プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

小学校教科書  旧石器・縄文時代の取り扱いにも「靖国派」の黒い影

2007-05-13 20:55:54 | 政治経済
“靖国派”は以前から、日本の教育に“靖国派”の考え方をもちこむことに特別の努力をそそいできた。河野談話、村山談話に対し自虐史観として危機感を抱き、「靖国史観」を学校教育にもちこむ巻き返しを行い、「つくる会」の教科書を、検定で合格させた。最近では、「従軍慰安婦」の問題で国の強制についての記述を削らせるとか、沖縄戦のなかで起こった集団自決について、それが軍の指示でおこなわれた事実を削らせるなど、戦争を美化する方向での乱暴な教科書検定をくりかえし行っている(「しんぶん赤旗」同上)。

昨年11月、日本考古学協会は「日本列島における人類史のはじまりを削除し、その歴史を途中から教えるという不自然な教育は、歴史を系統的・総合的に学ぶことを妨げ、子ども達の歴史認識を不十分なものにするおそれがある」として、教科書の本文に旧石器・縄文時代の記述を復活させることを強く求める声明を発表した。歴史教育への国家の介入がここまで進んでいることには、びっくりするばかりだが実際、1999年に検定を受けた02年から04年まで現場で使われていた小学校6年生の教科書には、旧石器・縄文時代の記述が全くなくて、唐突に米づくりが始まった弥生時代から書き起されているのだ(現在は、いわゆるすべての児童が学習する必要のない「発展的な学習内容」のなかで、旧石器・縄文時代が一部復活している―「紙屋研究所」HP 2007.4.24参照)。

なぜ、こんな異常なことが起きたのか。原因は、文部省(現在の文部科学省)が決めた「学習指導要領」にある。89年と98年に決めた「学習指導要領」で、日本の歴史は「大和朝廷による国土統一」から教えればよい、ということをくりかえし指示。歴史を学習する第六学年では、「我が国の歴史や伝統を大切にし、国を愛する心情を育てるようにする」ことなどを目標に掲げたうえで「農耕の始まり、古墳について調べ、大和朝廷による国土の統一の様子が分かること。その際、神話・伝承を調べ、国の形成に関する考え方などに関心をもつこと」を定めている。しかも、実際の指導にあたっては、「示された歴史的事象の範囲にとどめ、それ以外のものは取り扱わないようにする」ことを明確に指示しているのである。要するに農耕が始まる以前は教えるなということであるから、当然、小学校の社会科の教科書から旧石器時代と縄文時代の記述が削除されてしまったということである。これは、わが祖先たちが日本列島で展開してきた現実の歴史を、“靖国派”の特殊な価値観で切り刻んでしまうことを意味する。
“靖国派”の「国柄」=「国体」論は、日本民族の歴史は天皇とともに始まるとする。旧石器時代はもちろん、縄文時代にも、大和朝廷などは存在しなかった。そんな時代のことを子どもに教えたら、自分たちの国柄論が成り立たなくなる。おそらく、これが、この暴挙の、もっとも奥深くにある動機だったのであろう(不破所長―「しんぶん赤旗」同上)。

“靖国派”の攻撃が集中しているもう一つの分野に、家族や女性の地位にかかわる分野がある。夫婦別姓問題は、日本会議の猛烈な反対運動で、自民党も政府も腰砕けになり、結局、改正の動きは02年につぶれてしまった。最近では、女性の再婚禁止期間離婚後三百日以内に生まれた子の戸籍が問題となったが、政府と自民党の要を“靖国派”がにぎっており、党の方は中川昭一政調会長が、政府の方は長勢甚遠法相が反対の声をあげ、その一声ですべてご破算となった。
“靖国派”という特異な思想でかたまった特殊な集団がいまや政権の中枢にすわり、その立場を利用して、自分たちの特殊な価値観、特殊な思想を、わが国社会に上から押しつけようと蠢いている。憲法改定の動きとともに日本社会が直面する大きな危険として、われわれは、警戒と反撃を系統的におこない、これを芽のうちにつぶしてゆく努力が求められるのだ(「しんぶん赤旗」同上)。

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