プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

公務員賃下げ法案可決   真面目に怒る気にならない連合のダラ幹ぶり

2012-02-24 19:20:55 | 政治経済

民主、自民、公明3党が密室談合のうえ、提出した国家公務員給与削減法案が23日、衆院本会議で採決され、3党などの賛成多数で可決された。日本共産党の志位和夫委員長は23日、国会内で会見し、国家公務員の給与を平均7・8%も大幅に引き下げる法案が衆院本会議で可決されたことについて、三つの問題点を指摘し、「どこからみても道理のない暴挙であり、強く抗議するとともに、廃案のために全力でたたかいぬく」と表明した。共産党の主張は全くその通りである。しかし、平均7・8%削減は、連合のダラ幹が昨年523日に政府と合意していたものである。もちろん、全労連系労組は与り知らぬものだが、連合のダラ幹が労働組合の代表であることを多数の労働者が許容しているのである。 真面目に怒る気にもならない

 

志位委員長が指摘した三つの問題点は次の通り。

第一は、国民全体の所得低下、内需の縮小、不況の悪循環を加速する引き金を引くという問題。

国家公務員の給与は、地方公務員や独立行政法人の職員など約600万人の給与に波及し、民間賃金にも影響を及ぼすものになっていると指摘。「公務と民間の賃下げ競争をもたらし、内需をさらに縮小させ、デフレの悪化を招く。経済を悪化させ、財政破綻もひどくする道だ」。
給与の引き下げが消費税増税の“地ならし”と位置づけられていることは非常に重大だと指摘。「労働者全体の賃下げを進めた上に、消費税大増税で実質所得を奪えば、暮らしも経済もめちゃくちゃにする」。

第二は、二重の意味で憲法に違反しているということ。

国家公務員の労働基本権が憲法の定めに反して制約されていること、そのもとで代償措置としてつくられた人事院勧告制度さえ無視したものだと批判。「二重の意味で憲法に違反しており、労働者の人権が幾重にも蹂躙されることは、許しがたい。いま国会がなすべきは、全面的な労働基本権の回復にこそある」。

第三は、この法案が、民主、自民、公明の「密室談合」による「議員立法」として持ち出され、総務委員会でのまともな審議もなく強行されたという問題。

「政府提出の法律を、ともかくも労働者の意見も聞いた上で通したというものでもなく、3党だけで『議員立法』という形で突然国会に持ち込み、労働組合の代表の意見もまったく聞かず(志位氏は連合のダラ幹を認めていない?!)、まともな審議もなく強行した」。

 

国家公務員給与の削減を巡る経緯は次の通り(毎日新聞 2012218日 東京朝刊)。

 <11年>

 3月11日 東日本大震災発生

 5月13日 復興財源捻出のための給与10%削減案を政府が提示。労組と協議入り

 5月23日 連合系労組と平均7.8%引き下げで合意

 6月 3日 給与引き下げのための臨時特例法案と、労働基本権拡充などの関連法案を閣議決定

 9月30日 人事院が11年度給与の0.23%引き下げを政府に勧告

10月25日 政府の給与関係閣僚会議で人勧実施見送りを決定(連合のダラ幹が実施に反対)

12月 7日 自民、公明両党が、人勧を実施した上で引き下げ幅を7.8%とする法案を衆院に提出

 <12年>

 1月25日 民主党が自公両党との実務者協議で、人勧を実施して削減幅を拡大する修正案を提示

 2月 9日 3党実務者協議を打ち切り、政調会長レベルに格上げ

 2月17日 3党政調会長会談。民主党が自公案をほぼ丸のみし決着【新年度から2年間、平均7.8%引き下げる。2011年度の給与も、平均0.23%の引き下げを求めた人事院勧告に従い、去年4月にさかのぼって減らす。すでに支給した分からの減額分を、6月のボーナス(期末・勤勉手当)時に差し引く】。

 

笑ってしまうのは、ダラ幹が実施しないでとお願いした人勧はきっちり実施され、労働基本権拡充の見返りとして取引した筈の7.8%引き下げも予定通り実施されるにもかかわらず、国家公務員に協約締結権を付与する関連法案は審議入りの見通しさえ立っていないことである。連合の古賀伸明会長は、記者団に「国会がギクシャクし、運営が難しいのは理解せねばならない」と語って矛を収めるらしい。こんなダラ幹に対し、誰も反旗を翻さない。馬鹿らしくて怒る気にもならない。

 

公務員の給与引き下げをどう考えるか。

「公務員給与は民間と比べて高すぎる」、「公務員は民間と比べて優遇されすぎている」といった「公務員バッシング」のキャンペーンは、ここ数年、新聞・テレビ等で流され続けてきた(とくに朝日新聞が「熱心」だった)。だから、昨年9月の人事院勧告についても、「0.23%ぽっきりの引き下げ? 人事院は何を考えているのだ」といった論調が多かった。「貧困マジョリティ」にとっては、公務員給与の引き下げ幅は大きければ大きいほど正義にかなうということのようだ。しかし、この問題に限らず、「憲法に抵触」するかどうかは二の次という全般的な憲法軽視の風潮が、社会に蔓延しているのは、恐ろしいことである【大阪の橋下が憲法違反を手柄のように振る舞うことができるのもこの社会的風潮があるからである】。言うまでもなく、人事院勧告は、公務員について労働基本権が大きく制限されている(団体交渉権や争議権は認められない)ことの「代償措置」であり、これがあるから公務員の労働基本権制限は憲法に違反しないのだ、というのが、これまでの政府の説明であり、また、最高裁判決の論理であった。だから、人事院勧告によらずに、あるいは勧告以上に、公務員の給与を引き下げることは、これまでの政府見解や判例の立場からしても憲法違反ということにならざるをえないのである。

問題は、人事院勧告の算定の基礎をどう考えるかである。

社員50人以上の民間企業の事業所の給与と比較しているということだが、基準となっている民間企業の選び方、労働者の選び方については公開されていない。これが、今や民間の給与所得者の三分の一以上が派遣労働者となった「貧困マジョリティ」の癪に障るところである。公務と民間の賃下げ競争になっても、とりあえず、隣の自分より「高給」取りを引き摺り降ろしたい。私たちの社会変革運動は、支配階級の分断支配でそこまで人心が荒廃している現実から出発しなければならないのだ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。