プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

2009年 世界の構造変化 その量的変化と質的変化 米国一辺倒は完全な時代遅れ

2009-01-03 18:52:04 | 政治経済
2008年は、米国一国覇権主義に終わりを告げる一年となった。イラク戦争の破綻、カジノ資本主義の崩壊による金融危機。米国の一国覇権主義が崩壊に向かい始め、米国を盟主とする帝国主義諸国(G7)だけでは対応不能となった。早ければ、2009年G7は、G16、G20に拡大されるだろう。そんななかで、日米同盟にしがみつく以外に、国際社会で生きるすべを見出していない自民党、民主党はいまや完全な時代遅れと言ってよいだろう。
2009年の世界は、「米一極支配」の終わりを歓迎しつつ、戦争を未然に防ぐ「平和の国際秩序」づくりや、弱肉強食の新自由主義からの大転換を目指す新しい動きが加速するだろう

「経済のグローバル化などにより、2025年には第2次大戦後に構築された米国中心の国際システムはほとんど姿をとどめていないだろう。」米国の情報機関を束ねる国家情報会議(NIC)が昨年11月に発表した『GLOBAL TRENDS 2025』の書き出しである。5年ごとに作成されるこの文書では、世界の構造変化を大胆に予測している。ブラジル、ロシア、インド、中国などが台頭して“多極化”が進む一方、「軍事力を含め、米国の力は減少し、影響力は限定的なものになる」と指摘。米国を中心とした国際システムの限界が近いことを、米国の国家機関自らが初めて認めた。
“米国についていけば何とかなる、日米同盟が日本外交の基軸”という時代はもう終わったと考えるべき時が到来しているのだ。しかし、日本の支配階層、自民党や民主党、マスコミの思考には、なんの変化もなさそうだ。

先の『GLOBAL TRENDS 2025』は、日本は現在と同じ「中の上」程度の国際的地位を維持するが「米中の経済力や戦略の影響を大きく受ける」と予想。高齢化など人口構成の変化や政治、経済システムの変化が押し寄せ、自民党1党支配の時代は「完全に終わりを告げるだろう」と予測している。また、中国を「今後20年間に最も影響力を増す国」と位置づけ、軍事大国の地位を築くだけでなく、2025年までに日本を抜いて世界第2の経済大国に浮上すると予測。この結果、日本は、中国、インドに次ぐ4位に転落するという。
日本の動向について、自民党支配が終焉し、同党が「競合し合う多くの政党に分裂するかもしれない」と指摘しているところはさすがご主人様はよくみているということだが、経済をその量的側面だけをみて、質を問題にしないのは、やはり「遅れた資本の『帝国』」アメリカらしい

モノづくりという点からみると、今後、ブリックス(BRICs)の台頭は間違いない。同時に、世界の構造変化を考えるとき、台頭するブリックス等の経済の質にも注目することが必要である。アメリカの経済覇権主義が崩れ、帝国主義同盟の大国の支配が崩れていくのは結構だが、他方で、単に生産力だけでなく、政治面での民主主義、平和を実現しようとする力の成熟、経済運営に対する民主的規制の力などの問題にももっと注目が必要である。
むきだしの資本の論理を、社会全体の安心や安定、平和や豊かさを求めるその国の労働者・国民がどこまで制御し、管理することに成功しているか、国民による経済の民主的な管理がどこまで達成されているか、そのための政治的民主主義がどの程度実現されているかは、世界の構造変化を見るときの重要な尺度となるだろう

アメリカは、戦争や植民地政策以外の分野を見ても、京都議定書を拒否した地球環境問題への対応や、むきだしの資本の論理を「新自由主義」の名で世界に拡げようとした行動など、北欧やEUの指導的諸国に対して、総体として「遅れた資本主義」になっていることは明白である。そのアメリカにひたすら付き従う日本の資本主義が、同様に「遅れた資本主義」になっていることいる点は、大変に残念なことだ。
経済の質という面では、『週刊・東洋経済』が2008年1月12日号で「北欧はここまでやる 格差なき成長は可能だ!」という特集を組んだ。一人当たりのGDPでみるとノルウェー、デンマーク、スウエーデン、フュインランドの4カ国ともが、日本やイギリス、ドイツ、フランスを上回っている。ノルウェー、デンマークはアメリカよりも高い。よく知られるように、これらの国は社会保障がひじょうに整っている。税金は高いが、国民生活への還元が大きい。しかも経済の成長率は高く、国民自身が、そうした社会を高い投票率で支持している
昨年12月16日、中南米カリブ海地域の33カ国の首脳が一堂に会する初の「中南米カリブ海諸国首脳会議」が、ブラジルで開催された。「米国や欧州諸国の参加抜きで」でキューバを含めた域内全33カ国が集まった。米国から自立した地域統合を強める中南米の変化をうきぼりにするものであった。いま、南米では、脱アメリカ、脱新自由主義の上に、はたして貧困からの脱出が資本主義の枠内で可能なのだろうか、あるいはそれをこえる社会をめざす方が効率的なのか、そういう議論が進んでいる。彼らなりの社会主義への展望が、どういう形をとってあらわれてくるかは、経済社会の質的発展を考える上で、大変興味深い
日本の「遅れたルールなき資本主義」を「ルールある経済社会」に変革することは、われわれの当面の課題である。「米一極支配」の破綻は、日本国民が、「遅れた資本主義」から脱皮する絶好の機会を私たちに与えている。

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