プロメテウスの政治経済コラム

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米朝直接協議  米政府代表団が平壌入り  膠着状態を打開できるか すべては米国次第

2009-12-08 20:27:45 | 政治経済
米国で北朝鮮政策を担当するボスワース特別代表率いる米政府代表団が8日、韓国・米軍烏山(オサン)基地から米軍機で平壌入りした。オバマ政権発足後初の米朝直接協議が開かれ、6カ国協議の再開問題を焦点に意見調整が進められる(「毎日」12月8日)。
米朝直接協議の再開はさる8月4日、クリントン元米大統領が、拘束されていた米国人記者2人の釈放のために訪朝したときから時間の問題と見られていた。日本のマスコミはちょうど8月4日から約1ヶ月間、所謂のりピー報道で明け暮れたが、北朝鮮問題をめぐる新しい動きが始まっていたのだ。

 米朝2国間の高官対話はオバマ政権下で初めてであり、北朝鮮が6カ国協議復帰に向けてどのような態度を示すか注目される。北朝鮮には「冷戦構造=敵対関係こそ諸悪の根源だから、それを議論しなければ意味がない」という思いが強い。朝鮮戦争の停戦協定を平和協定に代える「敵視政策の撤回」こそが核開発問題論議の前提だという立場である。
11月下旬韓国を訪問したオバマ大統領は、「われわれのメッセージは明確だ。北朝鮮が核放棄に向けた具体的で逆戻りできないステップを踏み出せば、米国は経済支援する」と強調。「北朝鮮が挑発的行動をとった後に対話に戻り、さらなる譲歩を求めるという過去のパターンを終わらせるべきだ」と述べ、「包括的措置(パッケージ)」の提案を再確認した。

 ボスワース代表らは3日にわたり平壌に滞在、姜錫柱(カン・ソクチュ)北朝鮮第1外務次官らと会合し、6カ国協議への復帰を説得するとともに2005年の共同声明履行を促すものとみられる。今回の対話では、北朝鮮を6カ国協議に復帰させるための誘引策や提案は示さない方針だとされているので、非核化議論の前に平和協定の締結、米朝関係正常化を最優先に議論すべきだという北朝鮮との溝は深い。対話が平行線をたどることも十分考えられる。
ボスワース代表がオバマ大統領の親書を所持しているかは確認されておらず、金正日(キム・ジョンイル)総書記との会合も不透明だ(聯合ニュース2009年12月8日)。

問題は、米国が北朝鮮問題をどれだけ本気で解決しようと思っているかである。韓国や日本の基地をアジアや世界への介入のために維持し続けるためには、「北朝鮮の脅威」が存在し続けることが米国にとって好都合である。朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に代える「敵視政策の撤回」によって緊張緩和が実現すると、日本や韓国に対する米国の 「核の傘」の恩恵も米軍基地の存在意義も弱体化しかねないからである

 北朝鮮は、核とミサイルで 「国家の自主権」 と 「民族の尊厳」 を守るという立場である。つまり、国家と国民の安全を核軍事力で確保しようとしている。北朝鮮は、核開発の理由として「米国の対朝鮮敵対政策」を挙げ、「韓国と日本にぼう大な(米軍の)武力と最新鋭兵器が存在する限り、解決されない」と主張する。そして、米国が韓国と日本に提供している「核の傘」を問題にするのだ。
国家と国民の安全保障はどこの国の政府にとっても主要な任務である。日本政府は、非軍事力による国家の安全保障という平和憲法を持ちながら、世界最強の米国の軍事力に依存し続けている。
国家の安全保障を核兵器とミサイルで確保しようとしている国は世界中にたくさんあるし、米国はその典型である。日本も韓国も米国の 「核の傘」 に依存し、核兵器の必要性を承認している。これがある限り、北朝鮮が、北東アジアで自国だけが非核化を強要されるいわれがない、と考えても不思議はない

 北朝鮮問題の解決は、北東アジアの非核と平和の共同体形成へ向かうときに最終的に解決される。米国が「核の傘」を韓国と日本に提供することによって、北東アジア介入の手段とし、韓国と日本がそれに唯々諾々としたがっている限り、北朝鮮に核を放棄させることは難しい。
米国が、朝鮮戦争を終結させず、「北の脅威」 を煽ることに利益を見出し、制裁によって「体制の崩壊」を期待しているようでは、今の膠着状態を打開することはできない

日本政府も同じである。「北の脅威」 を煽って制裁や軍事的対応を言い立てることによって、国民の支持を得ようとしている限り、拉致問題を解決する糸口はなく、核とミサイル問題も一層深刻化し、解決は遠ざかるだけである。
朝鮮戦争のとき、自分たちの国に雨あられと爆撃を行う戦闘機が嘉手納や横須賀から飛び立ったということを北朝鮮の人びとは忘れていない。朝鮮戦争のおかげで、日本の生産力は、戦前の水準を回復した。北朝鮮が日本のことを敵だと思っても不思議はない。

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