日本の商業用原発50基のうち、唯一稼働していた北海道電力泊原発3号機が5日深夜、定期検査のために停止した。これで、42年ぶりに原発稼働が全国ゼロとなった。この日、全国各地で、「原発ゼロ」を祝福する集会、デモ、宣伝活動などが多彩におこなわれた。このまま、原発ゼロを継続することは、さして難しいことではない。それを阻むのは、電力不足に陥るからではなく、再稼働固執派の台所事情だけであるからだ。5月3日のテレビ朝日・モーニング・バード<そもそも総研!「そもそも あと3日で全原発停止 この夏集団自殺しないといけないの?」>がそのからくりを余すところなく暴露してくれた。この夏、集団自殺に追い込まれるのは、われわれではなく、再稼働固執派=原子力利益共同体の面々だという。Youtubeでみることができるので、是非、見て頂きたい。(その1)http://p.tl/y12Y。(その2)http://p.tl/fDrG。(その3)http://p.tl/_ILZ。
政府関係者やNHKなどの報道を見ていると、どんなに工夫しても、この夏の電力ピーク時には原発の再稼働なしには電力が不足するような気がしてくる。しかし、テレビ朝日の5月3日の番組を見ると、工夫をすれば足りるだけではない。呆れたことに、原発の再稼働が必要なのは、電力供給が不足するからではないというのだ。関西電力自身がそう公言したのだから、間違いない。
関電や政府は、夏場の電力が15~16.3%不足すると喧伝するが、無理のない節電・揚水発電・他社融通・自家発電の購入など、電力不足を埋める手段はいくらでもある。その気になれば、電力が足りないどころか、300万キロワット以上の余裕が出るということだ。
4月10日の大阪のエネルギー戦略会議で関電側は、思わず、電力需給に関わらず(つまり、電力が足りても)全ての原発を動かしたいと口走ってしまった。「電力需給と原発を動かすかどうかは関係ありません」「(原発の再稼働は)夏の需要とは関係を考えておりません」というのだ。
電力不足を喧伝するのは、電力供給を心配してのことではなくて、企業の台所事情を国民の目から隠すためだというわけだ。そのためには、彼らは、「偽装停電」でもやりかねない。市民が「原発なしでも電気は足りる」と言うのに対抗して、わざと停電させて、「やっぱり原発が必要なんだ」というPRに使う。
企業の台所事情とはなにか。関電(他の電力会社もみな同じ)は、公認会計士による減損処理の強制を恐れているのだ。減損処理とは、資産の市場価格の低下や、資産から生み出される収益の低下があり、資産に対して行った投資の回収が見込めなくなった場合に、その分を損失として計上し、その資産の帳簿価額を切り下げることをいう。平成17年(2005)4月以降の会計年度から減損処理の実施が義務付けられた。
5月3日のテレビ朝日・モーニング・バードによれば、2011年度決算末の関電の純資産は1兆5298億円、原発関連資産は8907億円なので、これがゼロとなれば(廃炉、放射性廃棄物の後始末まで考えたらマイナス)、純資産が一気に4割少々にまで消失してしまう。私も経理担当の経験があるが、こんな恐ろしいことは想像もできない(尤も、資金的にはほとんど支出済みと思われるので、紙の上で赤字を出しても倒産することはない)。
資金的に困るのは、原発マネーで潤っていた原子力利益共同体の面々である。政治献金をもらっていた政治家、天下りの役人、研究費名目で金をもらっていた大学教授、広告宣伝で潤っていたマスコミ、受注企業、寄付や各種交付金をもらっていた自治体など関係者は何としても、オイシイ原子力利権を失いたくない。だから「集団ヒステリー」とか「集団自殺」なんて言葉を口走ることになる。彼らは、国民を脅し、国民を騙して再稼働に持ち込むほかないのだ。
ことの真相は、集団自殺に追い込まれるのは、われわれではなく、再稼働固執派=原子力利益共同体の面々なのだ。
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