プロメテウスの政治経済コラム

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春闘集中回答 軒並みベアゼロ 不況の長期化は必至 反撃に立ち上がるときだ

2009-03-20 21:00:24 | 政治経済
自動車、電機など春闘相場に大きな影響力を持つ大手製造業の賃金交渉が18日、集中回答日を迎えた。トヨタ自動車や日立製作所など多国籍大企業の各社は、一斉に賃上げ(ベースアップ)ゼロを回答。電機では、東芝など定期昇給の凍結を提案するなど、実質的な賃下げにまで踏み込む動きが相次いだ。ボーナスの減額に加え、減産ラッシュなどで残業代もカットされ、収入は悪化するばかりだ。非正規切り、正社員の人員削減などリストラにも歯止めがかからない。賃金・雇用の悪化で個人消費が一段と冷え込み、企業の売り上げが低迷。業績悪化が再び雇用・賃金に跳ね返る“負の連鎖”が景気後退を長期化させることは必至である。自らは、需要不足を激化させながら政府に対してはケインズ主義的有効需要の喚起を要求する多国籍大企業の身勝手を徹底的に糾弾しよう

世界的不況の中、フランス全土では19日、雇用維持や最低賃金の底上げなどを要求する大規模ストが実施された。経済危機が広がった昨年秋以降、1月29日に続き2度目である。国鉄など公共交通機関に大きな影響が出た。各労組はストと同時に街頭での抗議デモも呼び掛けており、200以上の都市で実施される見通し。前回ストは全土で100万人(警察発表、労組によると250万人)が参加し、2007年のサルコジ政権発足後、最も激しい抗議行動となった(共同通信2009/03/19 19:57 )。
日本では、連合は物価上昇と内需拡大を目的に、4年ぶりにベア要求を掲げたが、春闘相場をリードするトヨタ自動車や日立製作所などの経営側は、序盤から「(定期昇給に相当する)賃金体系維持は前提ではない」と主張。ベアどころか、定昇を切り込む可能性も示していた。このままでは、労働者側の惨敗である。しかし、ストに立ち上がるという声は、どこからも聞こえてこない。多国籍大企業の経営側に賃上げの余力がないわけではない。

日本の労働者は長年にわたって賃金が抑制され、増税や社会保障などの負担増で生活が圧迫されてきたうえ、「規制緩和」にともない派遣など非正規の労働者が急速に増えたことから、低賃金で不安定な働き方を余儀なくされている。1997年からの10年間を見ても、製造業の大企業の経常利益は8・2兆円増え、株主への配当は4・0兆円増えているのに、従業員の給与は2・3兆円減っているというありさまだ(財務省「法人企業統計」から)。大企業には、賃上げや雇用の確保に応える体力は十分ある。製造業の大企業だけでも、過去の利益をためこんだ内部留保は、昨年3月期の決算で120兆円にも上る。そのごく一部を使えば、労働者の賃上げも雇用の確保も可能である。企業の「総額人件費」を増やすわけでもない定期昇給の凍結は、言語道断な暴挙である。

もともと個別資本は、社会全体の再生産がどうなろうが、自己の利潤追求にのみ関心をもつ労働者の賃金は、総資本の視点からみれば消費需要という重要な需要要因であるが、個別資本にとっては、単なるコストにすぎない。とりわけ不況時には、個別資本は競って人件費の切り下げに走る。しかし、需要不足に陥った不況時こそ賃金引上げによる家計の消費需要が必要なのだ。
この「合成の誤謬」に直面して、社会的総資本の視点から需要不足を問題にしたのが、ケインズ主義である。ケインズ主義とは、資本主義のもとでは避けられない生産と消費の矛盾、相対的過剰生産の危機、過剰蓄積のもとでの投資・消費需要不足問題=不足する有効需要を財政・金融政策の発動で補う、したがってインフレ政策で需要を喚起する、というものだった。

これにたいして、新自由主義は需要不足問題を個別資本の販売力・競争力強化で対応しようとする。市場原理主義のもとでは、市場における自らの競争力が問われることになり、社会全体の需要不足は二の次の問題であるからである。ケインズ主義では社会的な需要不足を補うものとされていたものが、新自由主義では個別資本の競争力を阻害する要因としてことごとく見直しの対象とされたのだ。こうしてヨーロッパでは、福祉国家が個別資本にとってのコスト増要因として見直しの対象とされ、日本でも開発主義国家が「護送船団方式」「国内高コスト構造」として排撃の対象となった。
多国籍企業にとって需要とは、内需に限らず、世界市場全体における需要である。国内において総資本が直面した内需不足問題は、グローバルな市場における需要の獲得競争として展開される。いま世界同時不況を前にして、多国籍大企業は、グローバルな有効需要不足に悩まされ、各国政府に大規模な財政出動を要求している。ケインズ主義的福祉国家を自らが解体して、社会全体の需要不足問題を激化させた責任を棚上げにして、自己の内部に蓄積した利益に手を付けようともしないで、ケインズ主義的財政出動を要求す身勝手さである

フランスの労働者階級は、反撃に立ち上がっている。日本の労働者階級はいつまで泣き寝入りするのか!

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