというのはたいへんなことだと思います。>と述懐している。<その伊藤さんが入った日本航空とはどういうところだったか。日本航空というのは、国会で日本航空のPTAができると言われるくらい国会議員の子弟、甥、姪がぞろぞろ入ってるんですよ。それぞれがそれぞれの利権を持って、表からわからない地下茎のような形ですね。もしくは表から見るとわからない地雷原みたいなものがあります。それでそういう腐敗している部分、利権の巣、それを暴き出そうとしたら、仕返しが当然来ますね。こんなに地雷原が多いとは思わないで、伊藤さんは地雷原に足を踏み入れた。

いずれにしても、伊藤さんはお去りになったけれども、非常におおきな影響を残しておられます。いま言った機付き整備士などです。しかし、地雷原に引っかかった。>

穀田さんは、更生計画で旅客機MD90を退役させる計画を決定し、機体を整備してきた子会社・日東航空整備が解散を余儀なくされ、3月末で約150人の職員全員が解雇される事態となっていることを指摘。機付き整備士どころか、仕事を与えず会社を「切り」、揚げ句の果てに、整備工のいない飛行機を飛ばそうとする。こんなことでは安全が保てない、と厳しく追及した。

稲盛さんが今年一月に発表した「JALグループ企業理念」は、「一、お客さまに最高のサービスを提供します。 一、企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します。」というものだ。企業価値とは、株式の時価総額のこと。
「これまで起った航空機事故には、必ずと言っていいほど経済性優先があります」と言った小倉寛太郎さんがもし生きていたら、現在の日航がやっていることを見て、何と言うだろうか


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。