プロメテウスの政治経済コラム

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月例経済報告―「景気回復」の実相

2006-02-23 18:16:11 | 政治経済
与謝野馨経済財政担当相は22日、2月の月例経済報告を関係閣僚会議に提出し、景気の基調判断では、輸出と生産面の好調さと、17日に発表された10-12月期の国内総生産(GDP)の高い成長率などを背景に、これまでの「景気は緩やかに回復している」から「景気は回復している」へと表現を一段引き上げました。基調判断の引き上げは2005年9月以来6カ月ぶりです。現局面での「景気回復」には見落としてはならいことがあります。一つは、輸出に引っ張られた大企業中心の「回復」だという点です。もう一つは、格差が広がるなかでの「回復」だという点です

月例経済報告は、輸出と生産について、いずれも「緩やかに増加している」とし、判断を一段強めました。輸出の判断引き上げは6カ月ぶり、生産は2カ月ぶり。輸出は米国向けの輸送用機器や一般機械、アジア向け電気機械や化学製品などが牽引役。最近の円安基調も輸出を支え、企業収益を高める要因となっています。しかし、外需依存の「回復」は、今後のアメリカとアジアの経済動向に左右される不安定さを伴います。

日銀の「生活意識に関するアンケート調査」(第24回平成17年12月)の結果を見ると、一年前と比べて景気が悪くなった、変わらない、と答えた人が八割以上を占めています。国民の圧倒的多数は回復を実感できていません。
月例経済報告は、「企業部門の好調さが家計部門へ波及しており、国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれる」としています。しかし、それが本当なら、国民の大多数が回復を実感できないはずがありません。「企業部門の好調さが家計部門へ波及」の実態は、少数の富裕層に限られているのです。富裕層(年収2千万超)に膨らみがみられる一方、年収3百万円に満たない給与所得者が急増しています。貯蓄ゼロ世帯は四世帯に一世帯に迫ろうとしています。

資本金一億円以上の企業収益は、直近の経常利益の底をつけた2001年度と比べて04年度には13・2兆円増えました。小泉内閣の発足後、働く人の所得(雇用者報酬)は、昨年までに12・3兆円のマイナスとなっています。小泉「構造改革」は、企業部門の好調さが家計部門に波及するのではなく、家計から企業への所得移転をおこなったのです。

月例経済報告は、「個人消費は、緩やかに増加している。 雇用情勢は、厳しさが残るものの、改善に広がりがみられる」との判断を据え置きました。しかし、政府が「景気回復」を理由に、所得税・住民税の定率減税の全廃や消費税の増税に踏み切るとしたら、庶民の家計と日本経済に大打撃を与えることは間違いないでしょう。


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