プロメテウスの政治経済コラム

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テロ支援指定解除、拉致は条件でない 安倍の「主張する外交」のバカさ加減は度を越している

2007-05-15 15:51:13 | 政治経済

下村官房副長官は14日夕の記者会見で、先の日米首脳会談の際、北朝鮮に対する米国のテロ支援国家指定の解除をめぐり、ライス米国務長官が日本人拉致問題の解決は指定解除の条件にはならないと説明していたことを明らかにした。下村副長官によると、ライス長官は「国内法に照らせば、テロ支援国家の指定は基本的にはアメリカに対するテロを念頭に置いたもので、日本の拉致問題の解決は指定解除の条件になっていない」と述べた(読売新聞5月14日19時54分配信)。
拉致問題に北朝鮮核問題をめぐる六カ国協議でアメリカと連携して対処することは、当然の外交戦略である。問題は拉致問題を含めた諸問題を包括的に解決する日本独自の外交戦略である。

いま世界の流れは、国の安全保障にとっていちばん重要なものは、外交であり、どの国でも、自分の国のまわりに平和な国際環境をどうやってつくるか、国と国との平和的な関係をどうやって築いてゆくのか、そのために大きな力をそそいでいる。まず平和的な方法で紛争を解決することに力をつくす、これが当たり前の流れなのだ。「力の政策」が基本の帝国主義国アメリカでも、それだけでは今日の世界に対応できないということで、一方では外交にも力を入れざるをえない状況がある。中国への対応でも、国防総省あたりは、「将来の脅威」になる国だといった発言をしきりに繰り返す一方、アメリカ政府の対外活動では、中国とアメリカのあいだに「戦略的な利害の共通性」があることを大いに強調し、米中関係を発展させる有力な流れが進行している。北朝鮮の核・ミサイル問題でも、平和的解決のための外交作戦が現在の主流となっている(不破哲三「憲法対決の全体像をつかもう―憲法改定派はどんな日本をつくろうとしているか」「しんぶん赤旗」2007年5月10日)。

日本はいま、外交の弱さが特別に目立つ特異な国になっている。東京で活動している各国の外交官の間では、日本は、アメリカやヨーロッパの資本主義諸大国との関係は別として、世界のほかの地域にたいしては、なんの外交戦略も方針ももっていないようだ、というのが、大方の見方である「東京で活動している各国の外交官と交流しますと、あいさつの言葉というわけではないのですが、『日本には外交戦略はないね』という感想をたえず聞かされます」(不破 同上)。
その原因はどこにあるのか。一つは、「アメリカの窓」からすべてを見る対米従属外交で、自主的な外交戦略をもたないで来ている、という問題が根底にある。それにくわえて最近とくに目立つのが、何かことが起こるとすぐ軍事的対応を考えるという傾向が根強くあることである。憲法では、武力による威嚇を禁じている国なのに、紛争が起こるとすぐ実力での対応を考える単純な発想である。北朝鮮問題でも、政府はよく「対話と圧力」と言いながら、「対話」がない。ミサイル発射にたいして国連が実施した経済制裁は、ある意味では、「対話と圧力」路線にたつものであった。しかし、経済制裁をやるなかで、「対話」の条件が出てきたら、どの国も対話を成功させるための真剣な努力をするし、それに対応する戦略・戦術に知恵をつくす。ところが、日本は、「対話」の舞台ができても、それに対応する用意がない、対話の戦略・戦術をもたない。「日本の外交を見ていると、拉致で圧力をかけるというだけで、核・ミサイル問題の解決への熱意が本当にあるのかどうか、さっぱり分からない」ということになる(不破 同上)。

「対話と圧力」というが、「圧力」をかけて相手が全面降伏するのを待っているというのでは、これはもう外交ではない。安倍の「主張する外交」のバカさ加減は度を越している。


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