プロメテウスの政治経済コラム

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鳩山政権 予算編成の迷走と小沢氏の一声 この政権は本当に大丈夫?

2009-12-20 18:24:48 | 政治経済
来年(平成22年)度予算編成で四苦八苦する鳩山内閣を見るに見かねたのだろうか、民主党の小沢一郎幹事長が16日に首相官邸を訪ね、予算に関する民主党の重点要望(18項目)を提示した。その内容は、子ども手当の支給にあたって所得制限を導入することやガソリン税暫定税率の「租税水準」維持など、マニフェストの根幹部分の事実上の転換を迫るものであった(産經2009.12.19 18:30 )。
政策の整合性や一貫性をよく検討しないでパッチワーク的に並べただけというこの党の弱点がもろに出た。さらにこの党は小沢氏の一声でガラッと方向が変わるという非民主的政党であることを、またしても如実に示した

 総選挙で国民は、民主党のマニフェストを一言一句支持したわけじゃない。自公政権を退場させたいという一念で民主党を勝たせただけなのだ。だから私たちは、マニフェスト絶対主義ではなく、一つひとつ国民の声を聞いて、国会で審議して見直すべきものは見直せ、と主張してきた。それを「マニフェストはまさに国民との契約でございます」と言って聞く耳を持たない頑な姿勢で予算編成に臨んだ挙句、財源に行き詰まり迷走を繰り返しているのが、鳩山政権の予算編成作業である
もともと総選挙時から、マニフェストの項目を積み上げたら財源がない、とみなが指摘していたとおり、財源は見つからなかったということだ。「ムダ排除を進めれば財源は出てくる」と言い続けてきた民主党のマニフェスト選挙のインチキぶりが現実化したということだ

 副幹事長ら25人で首相官邸に乗り込み、鳩山首相や閣僚を前に小沢氏はこう言った。「これは党というよりも全国民からの要望でございます」。
これを受けて、鳩山首相は、「幹事長からお話がありましたように、党の要望、意見というよりも国民の思いだ、その通りだと思っております」と追認。さらに、部屋から出てきたところで、平野博文官房長官は、こう言った。「これは党の要望というより、国民の要望だというご要請でもあります」。
「政治主導といいながらほんとうに政治主導じゃないんじゃないか」と文句をつける小沢氏に、鳩山首相は「ありがたい」を繰り返すだけ。党内からは、「小沢氏と鳩山氏、どちらが総理なのか。総理が幹事長に陳情するようだった」という声も聞かれるという(「しんぶん赤旗」2009年12月18日)。

  2007年夏の参院選挙で、民主党はそれまでの「構造改革」促進政党から反構造改革政党に突如変身した。そのときもマニフェストはパッチワークであったが、小沢代表だからこそできた変身だった。逆にいえば、民主党内での政策決定過程がいかに非民主的であるかを端無くも露呈する出来事だった
小沢氏の「一声」でマニフェストの基本項目が一変する――民主党のいう「マニフェスト絶対主義」と官邸主導の「政策決定の一元化」という二枚看板は一体なんだったのか。政権の信頼性に直結する問題だろう。

 なぜこんなことになるのか。選挙に勝つために「子ども手当」「教育無償化」「道路暫定税率の廃止」など個々の政策は掲げるが、自民党政治に代わる新しい政治の基本方針や国家像がないから、各政策の整合性や一貫性がないのだ自民党政治のゆがみに切り込む基本姿勢がないから、軍事費や大企業・富裕層優遇税制に切り込むことができず、消費税増税を凍結すれば、財源探しに苦しむのは当然である
「国民生活が第一」といいながら、マニフェスト実行のために「扶養控除廃止」や「特定扶養控除の圧縮」などと、庶民増税に財源を求めるという逆立ちした袋小路にはいるのだ。

 読売新聞社の緊急全国世論調査で2010年度予算編成について聞いたところ、ガソリン税などの暫定税率維持に賛成する人は52%で、反対の33%を上回った。また中学生まで支給する「子ども手当」に所得制限を設けることには「賛成」が72%に達し、「反対」は22%にとどまった(「読売」2009年12月20日9時27分配信)。
この世論調査を見る限り、さすが選挙に強い小沢氏らしくマニフェストを変わり身早く変更したようだ。
 道路特定財源を一般財源化したのだから、暫定税率は廃止すべきである。しかし、そのうえで環境税制をめぐる制度設計の議論などを並行して進めなければ、問答無用のような転換では一貫性がない。「子ども手当」への所得制限の導入についていえば、破壊された累進税制を立て直すことこそが、主眼とならなければならない。子ども手当について「子ども一人一人の基礎的な費用は(親の所得と関係なく)社会全体でみるべきだ」という理念は間違ってない。しかしその前提は、子育てを「社会で支え合う」ような税制が確立されているかどうかである。

「社会」「国民全体」と言っても貧困にあえぐ若者や高齢者、ひとり親家庭もあれば巨額の報酬を手にする大企業経営者、莫大な配当や投資収益を受け取る投資家もいる。①所得の少ない人には少なく、所得の多い人にはより多く負担してもらう累進課税、②ぎりぎりの生活費には課税しない、③給与などの勤労所得は軽く、金持ちの資産運用所得は負担能力が高いから重くする、こうした「応能負担」原則に基づく民主的税制を取り戻してはじめて「社会で支え合う」ことが問題となるのだ。

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