プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

パチンコ店内ATM設置  新しいニッチ・ビジネス?!

2009-12-21 20:39:22 | 政治経済
各地のパチンコホール内に銀行ATM(現金自動払出機)を設置する動きがすすんでいるらしい(「しんぶん赤旗」2009年11月12日)。私は、パチンコをやらないのでよくわからないが、手持ちの金をすってしまって、悔しいと思っているときに、そのパチンコ店内で金を簡単に引き出だすことができたら、もう一度続けようとして深みにはまる人も出てくるのではないか。賭け事では、「のめりこみ」はろくなことがない。しかも、ATMの管理・運営業務は、大手警備会社「綜合警備保障」(ALSOK、東京・港区)が一括して受注しているという(「しんぶん赤旗」2009年11月20日)。綜合警備保障は、その創業者の村井順氏は元九州管区警察局長、前社長の漆間英治氏は元中部管区警察局長というように、警察官僚と深い仲の会社として有名である。パチンコ業界と警察関係はこれまた深い仲。コンビニ店やショッピングセンターなどのATM設置がほぼ一巡した現在、とうとうパチンコ店内に進出しようというわけだ

 パチンコ店内ATM設置事業をすすめているのは、ATM運用会社の「トラストネットワークス」社(東京・中央区、竹村理社長、資本金8億8700万円)。コンビニ店などに設置されたATMとは違い、その店のパチンコ客だけを対象にしたATMである。同社側がパチンコ店内ATMのシステムをホール業界の団体である全日本遊技事業協同組合連合会(全日遊連)に提案したのは2006年7月だという。全日遊連では、業界健全化のための自主規制として、ホール敷地内でのサラ金業者の営業やATMの設置を禁止することを内規で定めており、提案にたいしては強い懸念も出されたが、結局、客の「のめりこみ」防止策として、1人1日3万円を上限とし、現金の借り入れ機能もつけないこととしたうえ、07年10月から東京と神奈川の10店舗でまず試行開始。近く150ホールまで拡大する予定だという。

 トラストネットワークス社は、東証1部上場の「インターネットイニシアティブ」社(IIJ、鈴木幸一社長)の連結子会社であるが、IIJのホームページの「投資家の皆さまへ」によれば、トラスト社が2年前から始めたパチンコホール内ATMの試行運営が「順調に推移」したとしたうえ、「今後4~5年間程度で約8000台のATMを導入していく」計画だということだ。大変景気のいい話である。
「この計画通りにすすめば、客がパチンコ資金を引き出すためだけの銀行ATMが、全国に約1万2000店舗といわれるパチンコホールの大半に設置されることになります。パチンコ依存症の増大や経済的なトラブルなど大きな社会問題が起こることが懸念され」る(「しんぶん赤旗」2009年11月14日)。

 ATMを設置すると、設備のメンテ、現金の回収・補充・精査、金詰まりなどのトラブルへの対応をはじめ、日常のATMの管理・運営業務が発生する。ATM設置の事業は、トラストネットワークスが主体となって進めているが、同社は従業員約20人の企画・運営会社である。ATMの管理・運営業務を一手に引き受けているのは、警察と密接な関係のある「綜合警備保障」(ALSOK)である
コンビニ店やショッピングセンターなどに設置されたATMの管理業務はALSOKの大きな収益源である。しかし、同社の直近の決算説明によれば、サラ金ATMの撤去・解約などで約10億円の収入減となり、「受注の伸び悩み」に直面していたという。パチンコ店は、風俗営業適正化法のもと、「風俗産業」と位置づけられており、営業の許可をはじめ、施設の変更など、ことこまかに所轄の警察署に届け出ることが義務付けられている。誰が音頭を取ったかは知らないが、パチンコ店内にATMを導入する話は、確かにうまいニッチ・ビジネスである。

 トラストネットワークス社が企画したパチンコ店内ATM設置事業は、同社が提携契約した金融機関を通じて、全国の銀行・金融機関をむすぶ金融インフラであるATMネットワーク網を、パチンコホールにつなぐものである。
「しんぶん赤旗」が取材攻勢をかけるものだから、ゆうちょ銀行(古川洽次会長、東京・千代田区)は、このATM設置は同行の内部規定に照らして「予定外」のものであるとし、今後の「対応策を検討したい」と表明したという(「しんぶん赤旗」2009年11月30日)。トラスト社は銀行と提携しないでATMを勝手に設置できない。「しんぶん赤旗」の追求で「さまざまな社会的批判を受けたこと、他の金融機関への影響も配慮して」提携契約を解除する銀行も出てきているという。

 パチンコ店内ATMについて金融庁監督局は、ATM設置場所について届け出などは必要ない規制対象外ということである。「全国キャッシュサービス」(MICS=ミックス)を通じ、パチンコ店内ATMと日本中の金融機関を結んだ全国銀行協会は、「設置場所は個別の銀行の経営判断で、指導する立場にない」としている。警察は、風営法にもとづき、パチンコ店からATM設置の届け出を受けながらALSOKの商売の種だから、当然なんの指導もしない。

ATMを使い「のめりこみ」に陥るかどうかは、客の自己責任、金融機関の態度次第ということらしい。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。