プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

裁判員制度はいらない! 必要なことは、刑事裁判のゆがみを正すこと!

2009-05-19 22:32:04 | 政治経済
昨夜、TBS系テレビ「裁判員制度ドラマ“家族”」を観た。見も知らぬ他人の人生を垣間見ることになる裁判員たち。折角、職業裁判官とは違う市民感覚を発揮しようとしても、「公判前整理手続き」で「迅速に有罪に」持ち込む路線が、すでに検察、警察、弁護士によって敷かれており、裁判官もあらかじ決められた争点を外れる市民の声を取り入れようとしない。裁判員は将来、冤罪を追及されたときのアリバイとなり、グローバルスタンダードから外れた日本の刑事裁判制度を正当化する口実に利用されるだけである。あと2日後に迫った裁判員制度に非協力の抵抗を続け、まやかしの「裁判民主化」制度を粉砕しよう!いま必要なことは、日本の刑事裁判制度のゆがみを正し、グローバルスタンダードにあわせる世論を巻き起こすことだ。

テレビドラマは、裁判員制度導入と共に、持ち込まれる「公判前整理手続き」の問題点を鮮やかに析出する。裁判員の負担を軽減するためというが、「何をやったか」という結果を中心とした争点と証拠の絞込みだけが行われ、「なぜ犯行に至ったか」という審理がなおざりにされる。つまり、被疑者・被告人の人生や犯行動機などが十分に検討されないのだ。
働きながら認知症の母親の介護をする谷口みな子(大塚寧々)が裁判員に選ばれ、認知症の牧田文子(長内美那子)が殺された事件を担当することになる。強盗殺人の容疑で逮捕されたホームレスの三田尻作雄(高野高史)は容疑を認めており、裁判員が判断する争点は殺意の有無だけだといわれる。しかし、谷口みな子は、認知症の親を介護するという同じ境遇にある被害者牧田文子の息子・孝一郎(西村雅彦)の態度が気になる。大事な母親を三田尻作雄に殺されたが、憎しみを抱いているようでもない。ドラマは、現実とは異なるので、裁判員・谷口みな子の要求で、三田尻作雄が生き別れた家族やホームレス仲間の友人が法廷に呼ばれ、被告人の人生が徐々に明らかにされる。牧田文子と孝行息子孝一郎との関係も再現され、犯行動機というもっとも核心の部分に迫る。裁判員が判断する争点は殺意の有無だけだというが、被告人の人生や犯行動機をじっくり調べてみると(ドラマでは裁判は3日以内という原則が破られ4日間となる)、単純な強盗殺人事件ではなかった。真相は、家族のことを思い自殺を決意した認知症の母親の自殺を助けた嘱託殺人であった。嘱託殺人か否かが本当の争点であった。裁判員6人は、危うく「迅速に効率よく有罪に」持ち込む路線にただ巻き込まれるだけであった。

日本の刑事司法は、まず捜査段階で、グローバルスタンダードから大きく外れている。被疑者は、「やった」と言わない限り、警察の密室「代用監獄」に長期にわたって拘束され(23日間)、「自白」を強要される。「代用監獄」は、英語でも“ダイヨウカンゴク”である。こんな制度は、日本以外にない。こうして、苦しくなって警察、検察の筋書き通りの「自白」が作られる。この過程で、検察の筋書きと異なる被疑者に有利な証拠は隠され、ウソの証言が用意される。調書に基づいて99・9%の有罪率で判決することに慣れている裁判官は、公判で被疑者が自白調書と違うことを申し立てても、ウソをいっているのは、被疑者の方だということになってしまう。

このような職業裁判官に対し、評決に際して素人の裁判員が対抗できるだろうか。納得できないと思っても、自分の意見にケチをつけられたと恐い顔をする裁判官に抵抗することは不可能である。裁判官の横暴をみんなに明らかにしたいと思っても生涯にわたる「守秘義務」によって抑え込まれたままである。今の私たちにできることは、ただひたすら、裁判官になんと罵られようとも裁判官と反対の意見を貫き、抵抗を続けるだけである。

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