プロメテウスの政治経済コラム

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戦犯政治受け継ぐ安倍官房長官

2006-04-06 18:58:04 | 政治経済
ポスト小泉首相の最有力候補といわれている安倍官房長官には相当根深い戦犯体質がしみ込んでいるようです。しかも議論の立て方が狡猾かつ厚顔無恥です。

安倍官房長官が歴史教科書問題に関連し、1982年の「教科書書き換え問題」で「『侵略』を『進出』と書き換えられた事実はなかった。(当時の官房長官が謝罪したのは)結果として大変な誤りを犯した」(二日、フジテレビ系)と述べたことが波紋を広げています。現職の官房長官が、アジア諸国に公約した政府見解を否定したのですから、ことは重大です。

1982(昭和57)年8月26日の「歴史教科書についての官房長官談話」(「宮沢談話」)は、日韓共同コミュニケ、日中共同声明で述べた過去への「反省」に言及。「このような日韓共同コミュニケ、日中共同声明の精神は、我国の学校教育、教科書の検定にあたっても、当然、尊重されるべきものであるが、今日、韓国、中国等より、こうした点に関する我国教科書の記述について批判が寄せられている。我国としては、アジアの近隣諸国との友好、親善を進める上でこれらの批判に十分に耳を傾け、政府の責任において是正する」と確約したのです。

1982年6月26日、新聞各社は一斉に、文部省の昭和56年度検定によって高校社会科の教科書で、「華北に侵略」が「華北に侵出」に書き換えさせられたと報じました。ところがその後、「華北に侵出」という表現は執筆者が検定前から自主的に書き換えていたことが判明しました。この事実のみを安倍流に捉えて「(宮沢談話は)結果として大変な誤りを犯した」という先の発言になったのです

アメリカの世界戦略の転換によって侵略戦争の責任追及を免れて以降、日本の戦犯勢力(安倍氏はA級戦犯岸信介の孫)は、敗戦による歴史の転換をことさら否定し続けています。1950年代以降、政府は、学習指導要領の改定を通じ、中国への侵略を「日本の大陸進出」と言い換えるなど、日本の侵略戦争を覆い隠す方針を打ち出し、教科書会社、執筆者に「言い換え」を強要しました。八〇年代になっても政府の方針は変わらず、三・一独立運動を「暴動」と書いたり、朝鮮人の強制連行や、日本軍による沖縄住民虐殺の記述が、削除の憂き目にあってきました。中国や韓国から批判されたのは、なにも「華北に侵出」に限ったことではありませんでした
当時の鈴木善幸首相と宮沢喜一官房長官は、このような経過を踏まえて先の官房長官談話を出したのです。

安倍官房長官はNHKへの政治介入問題でもまったく同じ論法を使いました。
NHK総合企画室の野島直樹担当局長と松尾武放送総局長は、NHK番組「戦争をどう裁くか(2)問われる戦時性暴力」(2001年1月30日放送)の事前了解をもとめて01年1月29日午後、議員会館に安倍官房長官(当時・内閣官房副長官)、中川経済産業相を訪ねます。番組は、従軍慰安婦問題をとりあげ、旧日本軍の関与や昭和天皇の戦争責任を明らかにするものでした。午後6時ごろ、松尾総局長と野島担当局長、伊東律子番組制作局長が完成済みの番組を試写し、内容の変更を制作現場に指示。その後30日の放送ぎりぎりまで改変作業がおこなわれました

安倍官房長官は言います。「NHK幹部が予算の説明できた。NHK側が自主的に番組内容を説明した」
NHK側は言います。「制作過程については編集権の問題であり答えられない。この番組はNHKとして自主的判断で編集したもので、いかなる外部勢力の影響も受けていない」

教科書執筆者が、自主的に「侵略」を「進出」に書き換えた。昭和天皇を「被告」としたことや「法廷」で出た有罪判決、日本軍による性奴隷制の責任が免罪されてきたという米山リサ・米カリフォルニア大助教授の指摘、責任者処罰を求める意見などが次々と削除されていったのは自主的な番組編集に基づくもの。

周りをどう取り繕うと、日本が先の侵略戦争でアジアの国々の国民に多大の苦痛と損害を与えた事実を消すことはできません。問われているのは、自民党と安倍官房長官自身の戦犯体質です


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