プロメテウスの政治経済コラム

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小沢民主代表辞任  大企業・財界のカネによる政治買収の二つの形態と真の「政治改革」

2009-05-12 19:01:21 | 政治経済
とうとう小沢民主党代表が辞任した。財界本位の自公政治を国民生活第一の政治に変革すると見得を切った本人が旧い自民党金権体質そのものだったというのでは締まらない。国民の厳しい批判の前に、代表辞任に追い込まれたというのが事の真相だろう。大企業・財界のカネによる政治買収には二つの形態がある。特定の個別大企業が自己の利益を実現するために有力政治家を買収する場合と、大企業・財界の全体としての総資本の利益を実現するために政党政治を買収する場合である。有力政治家は政党政治においてもリーダー的存在だから、二つの区別は便宜上の区別ではある。日本の政治は同じ資本主義諸国のなかでも、異常に財界いいなり(さらに特殊日本的にアメリカいいなり)だといわれる。歴史的に日本の労働者階級の反抗力が弱いことに加えて、抑圧的な政治システムが形成されているからである。「政治とカネ」の問題は、民主主義勢力による「政治改革」の問題でもある。

小沢氏が辞任に追い込まれたのは、西松建設がダミーの政治団体を使って小沢氏側に巨額の献金をし、西松建設の公共工事受注に影響力を行使していたからである。現在の「政治資金規正法」はザル法なので、小沢氏が献金を直接受け取った政治団体(新政治問題研究会、未来産業研究会)が西松建設のダミーの政治団体であることを知っていたか、知った上で共同で献金処理したかが疑惑の核心となっている。小沢氏に疑惑の解明を求めても、知っていたか、知らなかったは心の内のことなので、状況判断するほかない。東京地検が小沢氏の公設第一秘書の大久保隆規容疑者を起訴したということは、少なくとも大久保氏は知っていて受領したということだろう。納得のいく説明を、といくら求めても小沢氏も民主党もいまだに説明しないということは、何千万、何億円と呉れる団体がどんな団体か知りませんとは言えないからだろう。形式的に企業・団体と別に政治団体をつくり、そこから個人の資金管理団体に献金しても企業からの献金でないという「政治資金規正法」がそもそもおかしいのだ。

ゼネコンは一般的に談合で受注企業を決める。しかい、談合といってもなにも努力しないで順番に受注の番が回ってくるほど甘くはない。今度は、オレだと言うためには、事前の工作が必要だ。入札発表前にどれだけ汗を掻くか、入札担当部局と親しくして(予定価格などの)情報をどれだけ早くとれるか、「天の声」をどのようにうまく引き出すか、そこでは有力政治家が暗躍する場面が多々ある。ゼネコンの使途不明(秘匿)金が産業界でもっとも多いのは、「政治とカネ」が受注に直結するという非常にわかりやすい機会が一番多いからである
この手の特定の個別大企業が自己の利益を実現するために有力政治家を買収する場合――限りなく贈収賄に近いケースは、政治権力が「革新政権」となってもなかなか変わらない。中国やベトナムで幹部の汚職が絶えないことは、それを証明している。各種の許認可権が特定の個人や集団に影響されないようなシステムをつることが必要だ。

資本主義国でのカネによる政治買収にはもう一つの形態がある。資本主義システムでは、資本家階級は、労働者階級を搾取する(剰余価値を生産する)ことによって、自分たちの儲けを確保する。したがって、儲けを長期安定的に確保するためには、そして、一応民主的な選挙に基づいた政治制度が存在するもとでは、労働者階級が搾取に反抗しないで、それを甘受してくれる政治の安定が必須である。こうして、大企業・財界が総資本として、政治を買収するのがカネによる政治買収の第二の形態である。
政治を買収するに当たって、剥き出しの要求を突きつけると階級支配がバレバレになる。そこで本当は、御用学者、御用審議会、御用マスコミなのだが、大企業・財界がスポンサーであることを隠して中立・第三者的装いをこらす。経済財政諮問会議は言うに及ばず、労働法制審議会や教育審議会も財界が糸を引いているのだが、国民には、中立・第三者的であるかのような錯覚を与える。税制「改正」がいつも財界に有利になるのは、国税庁と各企業の税務担当者が常時「租税研究会」などを通じて接触しているのだが、外からはなかなかわからない。

それにしても、日本経団連による政党政策の評価と評価点に基づく政治献金の実施は露骨である。財界が、実現を求める重点政策を自民党・民主党がどれだけ実現したかを人事考課よろしくAからD評価し、考課点数に応じて献金額の多寡をきめる。財界から貰ったカネによって政策を決定し、そのカネで派閥をまとめ、地元支持者に便宜をはかる。その面倒見のよさで、選挙民はコロっと騙される。財界本位の政治を真に改革するためには、企業・団体献金を無条件に禁止すること、面倒見のよさではなく、選挙民が政策本位で投票するようになる民度のアップが不可欠だ。

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