プロメテウスの政治経済コラム

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改憲派、憲法審査会始動にやっき ソマリア沖で進む海外派兵の実践訓練

2009-06-04 20:56:53 | 政治経済
自民党改憲派が憲法審査会の始動にやっきとなっている。総選挙を控えて、自民党の誘いに乗るまいと必死で堪えている民主党を尻目に憲法審査会始動に必要な審査会規程案を11日にも衆院で採決する動きを見せている。改憲派の策動は、安倍元首相があまりにも功をあせって改憲手続き法案を単独強行可決した頃から目論見が狂いだした。2007年5月以降、改憲案要綱の討議を進めるはずだった審査会は、その委員の構成や議事運営の規程も決められないまま、約2年間ストップしたままである。今年の憲法記念日までには、なんとかスタートさせたいと目論んでいたが結局、今日に至っている。しかし、自衛隊の現場では日米軍の一体化はどんどん進み、「海賊対処」を他国の軍隊と肩を並べて実践訓練する絶好の機会と捉えて陸空海自衛隊のそろい踏みが進められている。明文改憲を待たずに解釈「改憲」が着々と進んでいるというのが、憲法「改正」を巡る現在の状況である。

自民党改憲派は、審査会規程案づくりに民主党を誘い込もうと衆院議院運営委員会理事会で、前衆院憲法調査会長代理の枝野幸男議員(民主)を参考人として意見聴取することに成功した。しかし枝野氏は、「長年にわたる(議論の)積み重ねは安倍内閣の発足以降、紛失した」と述べ、07年に国民投票法を強行採決した与党を改めて批判。そのうえで「まずは当時の安倍晋三首相ら責任者が謝罪し、責任を明確にすべきだ」と主張し、規程案の採決に反対した(「毎日」5月28日21時1分配信)。
民主党はこの間、「改憲手続き法強行(2007年5月)について与党の側からの一定のけじめが必要」などとして、同規程の制定を正式の議題とすることに反対し、民主側の意見陳述にも応じない姿勢を示してきていた。一転、承諾したことについて民主党の国対幹部は、「与党が非常に強硬で、このまま一方的に規程議決を強行されるのも問題がある。一方的だったとはいえ、自民党の中山太郎議員(前衆院憲法調査特別委員長)も意見陳述しており、民主党の意見も表明しておくことにした。もともと何が何でも反対ではない」と述べた(「しんぶん赤旗」2009年5月22日)。
総選挙を控えて、自民党の誘いに乗るまいと必死で堪えている民主党、といったところである

憲法審査会がまだ始まってもいないのに、総務省は今年4月から、国民に国民投票制度の周知をはかるパンフレット500万部の配布を始めている。表紙には「ご存じですか? 平成22年5月18日から『憲法改正国民投票法』が施行されます」と憲法「改正」がそこに来ているような煽り方である。安倍一族が裏で糸を引いていることは明らかだ。
自民党改憲派が「民主党との合意形成」を待たずに、参院の方をほったらかしても、審査会規程案を11日にも衆院で採決する動きを見せているのはなぜか。折角、会期延長した今国会中に何がなんでも憲法審査会の始動に道筋をつけ、改憲原案づくりに向けた具体的な動きにつなげたいという安倍一族の強い執念の現われだろう。同時に民主党の代表が小沢から鳩山に代わった政治的風向きを読んだものと考えられる。鳩山由紀夫民主党代表は改憲派議員の超党派連盟である新憲法制定議員同盟の顧問でもある。鳩山氏は、代表就任直後のNHK番組(5月17日)で、憲法審査会の始動について「議論は始めて結構だ」と発言した。自民党改憲派が「それなら」と思っても不思議はない

日米軍事一体化を進める自衛隊の現場は、明文改憲を待ってはおれない。自衛隊を下請けとして有効に使いたい米軍と米軍と一緒に活動したい自衛隊は、日常の通常訓練だけではなく、実際に武力衝突が起きそうな現場で実践訓練する機会を待ち望んでいる。ソマリア沖「海賊対処」は、相手が「海賊」なので、憲法を無視してなんでもできる(国民は反対しない)。実戦訓練にはまたとない機会である。
政府は、「海賊対処」法の成立も待たないで、海上自衛隊の護衛艦二隻(「さざなみ」、「さみだれ」)をソマリア沖に派遣。これら護衛艦の活動に参加するため5月28日には、海自のP3C哨戒機部隊が、ソマリア隣国のジブチ共和国にむけて出発した。ジブチ国際空港拠点のP3C部隊の警護のためにゲリラ戦にも対応できる陸上自衛隊・中央即応連隊の50人も、初めての海外活動として現地へ出発の予定である。部隊の総勢は150人規模となる。アデン湾の護衛艦二隻(約400人)と、インド洋での「対テロ」戦争への給油支援のため護衛艦、補給艦(約330人)とあわせ約900人の海外派兵である

「海賊対処」法案の核心は、自衛隊に「海賊対処行動」という新たな海外任務を与え、派遣規模も、活動の地理的範囲も無限定で、政府の一存で世界の海のどこにでも、終了期限も定めないで派兵できるということにある。アデン湾を含むインド洋で「対テロ戦争」を行う米軍などの多国籍艦隊と情報交換しながら、実戦訓練を受ける。これまでの「隊員の生命・身体の防護のための武器使用」から「海賊対処」という「任務遂行のための武器使用」で、対「テロ」戦争の練習をする。
明文改憲を待たずに解釈「改憲」が着々と進んでいるというのが、憲法「改正」を巡る現在の情勢なのである


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