プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

1月-3月期 GDPどう見る

2006-05-20 19:00:49 | 政治経済
内閣府が19日発表した国内総生産(GDP)速報によると、2006年1~3月期のGDP(季節調整値)は、物価変動を除いた実質で昨年10~12月期に比べ0・5%増、年率換算で1・9%増加し、5四半期連続のプラス成長となりました。政府の景気判断によると景気は2002年1月に「谷」をつけて以来、50カ月以上「拡大」が続き、戦後最長の「いざなぎ」景気の57カ月を超えるかどうかが話題となっています。しかし、こんなに長期にわたって景気が拡大しているわりに、庶民の暮らしには今ひとつ回復の実感がありません。

たしかに大企業は「景気回復」を謳歌しています。民間シンクタンクの新光総合研究所によると継続して分析ができる東証一部上場企業(金融を除く1218社)のうち418社(34・7%)が過去最高の経常利益となる見通しです。
しかし、「企業部門の好調さが、家計部門に波及している」(安倍官房長官)と胸をはれる状況ではありません。
たしかに雇用者報酬は5年ぶりに増加しましたが、これは、一部大企業の限られた雇用者の所得増と失業率の改善による非正規労働者の増加を反映したものです。大企業は定期給与の抑制を続けながら、業績連動型ボーナスで補填しようとしています。

景況感は、大企業のプラス20にたいし、中小企業はマイナス19・3、個人企業はマイナス68・3と、依然、中小企業や個人企業は低迷しています。
日銀が四月に発表した「生活意識に関するアンケート調査」によると、景気が「良くなっている」と答えた人が22%、「悪くなっている」は15・9%です。この設問を始めた1996年以来、初めて「良くなっている」の方が上回りました。ところが、現在の暮らし向きについての設問に「ゆとりが出てきた」と答えた人はわずか7・6%で、「苦しくなってきた」人が44・8%と圧倒的です。
12日に発表された1―3月期の家計調査によると、総世帯の実収入は6期連続で実質減少しました。消費支出の水準は2000年の水準を下回ったままです。

今回のGDP速報に対する民間エコノミストの平均的な見方は、「景気の堅調な成長トレンドが確認された。民需主導で外需もよく、バランスのとれた成長だ。数字が予想よりも強かったのは、10─12月期の数字が下方修正されたことも影響している。4─6月期も堅調な民需主導で年率2%台の成長が続きそうだ」(HSBC証券 シニアエコノミスト 山崎衛氏 ロイター 5月19日)といったところです。

しかし、今回の速報値では、各項目の伸びは明らかに低下しています。個人消費は、伸び悩み、輸出の伸びも2・7%に落ちています。設備投資も一時の勢いがなくなっています。景気の動きに陰りが見えてきたともいえます。このところ下落している株価は、経済成長率が減速してくるということを先取りしているのかも知れません。

2005年度にプラス3%程度の成長を達成したのは1)低い実質金利(日銀による5年にわたるゼロ金利政策)2)実質円安、3)海外経済の拡大(中国、アメリカへの輸出拡大)──といった3つの要因が寄与したと考えられます。小泉「構造改革」の5年間で、圧倒的多数の国民生活の犠牲のうえで、大企業の利益回復がはかられたことは、日本経済に構造的なもろさをもたらしました。

アメリカ経済の減速や円高によって、今後、小泉「改革」によってもたらされた日本経済の構造的もろさがあらわになる可能性が大いにあります



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。