プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

与謝野氏に迂回献金  政治買収の温床がまた現れた  先進国での政治革新の困難性

2009-06-28 19:07:02 | 政治経済
総選挙を前にして、またしても「政治とカネ」をめぐる重大な疑惑が次々に明るみに出ている。一つは、与謝野馨財務・金融担当相にかかわる迂回献金疑惑。商品先物取引会社がダミー団体を通じて与謝野氏の資金管理団体に事実上の献金を行っていたという疑惑だ。これは西松建設の違法献金疑惑とまったく同じ構図である。しかも与謝野氏は先物取引の所管大臣(当時)であり、より深刻だ。今一つは5大臣を兼務する佐藤勉総務相にも怪しい献金疑惑が浮上した。談合企業から1000万円を超えるカネを受け取っていたのだ。麻生内閣ではこれまで、河村官房長官、金子国交相、小渕少子化担当相、中川前財務相らが談合企業などからの献金を返還している。献金疑惑は、自民党だけでない。西松建設をめぐる民主党の小沢一郎前代表に続いて、鳩山由紀夫代表にかかわる「故人献金」疑惑が浮上してきた。これは亡くなった人たちの個人献金が政治資金収支報告書に記載されており、なかには払った覚えのない人も記載されているというから不可解である。単純な実務ミスでは説明できないだろう。
企業・団体献金は、共産党を除くあらゆる政党にいきわたっている。政治家は、献金者に有利なように政治を誘導・実行するとともに、そのカネを使って選挙に勝てるように自分の選挙区の有権者の面倒をみる
共産党はいいことを言うのになぜ選挙に勝てないか。本来共産党の支持者であるべき階級の人びとがなぜ自民党や公明党、民主党に投票するのか。あるいは、諦めて投票に行かないのか。「支配階級の思想は、いつの時代にも支配的思想である」。経済、政治、思想の全分野にわたって緻密で系統的に行われている支配階級の支配を打ち破り、政治革新を実現することは、支配階級の力が強い先進国では特別の困難性を伴う。

現代資本主義国家は、歴史上それ以前にあらわれた国家とは、大きくちがった特質をもつ。古代の天皇制国家では、国政に参画できるのは、律令で「貴」「通貴」と格付けされた高位の特権的貴族に限られており、一般の公民には、なんらの発言権もなかった。また封建国家の典型である徳川幕藩体制では、士農工商といった厳格な身分的秩序のもとで、国政は領主階級によって独占されていた。資本主義国家となってからも、初期の段階では、財産によって選挙資格を差別し、それによって有産者階級は、議会を自分たちの手中の道具とした。それが労働者階級と人民にも選挙権をという運動が各国でひろがり、普通選挙権(最初は男子だけ)が実現された。いまでは、すべての国家市民は、政治的には同権となり公式にはもはや財産の差はまったく問題ではなくなった。労働者階級の自己解放と人民の解放をめざす共産党が多数を獲得する障害がなくなった。マルクスやエンゲルスは、プロレタリアートが人口の大多数を占めているイギリスでは、普通選挙権の実施は、不可避の結果として、「労働者階級の政治的制覇」をもたらすだろうと当初は予想した。ところが、普通選挙権の実施は、イギリスでもドイツでも、労働者階級の政治的制覇を直線的にもたらすものとはならず、反対に、ブルジョアジーは、普通選挙権にもとづく代議制度のもとで、その政治的支配をいっそう安定した、いっそう確実な形で実現した。
「民主的共和制のもとでは、富はその権力を間接に、しかしそれだけにいっそう確実に行使する」(エンゲルス『家族・私有財産・国家の起源』)


代議制の資本主義国家では、旧来の階級国家のように、経済的に支配する階級(財界・大企業の株主・経営者ら)の指導層が直接に国政を差配するわけではなく、日常の国政は、政党の幹部や高級官僚などの代理人が直接に担当する。小泉政権になって、「構造改革」の司令塔としての経済財政諮問会議を経団連の会長や御用学者が取り仕切るようになったが、多くの国民は、政治が支配階級によって支配されるとは思わない。富はその権力を間接に、しかしそれだけにいっそう確実に行使しているのだ
国家の本質は、支配階級がかれらの利益を守るための秩序維持装置であるが、みんなの社会生活が成り立つための調整・指揮・管理・計画などの公共的仕事も受け持っている。この「公共的機能」も「秩序維持の機能」と一体となり、後者を中心に編成される。たとえば資本主義社会の社会福祉は、被搾取階級の反抗をなだめ、その牙を抜き取るためという性格を持つため、被搾取階級の反抗力が弱まれば、社会保障・福祉の切捨てを押し付けることになる
支配階級に属する人びとは、その数がすくないのに、数の多い被搾取階級に対する搾取と支配をなぜ維持することができるのか。数の多い被支配者階級をバラバラにし、団結させないことと国家の政治権力を握り、国家による秩序維持機能をフルに活用するからである。なぜ被支配者階級をバラバラにし、政治権力を握ることができるのか。要するに、支配階級は「カネとヒマとチカラ」をもっているからである  

支配階級の政治支配のもっとも確実な手段は「買収」と「選挙応援」である。「政治とカネ」問題は、どこの国においても、国民が「その国の政治がアホなのは国民がアホだから」といわれるレベルにとどまっている限り、その根絶は難しい。

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