プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

教基法改悪 はじまった子どもの内心に踏み込む学習指導要領改定作業

2006-11-28 20:28:49 | 政治経済
文部科学省は、「到達目標を明確化する」ことを打ち出し、それに伴う学習指導要領の見直し作業を進めている。現在進行中の学習指導要領改定作業の中で、文科省が9月29日に配布した資料では、音楽の分野で義務教育段階で子どもたちに身に付けさせたい能力として「日本の伝統的な旋法による『君が代』の美しさや自国を尊重するこころをもつなどと書かれている。現行の指導要領には「いずれの学年においても指導すること」とだけ書かれており、現行より大きく踏み込んだ内容になっている「君が代は美しい」「国を尊重しろ」という「こころ」を持つことが、義務教育で到達すべき目標だというわけである。
東京都町田市では2004年12月に、市教育委員会が「君が代」を校歌などと同じ声量で歌うよう指導することを求める通知を小中学校校長に出した。通知後、音楽の授業のたびに「君が代」の練習があり、音楽の先生が「もっと大きな声で」「指がたてに三本入るまで口を開けて」と児童に執拗(しつよう)に指導を繰り返したという(「しんぶん赤旗」2006年11月28日)。

「日の丸・君が代」を批判する世界観、主義、主張を持つ者の思想・良心の自由は保障されなければならない。それは、大人だけでなく、判断力が育っていない子どもに対しても保障されなければならない。井上議員の「それ(思想・信条の自由)は児童・生徒にも当然認められる。どうか」という質問に対し、塩崎官房長官は「思想・信条は自由であります」と答弁した。9月21日の東京地裁判決は「我が国において、日の丸、君が代は、明治時代以降、第二次世界大戦終了までの間、皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきたことがあることは否定し難い歴史的事実」とし、「日の丸・君が代」を強制することは違憲・違法とした。これは、新教基法案(教育の目標)第2条の破綻を意味する。

教育の国家統制は本当に怖い。太平洋戦争を小学校・中学時代に過ごした共産党の不破哲三氏はリベラルな家庭に育ったのだからまさかと思っていたが、やはり、軍国少年であったらしい。仲間たちと「どうやら、日本は戦争に負けるらしい」などという噂を聞くと「噂は本当だろうか」「負けるのだろうか」と熱くなって語りあっても、「神国日本」「神州不滅」なのだから負けることはないと信じていたという。「神国日本」「八紘一宇」「神州不滅」は徹底的に頭の中に刷り込まれた3つのスローガンであった(不破哲三『私の戦後六十年』新潮社)。

新教基法案は、子どもたちに「国を愛する態度」などの徳目を強制するだけでなく、全国一斉学力テストの強行で、いじめ自殺や未履修問題の温床となっている競争とふるいわけの教育に拍車をかけるものである。とくに現行基本法の第2条、10条を改悪して、国家権力の教育への介入を無制限に広げようとしているのは、少数のエリートと、考えることを求められないできない子どもたちを作り出す教育を誰にも邪魔されずに推し進めるためである。
特権階級のために命令されたとおりに動く使い捨てのひとづくりを許してはならない。

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